ウルフ アロンのプロレス入り、“先人”小川直也はどう見る「強ければいいんだ、という話ではないから」 贈った金言とは

バルセロナ五輪柔道銀メダリストの“暴走王”小川直也が、前日(23日)に新日本プロレス入団会見を行った、東京五輪柔道100キロ級金メダリスト・ウルフ アロンにエールを送った。小川は配信された会見を映像で確認していたようだ。

ウルフアロンの入団会見【写真:増田美咲】
ウルフアロンの入団会見【写真:増田美咲】

どうやっていくのか新日本。お手並み拝見

 バルセロナ五輪柔道銀メダリストの“暴走王”小川直也が、前日(23日)に新日本プロレス入団会見を行った、東京五輪柔道100キロ級金メダリスト・ウルフ アロンにエールを送った。小川は配信された会見を映像で確認していたようだ。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 小川が自身のYouTubeチャンネル「暴走王チャンネル」でウルフについて言及した。

 ウルフのような五輪メダリストの柔道家のプロレス界進出は、28年前にアントニオ猪木に師事しプロレス界入りを果たした小川以来になる。その際、小川は29歳で新日本プロレスの東京ドーム大会(1997年4月12日)でデビューしたが、この点は同じ29歳で来年1月4日に東京ドームでのデビューが予定されているウルフと酷似する。

 ウルフのプロレス入りはかねてから噂になっていたと話す小川は、「あとはこれからの話。今のプロレスの背景もあるから、そこはどうかな。あとはファンあってのものだから」「どうせやるなら成功してほしい。総合格闘技ではないっていうところがまた、ウルフらしいっちゃウルフらしいのかな」と期待を寄せた。

 これまで少年柔道を見て来た小川。6歳から柔道をはじめたウルフのことは幼少期から知っており、少年時代には小川の長男・雄勢(28)とも対戦したことがあるという。のちに全日本選手権でも戦う両者は、少年時代から切磋琢磨してきたのだ。

 とはいえ、ウルフが会見上で口にした「大学時代にプロレスを見ていた」との発言には「見ていたんだ」と驚いている様子だった。

 小川が言うには、「ウルフは攻めの柔道」をする印象があり、「ウルフのいた100キロ級は外国人も強敵揃い。そこで勝ち抜いているから大したもの」と柔道の強さには太鼓判を押しながら、「それが新日本プロレスとどう融合していくのか」と楽しみにしている様子だった。

 ちなみに小川は、ウルフの会見を見ながら自身の会見を思い出し、「懐かしさを感じた」と話しながら、その当時を思い出しつつ、「俺には猪木さんという人が付いていてくれたけど、付いてくれる人によって変わるんじゃないのか」「(ウルフには)名プロデューサーと呼ばれた人に付いてもらわないと。ウルフには『一人では何もできないからね』とは言っておきたい」「一人でなんとかなる。強ければいいんだ、という話ではないからさ」「(ウルフには)棚橋(弘至)社長が付いてくれるわけでもないから、そこをどうやっていくのか新日本。お手並み拝見」と話した。

 また、ウルフが総合格闘技ではなくプロレスを選んだことに関して、「(そのほうが)想像がつかないから面白いんじゃない? それはそう思ってる。俺はそっち派。MMA(総合)だと想像つくじゃん。みんなが想像がつくとあんまり面白くないんだよ。みんな先行きが分からないところに不安感があるじゃん。不安があることは興味がある(につながる)わけよ。俺はそこは楽しみだよ。だって最初から融合できてたら、あーあって飽きちゃうよ」と話した。

配信されたウルフの会見を確認した小川直也
配信されたウルフの会見を確認した小川直也

もっと若いうちはバンバンやれよ

 たしかにウルフと違い、小川の場合は師である猪木が口にしていた「プロレスと格闘技は同じもの」を実践してきた経緯がある。その結果として当時、絶頂期だった総合格闘技イベントPRIDEにも参戦し、“皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルとも闘った。

「俺の場合はプロレスをやりながらMMAをやりながら、でも『それは全部プロレスです』ってひっくるめちゃったわけじゃん。猪木さんがそういう意向だったし、俺もそれに賛同したし」と話した小川は、あくまで猪木があってこそ、との見解を示した。

 さらに小川は、自身のデビュー戦が、会見からひと月後に急遽実施された過去を振り返り、「(ウルフは)デビューまで半年あるからね。半年あっていいよ」と話しつつ、先人として、柔道家がプロ入りすることに対する思いを明かした。

「一番大事なことは、俺がいつも思っていたことは、(柔道家のプロレス入りは)俺以来じゃん。それよりもっと柔道選手の次なるステップの架け橋になってほしい。ウルフとか俺とか(実績のある柔道家)になっちゃうとさ、そういう人じゃなきゃダメなんだって(なってしまうけど)そういうわけでもないんだよ。やる気さえあればプロなんだからさ。アマチュア時代はウルフが3冠(世界選手権優勝、五輪金メダル、全日本選手権優勝)取ってすごいですよ、とかあってもプロは別だから。イチからスタートじゃん。そういうふうにウルフも(会見で)言ってるわけでしょ、『僕もイチからスタートします』って。同じ条件じゃん。だからもっとバンバン、柔道の人も(プロに)行ってほしいよな」

 また、小川は「最近の若い者はなんて言いたくないシリーズなんだけど、堅実派が多いんだよ」「もっと若いうちはバンバンいろんなことをやれよ。だからウルフには後輩たちの架け橋になるような活躍をしてほしいし、あとはいろんなめぼしいヤツがいたらどんどんスカウトして。プロレス界にどんどん柔道の選手でも進出させてほしい。俺もそういうつもりで柔道柔道って言って来たんだけど、俺の力がなかったのか…」と語り、ウルフには柔道界とプロレス界の架け橋になってほしい旨を語った。

 なお、会見ではウルフがデビュー戦を行う大会で、引退試合を実施する予定の棚橋社長が、自身との対戦はないとの見解を示していた。

 これに関して小川は「世間的には棚橋対ウルフアロンでいいじゃん。俺は今、一番面白いカードだと思う。一番分かりやすいじゃん。棚橋が(試合を)引っ張ればいいじゃん」「だって片や引退、片やデビュー。一番しっくりくるよ」と話し、ウルフのデビュー戦の相手には棚橋社長を推していた。

 果たして小川のみならず、世間も注視しているウルフの今後はどうなっていくのか。できうることなら大きく飛躍し、“暴走王”小川以上に物議を醸すような、プロレス界の台風の目になってもらいたい。

(一部敬称略)

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