小林幸子、初の長期休業を取ったワケ 芸能生活60年「休むことは罪悪」からの変化とは

1964年のデビュー以来、第一線を走り続け、芸能生活は60年を超える歌手・小林幸子。常に新しい挑戦を続ける“ラスボス”は、今年1月に自身初となる「1か月の長期休業」を取った。「BAG@渋谷二丁目ストリートギャラリー」(2月27日から全面オープン)の一人としても登場し、多忙を極める彼女が、なぜ突然の長期休業を決断したのか。

今年1月に「1か月の長期休業」を取った小林幸子【写真:増田美咲】
今年1月に「1か月の長期休業」を取った小林幸子【写真:増田美咲】

今年1月に自身初となる「1か月の長期休業」

 1964年のデビュー以来、第一線を走り続け、芸能生活は60年を超える歌手・小林幸子。常に新しい挑戦を続ける“ラスボス”は、今年1月に自身初となる「1か月の長期休業」を取った。「BAG@渋谷二丁目ストリートギャラリー」(2月27日から全面オープン)の一人としても登場し、多忙を極める彼女が、なぜ突然の長期休業を決断したのか。(取材・文=平辻哲也)

「いわゆるアメリカのアーティストの方とかが『1か月休む』とかっていうのを、60年間ずっといろんな人を見てきて、一度自分もやってみたいと思ったんですよ。もう1回自分と向き合って大事にして、人生とは、歌とは、自分のこれからとか、いろんなことを考えたいなと思って1か月休んだんです」

 昭和から平成、令和へと駆け抜けてきた小林にとって、これまで「休むことは罪悪」だと思い込んでいたという。だが、意を決してスタッフに「1月休みたいんだけど、いいかな」と相談すると、「いいんじゃないですか、休んでくださいよ」とあっさり快諾された。「心の広いスタッフで。でも、スタッフも休みましたけどね(笑)」とうれしそうに振り返る。

 海外旅行などの派手なバカンスに出ることは一切なく、旅行にも行かなかった。「ずーっと家にいて、晴耕雨読ということをやってみよう」とスタートした休業生活。だが、根っからのエンターテイナーの休日は、想像とは少し違った方向に進んでいった。

「自分用の記録のために、元旦から朝8時にウォーキングをやったんです。自分で自撮りしながらやって。2日目も朝8時からやって、3日目もやって。でも、4日目に挫折(笑)。たかだか30分ぐらいしか歩いてないのに筋肉痛になっちゃって、『ダメだこりゃ』って。2、3日休んでからまたやったりしましたけどね」

 さらに、自宅で一番時間を費やした愛猫とのふれあいでも、予想外の結末が待っていた。

「もう忙しくて猫と遊ぶ時間がなかったりしていたので、『ごめんね』って言いながら遊んで。最初はすっごい喜んでくれたんです。でも最後にはうっとうしがられてましたね。最後は『まだいるのか』みたいな(笑)」

休業期間で得た気づきを明かした【写真:増田美咲】
休業期間で得た気づきを明かした【写真:増田美咲】

「もう『1か月休む』って言わないと思います」

 仕事として人前で歌を披露することは、約3週間にわたって封印した。長年歌い続けてきた小林にとって、歌えないことで禁断症状のようなものは出なかったのだろうか。

「ないですね。私の場合は『休むんだ』って決めてスタートしてるから。それに、歌えないわけじゃないし、すぐ2月にはレコーディングが待っているから、家では1月中旬からよく歌ってました。だから『すごく歌いたい』ってことは特になかったです」

「人生とは、歌とは」を考えるために取ったはずの1か月。だが結局、深く考え込むようなことはなく、「結論から言うと、何も考えなかった。ただ今与えられていること、やりたいことをひたすらやることが一番いいし、楽しい」という極めてシンプルな境地に至った。しかし、この休業期間は小林に、ある一つの大きな気づきを与えてくれたという。

「今までこれだけ長い間やらせてもらったことは、人との出会いとかいろんなことがあって、ファンの人たちに感謝ですよね。それは分かるんですけど、でも、もう一つ感謝を忘れていた。何に感謝を忘れていたかっていうと、自分自身に感謝をしていなかった。自分の体、体力、健康。『もっと感謝しろよ』って言われて、そうだなと思って。自分が結局生きてなかったら何にも始まらない。自分のことをもっと大事にしなさいってことを教えてもらったような1か月の締めくくりでしたね」

 もっとも、1月の後半になると状況は一変する。

「いっぱい連絡が来るんですよ。レコーディングがどうの、資料がこうだとか。2月からすぐ仕事がたくさん入ってましたから。だから実質半分ぐらいは、後半はもうなんか忙しかった」と笑う。

「1か月休んで分かったので、多分もう『1か月休む』って言わないと思います。定期的に2日とか3日とか休みを入れればできるじゃん、と思って。でも、結果的に何も変わりませんでしたって言いましたけど、やっぱりどっか変わっているんですよね。より『仕事を受けたら楽しもうよ』って言う気持ちが強くなったのかもしれないです」

 休むことすらも全力で面白がり、自分の糧にしてしまう。小林幸子が世代を超えて愛され、第一線で輝き続ける理由は、そんな底抜けのポジティブさと、自分自身の心と体への真っ直ぐな感謝の念にあるのだろう。

□小林幸子(こばやし・さちこ)1953年12月5日、新潟県生まれ。64年、10歳の時に『ウソツキ鴎』でデビュー。79年に『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、全日本有線放送大賞グランプリや日本レコード大賞最優秀歌唱賞など数々の音楽賞を受賞した。『NHK紅白歌合戦』には34回出場を果たし、華やかで巨大な衣装は毎年大きな話題を呼んだ。近年はニコニコ動画をはじめとするネットカルチャーにも活動の場を広げ、若い世代からも「ラスボス」の愛称で絶大な支持を集めている。

□BAG@渋谷二丁目ストリートギャラリー
場所:東京都渋谷区渋谷二丁目12番地他(東建インターナショナルビル、東建長井ビル跡地)
主催:BAG-Brillia Art Gallery-(運営:東京建物株式会社)
期間:2025年10月31日~2026年10月31日

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