バイオリニストの葉加瀬太郎が6日、東京・J:COMホール八王子でデビュー35周年を記念した全国ツアー『東海東京フィナンシャル･グループ presents TARO HAKASE 35th Anniversary The Best of 35 Years 葉加瀬太郎 2025年秋ツアー』の初日公演を開催した。『情熱大陸』や『エトピリカ』など、葉加瀬のキャリアを代表曲と共に振り返り、中盤では観客をステージに招き入れ、即席バイオリン教室を開くなどユニークな構成で詰めかけた満員の観客を楽しませた。ENCOUNTはツアー2日目の松戸･森のホール21（千葉）の模様をレポートし、終演後の葉加瀬を直撃した。（取材・文＝福嶋剛）

　葉加瀬は、東京芸術大の学生だった頃に結成したバンド・クライズラー＆カンパニーでメジャーデビューして今年で35周年を迎えた。8月6日にはこれまでの歴史を曲とともに振り返る豪華ベストアルバム『THE BEST OF 35 YEARS』をリリースし、ファンの間で話題となっている。

　そんなアニバーサリーイヤーを全国のファンと祝おうと今年は北海道から沖縄まで約3か月かけて年末まで35会場44公演を回るロングツアーが幕を開けた。

　今回のツアーでは、名物コーナーの即席バイオリン教室「バイオリンを弾こう」が、2023年以来、久しぶりに復活した。葉加瀬のライブではバイオリンを触ったことがない観客をその場で葉加瀬が1人指名してステージに招き入れ、バイオリンの音が出るまで教えるという企画だ。

　2日目の森のホールでは、最初に手を挙げた客席前方の50代後半の男性を指名した。ステージに上がり、葉加瀬が話しかけるとなんと元水球日本代表のコーチをやっていた方だと分かった。男性はバイオリンを触るのが初めてということで最初は慣れない手つきだったが、開放弦の「レ」と「ラ」の音が出るようにレクチャーを受けると、徐々に音が出始め「人生初めてとしてはしっかり音が出ていますよ！」と葉加瀬が男性を励まし、あっという間にちゃんと音が出るようになった。すると葉加瀬は「そのままずーっと弾いていてくださいね」とお願いすると、男性の伴奏に合わせて葉加瀬とバンドメンバーが『エトピリカ』の演奏を始める。これには会場からも大きな拍手が送られ、無事、演奏を終えると男性は満面の笑みを浮かべて葉加瀬とガッチリ握手した。

　また、今回のツアーでは葉加瀬と共にTHE LADSというバンドでも活動している平均61歳の実力派ミュージシャンたちが脇を固め、ステージ上では終始、息の合った演奏で観客を楽しませた。クラシック、ジャズ、ロック、ダンスミュージックといったオールジャンルから和の曲、ラテン音楽、アラブ音楽に至るまで世界中のあらゆる音楽を詰め込んだ葉加瀬の歴史をひも解く楽曲たちを自在に操りながら筋書きにはないその日、その瞬間しか味わえない演奏を繰り広げた。さらに各会場では、ルーレットで決める曲を用意するなど、世代を超えて音楽の面白さを味わって欲しいと願う葉加瀬のユニークな工夫が散りばめられている。

　本編ラストは代表曲『情熱大陸』が演奏され、総立ちになった観客は、定番グッズの色鮮やかな扇子「はかせんす」を振って大いに盛り上がった。

　終演後、楽屋をたずねると葉加瀬が笑顔を見せながら今回のツアーについて語った。

　昨年9月に顔面神経麻痺により顔の左半分が動かなくなる症状（ラムゼイ・ハント症候群）を発症したが、すっかり元気になったと報告した。

「今回のツアーは、長年、信頼関係を築いてきたバンドメンバーで全国を回るので何が起きても心配ないですし、むしろ毎回、何が起こるか分からないその日にしかできない演奏を楽しみたいと思っています。そんな楽しいツアーですから、ぜひ全国のみなさんにも体験していただけるとうれしいです。年末まで続きますが、2回、3回と足を運んでいただいても飽きない新鮮なステージをお届けしますので、全国でみなさんとお会いすることを楽しみにしています」

　全国ツアー『東海東京フィナンシャル･グループ presents TARO HAKASE 35th Anniversary The Best of 35 Years 葉加瀬太郎 2025年秋ツアー』は、追加公演となった12月29日の東京国際フォーラムAまで続く。