大河『豊臣兄弟!』黒田官兵衛役・倉悠貴が語る現在地 「器用に80点を出せる人でいたくない」演技にかける熱量

俳優の倉悠貴が、映画『マッチング TRUE LOVE』(9月25日公開)で、マッチングツアーに参加する謎多き芸大生・野村安蘭を演じた。2019年の俳優デビューから7年。NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』や『SHOGUN 将軍』など活躍の場を広げる一方、本人が見据えるのは今も「映画の前線」だ。土屋太鳳、豊嶋花ら共演者から受けた刺激、そして「80点より200点を出したい」という俳優としての現在地を聞いた。

インタビューに応じた倉悠貴【写真:舛元清香】
インタビューに応じた倉悠貴【写真:舛元清香】

25日公開『マッチング TRUE LOVE』で謎多き芸大生役

 俳優の倉悠貴が、映画『マッチング TRUE LOVE』(9月25日公開)で、マッチングツアーに参加する謎多き芸大生・野村安蘭を演じた。2019年の俳優デビューから7年。NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』や『SHOGUN 将軍』など活躍の場を広げる一方、本人が見据えるのは今も「映画の前線」だ。土屋太鳳、豊嶋花ら共演者から受けた刺激、そして「80点より200点を出したい」という俳優としての現在地を聞いた。(取材・文=平辻哲也)


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「この役って、怪しく見えれば見えるほど映画が面白くなる役なんです」

 脚本を読んだ倉が考えたのは、野村安蘭という人物だけではなかった。デスゲーム的な要素にサスペンスが絡み、物語が二転三転する中、自分の役が映画全体でどう機能するのかを意識した。

「もちろん役のことも考えますけど、今回は映画としての役割みたいなものをすごく考えました。最初に脚本を読んだ時に、怪しく見えれば見えるほど面白くなると分かったので、そこを一番重点的にやりましたね。名前からして、ですからね(笑)」

 一本の映画を俯瞰(ふかん)して自分の立ち位置を考える。その意識は以前より強くなったという。

「少しだけ、いろんな側面から物を見られるようになったのかもしれないです。NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』(黒田官兵衛役)みたいな長い現場にいると、自分を置く場所としての正解はどこなのか、作品の中で探したりするようになりました」

 撮影は沖縄・久米島でも行われた。共演者の多くが約2週間滞在する中、別作品の撮影もあった倉は5日間だけ参加した。

「久米島に行ったら、信じられないくらいみんな仲良くなっていて驚きました(笑)。劇中で使っているホテルに実際に泊まっていて、普通にリゾートなんですよ。みんな現地のガイドの方かなって思うぐらい飲食店にも詳しくなっていた。あと、沖縄タイムみたいな感じで、現場もちょっとスローリーになっていましたね」

 主演の土屋とは今回が初共演。同じ事務所の先輩でもある。

「太鳳さんは、この『マッチング』を一度やっているから、すごく安定感というか安心感がありました。大先輩の胸を借りるじゃないですけど、安心してお芝居をさせていただきました」

 一方、最も芝居を交わす豊嶋について聞くと、「芯」という言葉が出た。

「朗らかな印象なんですけど、すごく芯がある方というか、人として太いというか。譲れないものがちゃんとあるんだな、というのが印象的でした。お芝居をやっていても『ここは絶対にブレないところなんだな』というのが見える。映画に身を投じられる人なんだなって、うらやましくなりましたね」

 豊嶋は現在19歳。倉が芸能界に入ったのも同じ頃だった。

「その頃の僕は何も分からなかったですし、逆に今よりわがままだったのかもしれないですね。今泉力哉監督(『街の上で』)とかとやっていた時期で、『(自分からテイクを)もう1回やりたいです』とか言っていた気がする(笑)。豊嶋さんほど全然しっかりしていなかったですよ」

「どれだけ泥臭くてもいい」目標を熱く語った【写真:舛元清香】
「どれだけ泥臭くてもいい」目標を熱く語った【写真:舛元清香】

目標を聞くと…返ってきた明快な答え

 そこから約7年。大河ドラマや『SHOGUN 将軍』など大きな作品も経験した。目標を尋ねると、答えは明快だった。

「映画の業界の中でちゃんと生きられる人。その前線に行きたいです」

 芸能界には「なんとなく」入ったが、映画が好きだから映画を頑張ろうと決めた。その原点を最近、改めて意識している。

「ブレちゃいけないなって思うところがあって。自分が立ちたいところは、やっぱりそこだなって。ちょっと忘れそうになっていたなと思いました」

 倉にとって、劇場に観客を呼べることには特別な意味がある。

「劇場まで足を運んでいただくって、すごく光栄なことだと思うんです。僕は俳優一本でやっていて、『この人が主演だったら行こう』と思ってもらえる人になりたい」

 求めるのは、単なる知名度ではない。

「『倉悠貴が出てるんだったら、劇場行かなきゃな』って思ってもらえるようにならなきゃいけないと思っています」

 その思いは、作品選びにも表れ始めた。これまではマネジャーと相談し、自分の希望とは別に勧められた作品に出演することもあった。だが、2026年から考え方を変えたという。

「もう27歳になるわけで、30代に突入寸前みたいなところなので、今後出演する作品についてもマネージャーと相談しながらしっかりと考えていきたいです」

 背景には、NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』や実写映画『ブルーロック』(吉良涼介役)などの現場で目にした俳優たちの姿がある。

「僕らの世代って、みんな器用なんですよ。みんな80点を出せる時代になっているんじゃないかなと思っていて。でも、大河の現場とかに行くと、そうじゃない人もいて。それを見て、僕は器用に80点を出せる人でいたくないなと思ったんです」

 目指すのは、安定した80点ではない。

「どれだけ泥臭くてもいい。0点、10点、20点でもいいから、たまに120点、200点を出せる人間でいたい。今はそういう気持ちです」

『SHOGUN 将軍』で共演した真田広之や、大河ドラマで共演する仲野太賀、菅田将暉らから感じたのも、そんな泥臭さにつながる熱量だった。

「熱量がやっぱり高いですね。本当の意味での熱量です。『この作品、頑張って作りました』って言うこと自体は簡単だと思うんですけど、そういうことじゃないなって思いました」

 無難な80点を重ねるより、時には失敗してでも200点を狙う。「倉悠貴が出るなら劇場へ」と思わせる俳優になる。デビューから7年。倉が改めて選んだ道は、至って泥臭い。

□倉悠貴(くら・ゆうき)1999年12月19日生まれ、大阪府出身。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。2018年、男性ファッション誌『MEN’S NON-NO』のヘアスナップ企画に掲載された写真をきっかけにスカウトされ、芸能界入り。19年、フジテレビ系ドラマ『トレース~科捜研の男~』で俳優デビュー。20年には池田エライザ初監督作『夏、至るころ』で映画初出演にして初主演。その後も映画『樹海村』『まともじゃないのは君も一緒』『スパゲティコード・ラブ』、ドラマ『犬と屑』などに出演。身長173センチ。

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