柄本明、共演の米アカデミー俳優は「非常に素敵な人」 閉館後のチームラボで深めた絆
俳優の柄本明が、日米合作映画『レンタル・ファミリー』(HIKARI監督、2月27日公開)に出演。『ザ・ホエール』(2022年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞した俳優ブレンダン・フレイザーと共演した。東京と地方、そして米・ロサンゼルスと英・ロンドンでのワールドプレミアを経て、今の思いを聞いた。

日米合作映画『レンタル・ファミリー』に出演
俳優の柄本明が、日米合作映画『レンタル・ファミリー』(HIKARI監督、2月27日公開)に出演。『ザ・ホエール』(2022年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞した俳優ブレンダン・フレイザーと共演した。東京と地方、そして米・ロサンゼルスと英・ロンドンでのワールドプレミアを経て、今の思いを聞いた。(取材・文=平辻哲也)
本作は、孤独なアメリカ人俳優(フレイザー)が、日本で「レンタル家族」の会社に雇われ、日本の家族や人間関係の機微に触れていく物語。柄本が演じたのは、かつての名声を失いつつある老俳優・長谷川喜久雄だ。
脚本を読んだ当初の印象を「まあ、こういうビジネス(レンタル家族)があるということに『へえ』と思いました」と淡々と振り返る。自身の役柄についても「忘れちゃったなあ(笑)。まあ、そういう仕事だからね」と煙に巻くが、そこには長年、数多の現場を渡り歩いてきた職人俳優の矜持がのぞく。
主演のブレンダン・フレイザーとは、言葉の壁を超えた交流があった。
「非常に素敵な人でね。本当に。大きくて、柔らかくて。ブレンダンの普段の人柄が、平行移動してこの役に入っていくみたいな。無理なく入っていくというか」
交流は撮影現場だけにとどまらなかった。ブレンダンと共に、デジタルアートミュージアム「チームラボ」を訪れたこともあったという。「閉館後にね、彼と一緒に見に行ったんですよ」。静寂と光が織りなす幻想的な空間を、日米の名優が肩を並べて歩く。言葉を介さずとも、同じ時間を共有し、感性のレベルで共鳴し合った。
そうした積み重ねがあったからこそ、2人だけのシーンでは、特別な演出がなくとも通じ合う瞬間が生まれた。「一人でやることじゃないから。お互いに目を見合った瞬間、『あ、うん』みたいなね、そんな空気が生まれましたね」と、互いへのリスペクトが醸成した“静かなる化学反応”を明かす。
劇中では英語のセリフにも挑戦した。「コーチの人がいて、RとLの発音とか徹底的にやられましたけど」と苦笑いしつつも、「やっぱり言葉に乗せる気持ちというものは同じですよ」と、言語の違いは演技の本質においては些末なことだと言い切る。
メガホンを取ったのは、『37セカンズ』(2019年)やNetflixシリーズ『BEEF/ビーフ』などで世界的に評価されるHIKARI監督。
「向こう(ハリウッド)のシステムの中で、ものすごく揉まれたなっていう。それをバイタリティーで、がむしゃらに作っていく。大変なド根性じゃないかな。だけど明るいですよ。『大阪のお姉さん』って感じでね」と、その手腕と人柄を称えた。
ロンドン映画祭でのワールドプレミア、続くロサンゼルスでの上映では、観客からスタンディングオベーションで迎えられた。
「昔、『カンゾー先生』でカンヌへ行ったり、『ある船頭の話』でベネチアへ行ったりしましたけど、向こうの反応っていうのは温かいですね。自分たちの作ったものを迎え入れてくれる温かい拍手。それはロンドンでもロスでも感じましたね」。77歳にして新たな国際的評価を得た柄本だが、その姿勢はあくまで自然体だ。
□柄本明(えもと・あきら) 1948年11月3日生まれ、東京都出身。日本映画・演劇界を代表する名優。1976年に劇団「東京乾電池」を結成し座長を務める。98年、今村昌平監督『カンゾー先生』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞ほか主要映画賞を多数受賞。2010年には『悪人』で同最優秀助演男優賞を受賞した。11年に紫綬褒章、19年に旭日小綬章を受章。近作は『ある男』(22年)、『ロストケア』(23年)など。3月には記録映画『今は昔、栄養映画館の旅』の公開とイベントも控えている。
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