『ばけばけ』で変わった役との向き合い方 円井わん、「ただその人を生きるだけでいい」境地の深層

俳優の円井わんは、今年で俳優人生10周年を迎える。あてもなく上京し、偶然の出会いから役者となった少女は、今は朝ドラにも出演するなど、唯一無二の輝きを放つ存在となった。売れっ子になっても自分の生活リズムを大切にするポリシーを貫きつつ、次に見据える目標とは――。

インタビューに応じた円井わん【写真:増田美咲】
インタビューに応じた円井わん【写真:増田美咲】

今改めて感じる「自信」を持つことの大切さ

 俳優の円井わんは、今年で俳優人生10周年を迎える。あてもなく上京し、偶然の出会いから役者となった少女は、今は朝ドラにも出演するなど、唯一無二の輝きを放つ存在となった。売れっ子になっても自分の生活リズムを大切にするポリシーを貫きつつ、次に見据える目標とは――。(取材・文=小田智史)

 役者を目指し、高校卒業を機に上京した円井。伝手もなく、求人サイトで見つけて働くことになったバーでの出会いから、2017年に『獣道』で映画初出演を果たした。まさにゼロからのスタートだったが、俳優として10年の節目を迎えるまで実績を積んだ。「そんなにやってきたんだ」と本人は笑う。

「正直、あまり自覚はないです(笑)。でも、人生グラフを見た時に、“落ちる”というのを感じたことがないので、着実に1年1年パワーアップできているなと思っています」

 2025年9月~26年3月に放送されたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』で、ヒロイン・松野トキ(髙石あかり)の幼なじみで親友の野津サワ役を好演したのは記憶に新しい。今月3日からテレビ東京系で放送がスタートしたドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』(金曜深夜0時12分)の第3話「地縛者」では主演を務めた。それでも、常に順風満帆だったわけではなく、オーディションで悔しい思いが続いた時期もあった。

「自分の中で『絶対に受かった』と思ったのに、落ちたことも全然ありました。昔から“圧倒的自信”みたいなものがずっとあったんです(笑)。人一倍、自信を持っていたので、今考えると、逆にそれが良かったのかなと思いますし、やっぱり自信は大事だったんだなと感じます」

 もっとも、その「自信」は自分自身に対してというよりも、己が持つ「直感力」への確信に近いという。

「自分に自信があるというよりは、あまり人に左右されないところがあるんだと思います。写真で味噌汁の具を当てる企画があって、私は絶対にシジミだと思って、共演者の方々に『あさりかもしれないよ』と言われてもシジミの主張を貫いていたら、『すごく頑固ですね』と言われました。そこで初めて『私って頑固なんだ』と気づいて(笑)。直感をすごく信じているので、センスを嗅ぎ取る力はたぶん長けている気がします」

多忙な日々での「自分のリズム」は大切にしているという【写真:増田美咲】
多忙な日々での「自分のリズム」は大切にしているという【写真:増田美咲】

俳優としては「感覚派」

 円井は自身の“ターニングポイント”をどのように捉えているのか。

「一番大きいのは、(2022年に)主演させていただいた映画の『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』。その後に地上波のドラマでレギュラーをやらせていただいたり徐々に番手が上がって、いろいろ頑張っていたら朝ドラのオーディションがあって『ばけばけ』に受かったので、『ばけばけ』も転換期だなと感じます」

 一方で、『ばけばけ』出演を経て変化はあったのかという問いには、「何か変わった自覚はあまりないんです」と苦笑する。

「すごくいい作品に出会えたと思います。敢えて言うなら、役に対して“使命”みたいなものをずっと持っていたんですけど、『ばけばけ』を通して“ただその人を生きるだけでいい”という考えになりました。髙石さんの底なしのピュアさにもすごく刺激を受けました。彼女を見て、素直に生きていいんだなって(笑)。私、人と違うことをしたいタイプなんです。人と違うことをしたいとは言わず態度に示すタイプだったんですけど、最近は『人と同じことをしたくない』とちゃんと言うようになったかもしれません」

 役作りにおいても、根底にあるのはやはり「直感」だ。

「考えすぎてもあまりいいことはなかったです(笑)。創作は、考えて功を成す人と、感覚で功を成す人に分かれると思っていて、私は完全に“感覚派”。直感で行かないと、思考がバーっと働いた瞬間に本当に終わってしまうので、直感をすごく信じています。だから、以前は(役を)作り込んでから撮影に臨むとお話していたんですけど、『こうだろうな』でやってみて違えば変えるし、やってみてOKだったら『よし、このままで行こう』という感じです」

 話題作に数々出演し、多忙な日々を送る中でも、「生活を大事にする」というスタンスは崩さないという。

「私は生活を大事にしないと心が病んでしまうタイプなので、生活を大事にした上でお芝居があると思っています。最近すごく忙しい時期があったんですけど、『わーっ!』となってしまったので、ちゃんと自分のリズムは大事にしようと改めて思いました。先日、青森に行って、山とか湖がある奥地に3日ほどこもっていました。自然と融合する、都会から離れるのが、すごく大事な気がしています」

根は「人懐っこいタイプ」だと笑う【写真:増田美咲】
根は「人懐っこいタイプ」だと笑う【写真:増田美咲】

創作活動にも意欲

 過去には、「ムロツヨシさんがお手本」とインタビューで発言しているが、“目を引かれる俳優”は他にもいるという。

「ムロツヨシさんは無名の俳優さんとかにもちゃんと接してくださっていたので、『こういう人になりたい』と人間性が好きになりました。ただ、俳優として“女版ムロツヨシ”になりたいと言われたら、そうではなくて(笑)。すごいなと思う女優さんの1人が、内田慈さん。慈さんは、映像でも舞台でもお芝居が素晴らしいんです。慈さんみたいに、どこでも通用する役者っていいなと率直に思います。上京した時から慈さんのことは大好きだったので、慈さんが出る舞台とかは見に行ったりしていました」

 円井は自身のキャラクターについて、「何かにとらわれたくない人間」だと分析する。

「昔、尖っていた時期もありました(笑)。でも、ベタベタするわけではないですけど、すごく人懐っこいタイプです。みんなからよく言われる『自由人』という言葉が、一番合っている気がします。堅苦しいと息が詰まっちゃいます(苦笑)」

 今を時めく俳優の1人となった円井。今年28歳となった彼女が思い描く今後のビジョンは――。

「数年前は、『海外進出が夢』と言っていたんですが、『TOKYO VICE』(2022年)の時にすごく大変だなと思いました。ワンシーンに1週間かけて撮ったりしていたので、今のところ、それができる余裕がまだ私にはないです(苦笑)。今は、生活を大事にしながらお芝居をもっと頑張る。あとは、ミュージックビデオ(MV)のディレクションとか創作も始めていて、また違うベクトルで頭を使ったりして楽しいので、両方を応援していただけるとうれしいです」

 独自のカラーを持ち、鮮烈なインパクトを残し続ける円井の進化はまだまだ止まらない。

□円井わん(まるい・わん)1998年1月3日、大阪府出身。2016年から俳優活動をスタートさせ、17年に『獣道』で映画デビュー。映画『KONTORA-コントラ』(21年)、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(22年)では主演を務める。ドラマではNHK連続テレビ小説『虎に翼』(24年)、TBS系連続ドラマ『不適切にもほどがある!』(24年)、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』(25~26年)、TBS日曜劇場『GIFT』(26年)など数々の話題作に出演。

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