蒼井優の演技に「すごいと思わず言葉を…」 土井裕泰監督が語る『Tシャツが乾くまで』舞台裏
俳優の蒼井優が主演を務める、TBS系連続ドラマ『Tシャツが乾くまで』(金曜午後10時)の第9話が、4日に放送される。少しずつ明かされていく登場人物の“秘密”や、新たなキャストの登場に驚きが広がる中、土井裕泰監督のオフィシャルインタビューが届いた。

視聴者の反応を受け止めつつ、やるべきことをやる
俳優の蒼井優が主演を務める、TBS系連続ドラマ『Tシャツが乾くまで』(金曜午後10時)の第9話が、4日に放送される。少しずつ明かされていく登場人物の“秘密”や、新たなキャストの登場に驚きが広がる中、土井裕泰監督のオフィシャルインタビューが届いた。
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本作は、脚本家・生方美久氏による完全オリジナルストーリー。とある事故がきっかけで、当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、突如崩れ去ってしまった瀬尾咲子(蒼井)と瀬尾充(松山ケンイチ)、園田樹生(中島歩)と園田あずさ(夏帆)の2組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”を描く。
(※以下、ドラマの内容に関する記述があります)
8月28日に放送された第8話では、家を飛び出した咲子を心配した充が咲子の行方を追う中で、樹生をはじめとする咲子の関係者を集め、咲子がどんな人間なのか、一体どこへ向かったのかを語り合う展開が描かれた。咲子の不在に右往左往する充に、ネットでは「めちゃめちゃ動揺して心配して探してる」「自分がいなくなるのは平気なのに 急に誰かにいなくなられるのは嫌なんかい」などの声が上がった。
また、ラストには咲子の過去に関わる“謎の男”篤彦役で20th Centuryの井ノ原快彦がサプライズで登場。「突然のイノッチ!?」「イノッチで全て持っていかれた~」と反響を呼んだ。
そんな注目作のメガホンを取る土井監督は、これまでTBS系連続ドラマ『カルテット』(2017年)、映画『花束みたいな恋をした』(21年)、『九条の大罪』(26年)など数々のヒット作を手がけてきた。今回初めてタッグを組む生方氏の脚本の魅力や、蒼井ら出演俳優とのエピソード、ドラマ終盤に向けての見どころを語った。
――さまざまな感想がSNSを中心に飛び交っていますが、反響をどのように感じていますか?
「『普段あまりドラマは見ないけど、今回は見ています』という声をすごく聞くので、『あ、これがバズってるということか(笑)』と日々実感しています。ただ、ちょっとした場面で少し映り込んだものさえも、何か意味があるように捉えられてしまう状態なので、現場では緊張しながら撮影しています(笑)。いろいろな見方があっていいですし、どんな入り口からでも、楽しんで見ていただければいいなと思っています」
――視聴者の反応は、気になりますか?
「そうですね。テレビドラマは作品を作っている時と放送される時の時間差がほぼないので、ダイレクトに返ってきた反応はシャットアウトしないで、きちんと受け止め、現場に還元できるものはしていこうと思っています。ただ、反応に惑わされるのではなく、逆にちゃんと腰を据えて、このドラマで伝えるべきことは何なのか、最初に作品に対して思ったことはブレないでやり切ろうという気持ちでいます」
生方美久氏の脚本を演出することへの挑戦
――生方美久さんの脚本の印象を教えてください。
「まず会話が生き生きとしていること。そして人間たちが多面的で、予定調和ではない、知らないうちに意外なところへ連れて行かれてゆくような面白さを感じました。“今の人の話す言葉”がしっかりあって、なおかつ、独特の文体といいますか、レトリック(言葉を効果的に使い、自分の考えを分かりやすく印象づける表現方法)がちゃんとある。言葉の力が強い分、映像になった時、どうリアリティを持たせられるのか、その難しさも感じました」
――脚本の世界観を映像に落とし込むにあたって、意識したことはありますか?
「基本的に会話劇なので、登場人物たちがどんな場所で、どういう距離感で会話するのか、まずはその環境を考えて俳優やスタッフに提示することが演出の仕事だと考えました。会話が始まった時と終わった後で、関係性にどんな変化が起きているのか、それを積み重ねてゆくことがこのドラマの面白さですから。そういう意味では、コインランドリーはこのドラマにとってはとても重要な場所なので、かなりたくさんの物件を見て決めさせてもらいました。
あとは、逆にセリフのない場面、余白をどのように見せていくのか。そこは、演出の立場としては、非常に意識した部分です。
例えば第1話で、蒼井優さん演じる咲子が被害者の説明会から抜け出して、1人で事故現場に行くシーンがありますが、台本上はほとんどト書きだけのセリフのないシーンなんです。そういったシーンをどのように表現するかは、毎回自分の課題にしていました」

キャストたちと話し合って作り上げる――ドラマ制作の醍醐味
――撮影現場では、キャストの皆さんとよく作品についてディスカッションされているそうですね。
「生方さんの脚本で描かれる人間たちは、受け取る側の生活環境や育ち方などによって、捉え方が変わってくるんですよね。なので自然と俳優さんたちと現場でディスカッションすることは多くなりましたね。演出家はもちろんですが、俳優にとっても挑戦というか、単なる技術ではなく人としての技量を試されていると感じるような、そんな空気はあったと思います。
ただ、今回の俳優さんたちは皆さん、初めてセッションした時にはそれぞれ“その人(演じる役)の言葉”としてセリフを発していました。自分の身体にしっかり言葉を落とし込むという準備をした上で現場に臨んでいて、それは本当に毎回感心していました。
現場で話をしながら作り上げていくことはとても面白いですし、とてもクリエイティブな時間なんです。撮りながら『なるほど、こういうシーンだったのか』と見えてくる瞬間、台本だけでは分からなかったものが、俳優の身体を通してガッと立ち上がってくる瞬間は感動しますし、これがドラマを演出する醍醐味だなあと思います。今回はそんな瞬間が何度もありました」
――印象的だった撮影エピソードを教えてください。
「やはり蒼井優さんの芝居に出会えたことですね。うれしいとか悲しいとか、そういう単純ではない、“名前のつけようのない感情”が本当にリアルに表現されていて、悲しいのに笑ってしまう、冷静なはずなのにどうしようもなく涙がこぼれてしまう……そんな生身の人間の複雑さや面白さを蒼井さんの芝居を通して見るたびに、ただ見入ってしまうというか、『すごい』と思わず言葉を漏らしてしまう時が何度かありました。
中島(歩)さん演じる園田樹生は、冒頭から実は複雑な悩みを抱えた役だったので、特に第1話は演じる中島さんは大変だったと思います。彼は、わりと論理的に役を捉えて作っていくタイプの俳優さんだと思うのですが、演じる樹生という人物がすでに混乱の中にいて破綻しかかっているんだから(笑)。なので、蒼井さんも交えてたくさんディスカッションしましたね。
撮影は咲子と樹生のコインランドリーの出会いのシーンから始まりました。樹生が内面に抱えている混乱をどのように見せるのか、あるいは見せないようにするのか。初めの段階からそこでしっかり試行錯誤できたことはよかったです。このドラマのパンチラインでもある1話のラストの樹生のセリフをどう表現するかは、彼が自分でたどりついた答えですが、素晴らしかったと思っています」
“人間の片面だけではないところ”に注目
――劇伴音楽を担当するharuka nakamuraさんは監督からのオファーだったそうですね。
「劇場アニメ『ルックバック』(24年)と映画『この夏の星を見る』(25年)を観て、その音楽が強く印象に残っていたんです。エモーショナルになっても決して暑苦しくない、風通しの良さみたいなものがあって、それがこのドラマの世界観や目指す温度に合っているのではないか。そんな直感が働いて、オファーさせていただきました。
新しい人と組むということは、この歳になったからこそ恐れずにやっていきたいと思っているんです。生方さんの脚本の世界とharuka nakamuraさんの音楽との化学反応に興味があったし、何より、僕自身に新しい気づきや変われるものがあるかもしれない、そんな期待もありました。
実際、絶妙にクールで、でも人間の心にちゃんと寄り添った、このドラマならではの音楽を作っていただいたと思います」
――最後に今後の見どころをお願いします。
「今まで少しずつヒントが出てきてはいるのですが、第9話では、充と出会う前の咲子はどのような女性だったのか、未だ語られていない咲子のいろいろな面が見えてきます。もしかしたら放送後、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論になるかもしれません(笑)。これまで同様、最後まで自分なりの視点で観て、楽しんで、考えて、語り合っていただけたらと思います」
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