大学卒業で女優として新たな扉 22歳・秋田汐梨、両立から解放で高まる“世界を見たい”願望

映画『惑星ラブソング』(今月13日から公開中。時川英之監督)で、ヒロインのアヤカを演じたのは、俳優・モデルとして活動を続ける秋田汐梨だ。広島の街を舞台に、過去と現在、現実と幻想が交錯する本作で、彼女はどのような思いで役に向き合ったのか。

インタビューに応じた秋田汐梨【写真:冨田味我】
インタビューに応じた秋田汐梨【写真:冨田味我】

映画『惑星ラブソング』でヒロインの大学生役

 映画『惑星ラブソング』(今月13日から公開中。時川英之監督)で、ヒロインのアヤカを演じたのは、俳優・モデルとして活動を続ける秋田汐梨だ。広島の街を舞台に、過去と現在、現実と幻想が交錯する本作で、彼女はどのような思いで役に向き合ったのか。(取材・文=平辻哲也)

 本作は、広島を訪れたアメリカ人観光客と地元の若者たちの出会いを通して、過去と現在、現実と幻想が交差していくファンタジードラマ。謎の外国人・ジョン(チェイス・ジーグラー)、地元の大学生モッチ(曽田陵介)とアヤカ(秋田)、そして夢の中で戦時中の広島をさまよう少年ユウヤ──それぞれの物語が静かに重なり合い、やがて忘れられていた“平和の歌”が街に響き渡る奇跡へと繋がっていく。

 出演が決まったのはオーディションだった。

「素直にすごくうれしかったですし、平和をテーマにした作品だと聞いて、『今の時代にこそ必要な物語だ』と思いました」。

 戦争や原爆の記憶が物語の底に流れつつも、若者たちの日常と未来への希望を描いた本作。戦後80年を迎えた今だからこそ、“語り継ぐこと”の意味と重さが、作品の主題として強く印象づけられている。

 秋田が演じたアヤカは、広島の大学生。地元の青年モッチとともに、アメリカ人観光客ジョンを街に案内する中で、不思議な現象に巻き込まれていく。最初は戸惑いながらも、次第に街や人とのつながり、そして過去の記憶と向き合っていく姿は、静かに成長していく若者の姿そのものだ。

「アヤカは、自分にはない勇気を持っている人だと思いました。目的が明確でなくても、海外留学へ行こうと決めたり、新しい一歩を踏み出せる力がある。そういう行動力には、素直に感心させられました」

 一方、秋田自身も中学生の頃からモデルとして活動し、京都と東京を頻繁に行き来する生活を続け、大学進学と同時に地元の京都を離れ、東京での生活を始めた経験がある。

「仕事で京都と東京を行き来する生活も、特別な覚悟があったわけじゃなくて、第二の学校に通っているような感覚でした。あまり辛かった記憶はないのですが、学校が終わって直ぐに東京に向かって、翌日は、早朝から仕事ができるギリギリの時間まで撮影して、帰りの新幹線で勉強して、日付が変わる頃に京都の自宅に帰宅して、翌朝は学校…みたいな生活が頻繁にあって。改めて当時のことを母に聞くと、つらかったことをよく話していたみたいです……(笑)。あまり弱音を吐くことは無いタイプだと思っていたけど、信頼している人にだけ本音を漏らすようなところは、アヤカと似ているのかもしれません」

撮影では言葉の“壁”に苦労したという【写真:冨田味我】
撮影では言葉の“壁”に苦労したという【写真:冨田味我】

海外訪問も検討

 撮影で苦労したのは、言葉の“壁”だった。京都出身の秋田にとって関西弁は自然だが、今回は広島弁という新たな方言に挑戦した。

「関西弁と似ているところもあるんですけど、似ているからこそ混同しやすくて、『これで正しいのかな』と不安でした」

 方言指導のスタッフが録音した音源を繰り返し聞いて練習し、確認を重ねた日々。その地道な積み重ねが、役に自然なリアリティを与えていった。さらには英語のせりふにも初挑戦した。

「私は英語が話せないので、発音を一から教えてもらって、『今、こういうことを話している』と理解しながら演じるのは、思った以上に難しかったです」

 ただ音をなぞるのではなく、感情を伴って言葉を発する。その努力は、画面を通して確かに伝わる。

 撮影は2024年3月に行われた。中でも印象深いのが、屋上でのシーンだという。モッチが屈強な男性に持ち上げられる場面を、どうすれば観客に“危険”と伝わるか。秋田たちはキャスト・スタッフ一丸となって演出を工夫し、限られた時間の中でベストな形を模索した。

「みんなで話し合って、シーンを一緒に作っていけたのがすごく楽しかったです」

 この4年間は仕事と大学生活を両立してきた。舞台や撮影のために授業にはなかなか出席できず、最終学年では大量の単位を取得しなければならなかった。

「卒業が決まったのは本当に間際で、『もうダメかも』って思っていたくらいだったので、決まったときは本当にうれしかったです。もっとお芝居と向き合える時間が増えるので、これからが本当に楽しみです」

 プライベートでは、留学中の友人を訪ねてポルトガルを訪れることも検討している。

「海外は韓国に一度行ったきり。世界を見ると考え方が変わるってよく聞くので、今だからこそ、そういう経験をしてみたいと思っています」

 今、秋田は次のステージの扉を開けようとしている。

□秋田汐梨(あきた・しおり)2003年生まれ、京都府出身。2015年にティーン雑誌のモデルとしてデビュー。2017年に俳優デビュー。近年の主な出演作に、ドラマ特区『ふったらどしゃぶり』(MBS/2025年)、Netflixシリーズ『恋愛バトルロワイヤル』、ドラマDEEP『3年C組は不倫しています。』(NTV系/2024年)、連続ドラマW『事件』(WOWOW/2023年)、『彼女、お借りします』(ABC/2022年)、映画『リゾートバイト』『おしょりん』『映画刀剣乱舞-黎明-』(すべて2023年)、舞台『SHELL』(KAATプロデュース/2023年)、『幽霊はここにいる』(パルコプロデュース/2022年)など。雑誌『Seventeen』専属モデルとしても活躍中。

ヘアメイク:菅長ふみ
スタイリスト:髙橋美咲(Sadalsuud)
衣装協力:ドレス/KANAKO KAKIMOTO

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