小さな里の復興から大きな歴史の大河へ 新たな108星と出会う『幻想水滸伝 STAR LEAP』
1995年に第1作が発売された「幻想水滸伝」シリーズは、108人の仲間たちとの出会いと、戦争によって大きく揺れ動く人々の運命を描いてきた。ナンバリングでは作品ごとに主人公や舞台を変えながらも、同じ世界の歴史を共有し、過去作の出来事や人物が別の作品で新たな意味を持つという構成も魅力だった。

焼け落ちた故郷から始まる新たな「幻想水滸伝」
1995年に第1作が発売された「幻想水滸伝」シリーズは、108人の仲間たちとの出会いと、戦争によって大きく揺れ動く人々の運命を描いてきた。ナンバリングでは作品ごとに主人公や舞台を変えながらも、同じ世界の歴史を共有し、過去作の出来事や人物が別の作品で新たな意味を持つという構成も魅力だった。
そのような「幻想水滸伝」に14年ぶりの完全新作として登場したのが『幻想水滸伝 STAR LEAP』(以下、『幻水SP』)だ。8月7日にiOS/Android版が配信され、シリーズ初のモバイル向けタイトルとなった本作は、基本プレイ無料のアイテム課金制を採用しながら、「幻想水滸伝」の正史として新たな108星(※)の物語を描く作品だ。本稿ではシリーズファンが『幻水SP』をプレイした感想を中心にお伝えしたい。
※幻想水滸伝シリーズにおける108人の仲間たち。
本作は太陽暦453年を舞台としており、時系列では初代『幻想水滸伝』(太陽暦457年)と『幻想水滸伝V』(太陽暦450年)に挟まれている。赤月帝国の東にある湖畔の里で暮らしていた主人公は、謎の組織による襲撃によって故郷を失うことに。炎に包まれた里を前に主人公は、自身の屋敷で働く使用人「ヒスイ」、幼馴染「シーリーン」、師匠「シャプール」とともに里の復興を決意。ヒスイが持つ紋章の力で動物化した住民を助ける手立てを探す道中、帝国の非道や人々の苦しみに触れ、腐敗した赤月帝国を変えるために立ち上がった名門貴族の娘・オデッサと出会う……というあらすじだ。
この導入が「幻想水滸伝」らしいのは、主人公が最初から世界を救う英雄として扱われるわけではない点。主人公にとって重要なのは自分が暮らしていた里と暮らしていた人々だからこそ、最初に「仲間を集める」という行為にも明確な意味がある。焼け落ちた里を再び人が暮らせる場所へ戻すために人手が必要であり、旅の中で出会った人々が仲間になればなるほど、主人公たちのできることも広がっていく。やがてその小さな集まりが大きな勢力へと発展していくという流れは、個人の物語と大きな戦争を接続してきたシリーズの基本構造を受け継いだものだ。

第1章では『幻想水滸伝』の前日譚として、オデッサの解放軍設立へとつながる物語が描かれる。グレッグミンスターやレナンカンプといったおなじみの土地が登場するだけでなく、フリックやビクトールといった歴代キャラクターとも出会うことができ、シリーズファンなら思わずニヤリとしてしまう場面も多い。一方で過去作の出来事をなぞるだけではなく、新たな主人公たちの物語を軸にすることで、既存作品とのつながりを感じさせながらも、その後に続く初代の物語を壊さないように組み立てられている。過去作を知っていればより楽しめるが、本作から遊んでも物語を理解できるというバランスだ。

そして第2章では、舞台が『幻想水滸伝V』で描かれたファレナ女王国での学園編へと移る。『幻想水滸伝V』の物語から時間が経った世界を訪れることになるため、過去作を遊んだ身としては、かつて冒険した土地が現在の姿とは異なる形で登場し、そこに新たなキャラクターたちの物語が重なっていくことで、「後日談」を覗いているような感覚を味わえるのだ。当然共通するキャラクターも登場するため、シリーズの歴史が一本につながっていることを実感できる章にもなっていた。
タイムラインを操り連携を組み立てるバトル
『幻水SP』のバトルは、従来のシリーズ作品を思わせるビジュアルの雰囲気を踏襲しながら、システムは刷新されている。本作では「タイムラインターンバトル」が採用され、味方と敵の行動順が画面上のタイムラインに表示される。従来の「幻想水滸伝」では、パーティーメンバー全員の行動をまとめて選択してからターンを進める方式だったのに対し、本作ではタイムラインを確認しながら一人ずつ行動を選択していく。
基本コマンドは「通常攻撃」「紋章」「奥義」の3種類だ。通常攻撃は威力が低いが次の行動までが早く、紋章は種類によって再行動までの時間が変化。ゲージを溜めることで使用できる奥義は、非常に高い威力と派手な演出を持つ反面、次の行動が大きく後ろに回ってしまう。「連携」システムは、タイムライン上に味方が4人以上並ぶと使用可能。複数のキャラクターが続けざまに攻撃することでダメージボーナスが発生するため、各キャラクターを個別に見れば強力な行動を選ぶべき場面でも、パーティー全体で考えれば、あえて通常攻撃を選択して次の行動を早め、味方をタイムライン上に並べたほうが大きなダメージにつながる場合がある。

さらに重要なのが「アンバランス」だ。敵には2種類のバランス値が設定されており、弱点属性で攻撃することで削っていく。バランス値を削り切ってアンバランス状態(2種類削り切ると「ノックダウン状態」に)にすると、敵の行動を大きく遅らせ被ダメージも増加。弱点を突いて敵を崩し、味方の行動順を整えて連携につなげることで、タイムライン・属性・連携という複数のシステムがひとつの戦術として機能する。
このような仕組みによって『幻水SP』のバトルはシリーズの従来作よりも戦略性が高くなっている。特にただ強力なキャラクターを並べて攻撃するだけではなく、敵の弱点や行動順を見ながらパーティー全体の動きを組み立てる必要があるため、シリーズ作品としては歯応えのあるバトルだ。また属性システムによって、原作以上にさまざまなキャラクターを実際に使ってみる動線が敷かれていると感じた。敵の弱点や攻撃属性との相性を考える必要があり、紋章を入れ替えることもできないため、同じメンバーだけで進めるよりも、仲間を入れ替えながら臨機応変に編成することが大切だ。つまりキャラクターを集めることが、単なるコレクションではなく、戦略の幅を広げることにもつながっているのだ。

とはいえストーリーを進めるだけなら、ガチャで強力なキャラクターを揃える必要はない。ゲーム内で配布される108星にも強力なキャラクターが揃っており、彼らを育てていくだけでもストーリー攻略は可能だ。この点は基本プレイ無料のスマートフォン向けタイトルでありながら、コンソール向けRPGとしての「仲間を集めて育て、パーティーを組んで冒険する」という感覚を残している部分でもある。
まずは手元にいる仲間を育てて、敵に合わせてパーティーメンバーを変えながら先へ進み、新しい仲間が加われば新たな編成を試していく。108星を集めることと仲間を使うことが自然につながっており、スマートフォン向けタイトルとしての収集要素を取り入れながらも、根底には仲間集めがコンセプトという「幻想水滸伝」の味が残されていた。
108星を集めることがゲームを深化させる
『幻水SP』の魅力はストーリーやバトルだけではない。故郷に少しずつ人を呼び込み、賑わいを取り戻していく「里の復興」も本作を支える大きな要素のひとつだ。前段で仲間が増えればバトル編成の幅が広がると書いたが、同じように108星を集めれば里が発展し、新たな施設や機能が解放される。たとえば炊事場では「野菜収穫」「釣り」「稲収穫」のミニゲーム等で集めた食材を使って食事会を開催可能。食事会を通して仲間との絆が深まると、キャラクターの能力を高められる。

本要素は「幻想水滸伝」というシリーズをスマートフォン向けゲームとして成立させるうえで、重要な部分だろう。シリーズにおける本拠地は単なる場所ではない。最初は何もなかった場所に仲間が集まり、施設が増えて拠点として成長していく。その変化自体が「108星を集める」という成果を実感させてくれる仕組みだったが、『幻水SP』では「里を復興する」という物語の目的と直接結び付けている。つまりシリーズでおなじみだった「仲間を集めるほど本拠地が賑やかになっていく」という感覚を、『幻水SP』では継続的なプレイサイクルの中へ組み込んでいるのだ。
「幻想水滸伝」の歴史に新たな108星を刻む
『幻水SP』は、世界観を借りただけの外伝ではなく、「幻想水滸伝」の正史として位置づけられている。過去作のキャラクターや出来事と交差しながらも、物語の中心にいるのはあくまで新しい主人公と仲間たちだ。シリーズを知っているプレイヤーにとっては、知っている歴史の裏側で新たな物語が進んでいることが面白く、これまでシリーズを遊んでいないプレイヤーにとっては、新しい主人公たちの物語として楽しめる。絶妙な距離感によって、過去作の積み重ねを大切にしながら、新たな物語を始めることに成功している印象を受けた。
14年ぶりの完全新作にして、シリーズ初のモバイル向けタイトルとなった『幻水SP』は過去作を懐かしむだけではなく、正史の中に新たな108星と物語を加えることで、「幻想水滸伝」の世界をさらに広げようとしている作品だ。これまでシリーズを追ってきたファンにとっては、知っている歴史の新たな一面を見られる作品として、そしてこれから「幻想水滸伝」に触れるプレイヤーにとっては、新たな入口となる作品として、本作がどのような歴史を刻んでいくのか。行く末に注目したい。
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