染谷将太、普段のコンビニで買うものは「子どものおやつ」 主演映画とのギャップある父の顔
7歳から子役として活動し、日本映画界に欠かせない存在となった俳優・染谷将太。33歳となった今、本人は俳優としての変化をどう受け止めているのか。主演映画『チルド』(7月17日公開)では、コンビニ店員・堺を演じている。意志があるのかないのか、何を求めているのかも見えにくい男。だが、その曖昧さを語る染谷の言葉からは、子役時代から長く現場に立ち続けてきた俳優の現在地が見えてくる。

33歳で感じる俳優としての変化とは
7歳から子役として活動し、日本映画界に欠かせない存在となった俳優・染谷将太。33歳となった今、本人は俳優としての変化をどう受け止めているのか。主演映画『チルド』(7月17日公開)では、コンビニ店員・堺を演じている。意志があるのかないのか、何を求めているのかも見えにくい男。だが、その曖昧さを語る染谷の言葉からは、子役時代から長く現場に立ち続けてきた俳優の現在地が見えてくる。(取材・文=平辻哲也)
「シンプルにやれない役が増えていって、やれる役が増えていく。それが自分にとって一番分かりやすい変化ですね」
10代から20代前半にかけて、染谷には学生役も多かった。気づけば、その時期は過ぎていた。今は警察官、会社員、職業を持つ人物など、社会の中で役割を背負うキャラクターが増えている。
「学生役が多かったのが、気づいたら職業に就く役が多くなっていた。刑事(映画『爆弾』)をやったり、そういう仕事をもらうことが増えてきたなとなった時に、やらなきゃいけない役割が変わってくるなというのはあります」
若さで走るだけでは成立しない。物語を説明する。状況を動かす。観客に必要な情報を届ける。ただし、説明のための説明になってはいけない。
「警察の役とかだと、どうしても物語を説明したり動かしたりする役回りが前より増えているんです。そうすると毎回、使う筋肉が違うというか、必要とされるスキルが違う。10代とか20代の若さで走っていくというより、今は、いかにちゃんと伝えるかが必要とされている気がしています」
制服を着る役も変わった。学生服から、職業を表す制服へ。自身でも「もうそんな年じゃん。もう着られないな」と感じることがあるという。
20代前半までは高校生役も演じていた。では、21歳前後で制服を着ることに抵抗はなかったのか。
「あんまりなかったかもしれないですね。学ランは抵抗ありましたけど、ブレザーはなんとかなるかな、みたいな」と笑う。
『チルド』で着たのは、コンビニの制服だった。そこにも、年齢を重ねた俳優としての役回りの変化がある。
「社会に接している役というのは、40代になったらまた役職や立場が変わっていくと思うので、飽きが来ない仕事だなと思います」

撮影中にコンビニを訪れる“意味”「1回リセットできる」
『チルド』で演じる堺は、エニーマート倉富町7丁目店の店員。日々を無感動に過ごし、マッチングアプリで人と会っても、本当の意味で何かを求めているようには見えない。染谷は、その空白を「今っぽい」と感じた。
「自分が生きることにも興味がない人間が、新しいバイトの小河と出会って、ちょっと外の世界を知る。でもまた元の日常に戻っていく。すごくシンプルな積み重ねだったんです」
堺はコンビニでは店員として機能する。マッチングアプリでは、相手に合わせた自分をつくろうとする。自分がないからこそ、その場にふさわしい自分になれる。
「コンビニという職場のキャラクターがあって、それは社会としては成立している。逆に一歩外の社会に触れた時に、ものすごく自分を取り繕おうとする。そこにふさわしいだろうと想像するものに自分を持ち上げて、人と会っていく。それが堺の不器用さだと思いました。彼自身が何を求めているのか、正直、彼自身もよく分かっていない。それが今っぽいなと思います」
撮影現場もまた、小さなコミュニティーだ。大きな街でロケをしていても、その中に閉じたチームができる。外の世界と地続きでありながら、どこか切り離されている。染谷にとってコンビニは、そんな現場の合間にふっと社会へ戻る場所でもある。
「現場中、外でロケをしている時に行くことが多いです。撮影中にふとコンビニに入ると、1回社会とつながる感じがして好きなんです」
撮影現場は濃い。朝から晩まで同じスタッフ、同じキャスト、同じ目的に向かって動く。外の世界が遠くなる瞬間もある。そんな時、コンビニの自動ドアが開き、棚に並ぶ商品やレジの音に触れるだけで、日常に引き戻される。
「大きい街で撮影していても、その中にすごく狭いコミュニティーのものを作っている。コンビニにふらっと入ると、社会と触れている感じがして、1回リセットできる。リフレッシュできるんです」
映画『チルド』は、そのコンビニを逆方向から見つめる。社会とつながる場所であるはずのコンビニが、同時に人を無機質なシステムの一部にしていく場所として描かれる。染谷は、その二面性を面白がっている。
「人が集まった時に、それぞれの世界観があるんだろうなと思いました。監督は“人が物になっていく”ということをおっしゃっていて、その不気味さはすごくありました」
では、染谷自身は普段、コンビニで何を買うのか。最後にそんな質問を向けると、少し考えてから、日常の顔をのぞかせた。
「何を買うかな。子どものおやつとかが多いですかね。あとはお手洗いを借りて、お水を買って帰るとか」
スクリーンでは、虚無をまとった店員を演じる。現場では、社会とつながるためにコンビニへ入る。そしてプライベートでは、子どものおやつを手に取る。そこには、特別な演出のない、等身大の生活がある。
子役から始まり、学生役を通り過ぎ、今は社会の中で役割を持つ人物を演じることが増えた。年齢を重ねることは、失う役が増えることでもある。だが染谷にとって、それは同時に、新しい役に出会うことでもある。
「やれない役が増えて、やれる役が増えた」
その言葉には、寂しさよりも静かな納得がある。制服は変わる。求められる筋肉も変わる。それでも、現場に立てば、その時の自分にしかできない任務がある。『チルド』で染谷将太が就いたのは、ただ見るという任務だった。そして33歳の今も、彼は淡々と、次の役へ向かっている。
□染谷将太(そめたに・しょうた)1992年9月3日、東京都出身。7歳で子役として活動を始め、9歳で映画『STACY』に出演。『パンドラの匣』で長編映画初主演を務め、『ヒミズ』では第68回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。『寄生獣』『バクマン。』『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』『爆弾』など話題作への出演が続き、国内外で存在感を示してきた。2026年4月期TBS系ドラマ『田鎖ブラザーズ』に出演し、映画『国境』では伊藤英明とのダブル主演も控える。
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