お見送り芸人しんいち、クズキャラ裏の泥臭さ 孤独の深夜ラジオで反省の日々「僕はそんな器用じゃない」
『R-1グランプリ 2022』王者のお見送り芸人しんいちが、ラジオ大阪×ミクチャの番組『サクラバシ919』の月曜パーソナリティーに就任して1年。賞レース優勝から数年がたった今も芸能界で生き残り、トーク番組への出演を増やしている。その裏には、深夜のラジオブースで泥臭く己のトークスキルを磨き続ける日々があった。テレビのイメージとは真逆の、ストイックな一面の裏側に迫った。

『サクラバシ919』の月曜パーソナリティーに就任して1年
『R-1グランプリ 2022』王者のお見送り芸人しんいちが、ラジオ大阪×ミクチャの番組『サクラバシ919』の月曜パーソナリティーに就任して1年。賞レース優勝から数年がたった今も芸能界で生き残り、トーク番組への出演を増やしている。その裏には、深夜のラジオブースで泥臭く己のトークスキルを磨き続ける日々があった。テレビのイメージとは真逆の、ストイックな一面の裏側に迫った。(取材・文=島田将斗)
月曜日の深夜に2時間、たったひとりでトークする。このルーティンが着実に芸人としての引き出しを増やしていた。
「トレーニングになってますよね。ここで話すことってテレビのトークに持って行けたりする。逆にテレビの話をここで話すのが楽しみというか。このサイクルの1週間が実になっている感覚がありますね」
最近では、先輩芸人から「お前、トークうまくなったな」と褒められることもある。他にも、テレビのスタッフから「めっちゃ聞いてます。面白いですよ」と声をかけられることが増えたという。
同番組のパーソナリティー就任時には「ゴシップを話す」と意気込んでいたが、実際は全く異なる内容になっている。
「ラジオとテレビで違うことやっている人が多いと思うんですけど、僕はそんな器用じゃない。楽屋もテレビもサクラバシ919も変わらない。自分のアカンところとか、できへんところとか、失敗とかが出ていると思います。僕めっちゃアホなんで漢字も読めないんですよ。リスナーさんのメールを見て『何て書いてんのこれ?』って言うてるパーソナリティーって感じですね」
そのためか、リスナーとの距離も近い。「パーソナリティーを崇拝するラジオもあると思うんですけど、僕はいい意味で舐められていますね。別にそれでええし、こっちも言う時は言う、それぐらいの距離感ですよね」と明かした。
この番組とは別に『R-1グランプリ』でしのぎを削ったZAZYとポッドキャスト番組を3年間やっているが、ここでも自身の成長を感じる瞬間がある。
「2人でめちゃくちゃしゃべってるんですけど、いまはZAZYのしゃべりのテンポが遅く感じることもあります(笑)。僕は毎週視野を広げて、ひとりで2時間やっているので、羽がついたヒールでホットパンツの奴のパンチが遅く感じるというか……」
ポッドキャストを始めた当初は「ZAZYおもろいな、なんでこんなん思いつくんやろ」という思いが強かった。4年たったいまは「完全に抜きました」と豪語するが、決して調子に乗っているわけではない。ラジオでのひとりしゃべりがまるで「千本ノック」のような過酷な鍛錬となり、その成果としてトーク番組への出演も増えていったのだ。
「『しんいちトークいけるんだ』ってイメージがついている関係者が増えたと思います。『これ背負ってくれ』って言われるときもあって、サクラバシ919でかなり筋肉ついたのかなと思いますね」

スマホのメモ帳には大量のラジオトークネタ
ただ話しているだけでは成長しない。テレビの「クズキャラ」とは変わって、反省の日々を送ってきた。放送前には担当作家の吾郷氏と通常よりも時間をかけて打ち合わせをし、放送後の帰路では「こうしたほうがよかったかな」と自問自答する。スマホのメモ帳にはトークネタが大量に刻まれている。
「テレビやったら、周りの芸人があいづちとかでうまく話を広げてくれるんです。その話をそのままラジオに持ってくると、背景がテレビのままだから伝わらへん。より丁寧に、細かく説明の導入の部分をやらんとアカンなっていうところは、めっちゃ反省しながらやりました。同時に『自分が分からんうちにMCの人がトークを面白くしてくれてるな』と気が付きましたね」
振り返りの大切さを認識しているが、当初は真逆だった。いまでこそ「大きな存在」と感謝する吾郷氏のことは「嫌だった」と明かす。
「吾郷くんはなんか難しそうな人だなと。俺の知らないこと言うから『ん? 何言ってんの?』って思っていたんです。でも毎週、メールテーマを作ってきてくれる。分厚い台本を見て『これどうやろう?』ってやっていくうちに近くなって。叩き上げしてくれてんなと。吾郷くん描いていることよりもプラスでおもろなってたら、僕の勝ちと思っています」
リスナーから届くメールも少ない方だ。逆に、テーマメールが複数届いても1通も読まずに放送が終わることもある。ラジオブースはまさに「精神と時の部屋」となっている。
「コンビと違ってこれ完全にほぼ一人でやってる。フリ、ボケ、オチ、落語やないけど声を変えたりもしていて。気付いたら、ホンマにテクニックがついていました。ラジオ番組の中でも、ここは結構難易度高いと思ってますよ。ここをやっておけば、他にゲストで呼ばれた時も強いですよね」
どこに行っても通用する確かな筋肉を手に入れたしんいちにとって、今やこのラジオ番組は単なるレギュラー仕事の一つではない。番組への思いを問うと、飾らない本音が漏れた。
「ぶっちゃけ4月までに終わると思ってた。火曜日の山添(寛)さん、木曜日の都築(拓紀)がすごいからホンマに申し訳ないなと。週の始まりを俺でええんかって思いつつ、パーソナリティーが続くってなったときはめっちゃうれしかったすね」
他の曜日のパーソナリティーには「勝たれへん」。そう本音をこぼしながらも、「先頭集団から離されへんようにしたいと思います」と語るその目は決して勝負を諦めてはいない。
ラジオのマイクの前に座る姿はテレビで見せるふてぶてしさとは違う。泥臭い努力家のしんいちのトークは、これからさらにエンタメ界を席巻していくに違いない。
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