四千頭身・都築、私服イジりに本音「しょうもない」 デザイナーとの両立に葛藤「納得せざるを得ない」

ファッション芸人としても知られているお笑いトリオ・四千頭身の都築拓紀。身長177センチのスタイルや独特の感性を生かし活躍する一方でバラエティー番組に出演するとそのファッションをいじられることも多い。芸人という立場でファッションとどう向き合っているのか。

都築拓紀が私服いじりに言及した【写真:舛元清香】
都築拓紀が私服いじりに言及した【写真:舛元清香】

自身のブランド「HIROKI TSUZUKI」を運営

 ファッション芸人としても知られているお笑いトリオ・四千頭身の都築拓紀。身長177センチのスタイルや独特の感性を生かし活躍する一方でバラエティー番組に出演するとそのファッションをいじられることも多い。芸人という立場でファッションとどう向き合っているのか。(取材・文=島田将斗)

 ファッションブランド「HIROKI TSUZUKI」を運営し、業界人として活動している時間も長い。お笑い芸人との切り替えをどうしているのかと聞くと真剣なまなざしで答えた。

「お笑いとは全く離して考えてます。ファッションとお笑いってぶっちゃけ何もつながってないんですよね(笑)。本来つながっていないんですけど、たまにバラエティー番組とかで、それをつなげようとする人はいますけど、本来は全く乖離してますよね」

 ファッションとお笑いをつなげようとしている一番分かりやすい例が「私服いじり」だ。ブランドを運営するほどの都築でも「かっこいい」という芸風ではないため「ダサい」などと笑いものにされてしまうこともある。

「本当は破綻してるんですけどね、あれって。しょうもないなと思います(笑)。僕もそうですけど、世間ではダサいって言われる人たちが何かを言っても“お前らがダサいからだろ”ってなっちゃうんです。批判になってしまうんですけど、破綻はしてますよね……(笑)」

 さまざまな方面へ気を遣いながらであるが言葉の節々に力がこもっていた。

「本来服って正解もなければ、個人の自由。誰が何を着ていてもいいんですよね。下半身露出とか犯罪じゃなければ、その人が“それ”を着ているからって何も起きないはずなんですよ。(私服いじりは)特段服に興味のない人が企画を組む。それってもうこっちに勝ち目がない。作る人にバイアスかかっている状態ですよね。それでどこぞの何も分からない人たちに批判されて……」

 さらに「本当に一流のスタイリストとデザイナーだけを集めて1つの私服を討論しあわせるとかはいい。それで本来は思っていても言わない辛口を本当は思っているから言ってしまうとかだったらまだいい」と続けた。

「ネタにされてるだけなので別にいいんですけど。別にいいと思っている手前、こちらも反論する強さもない。言われたくないとかでもない。みなさんお仕事だし、いじるのはすごい分かる。でもそれを見た視聴者は『右へ倣え』になっていく。この人らに言われる筋合いはそれこそない。でも、僕はそういう仕事を選んでやっている以上は、納得せざるを得ないんです」

デザイナーとしても活動、私服いじりには葛藤もある都築拓紀【写真:舛元清香】
デザイナーとしても活動、私服いじりには葛藤もある都築拓紀【写真:舛元清香】

「あの形でバラエティー番組出てたら…」

 一方でバラエティー番組のように多くの視聴者が目にすることを前提にしたつくりにすれば、業界のすそ野が広がっていくという事例も他にはある。参入が簡単そうに見えて難しいファッションではどうなのか。都築は「そうなりえないと思う」と即答した。

「ヴィンテージが何十万、何百万円するって昔からあるじゃないですか。もう何年もテレビとかメディアを通してエンタメとして消化しても、ファッションがどこまで行ってもコア層だということはライト層のものになれないんじゃないかなと。衣食住なので誰にとっても一緒なんですよ。いいものを着ようが安く済まそうが着れば温かいし、外に出られるし生きていける。必要性が最低限で済むものに関して『なぜそこまで夢中になれるの?』って疑問は本能的に拭えないと思うんです」

 これはファッションの歴史を見ても言えることだという。かつてはカラス族、ボディコン、パラギャル、フェミ男、裏原系など各々が特徴的になるファッションが流行したが、現在は「量産型」という言葉が浸透している状況だ。

「昔の方が日本のファッションってすごかったし。いいとか悪いとかではなく今はめっちゃ普通。『それでいい』って思っている人たちに手を伸ばしても『いいよ、これで』ってなる。古着っていまブームって言われつつも、たかが知れてる。それは限界値なんだろうな」

「ファッションに理屈ってほとんどなくて感性じゃないですか」と例に出したのは、たびたびテーマに上がるファッションショーでの胸が透けている服装についてだ。

「パリコレとか海外のファッションショーで、乳首が透けている服を着ている。“あれって何がいいの?”って言うじゃないですか。あれは攻めたファッションの1個目のいじられる部分だと思うんです。手掛ける人には思想があると思うけど、何が良いかと言われたらカッコイイとは思うけど僕も分からない。基本的にみんな理屈を欲しがるけど、本質的にファッションは感性。一生反比例状態というか、隣り合わないのかなって」

 お笑いとファッション、普通にいれば交わらないものを持っている都築ならば両者の架け橋になるのではないだろうか。これには「あの形でバラエティー番組出てたらならないでしょうね(笑)」とひと言。それでも諦観しているわけではなかった。

「悔しくはないんですけど『ならないかぁ』と。でも、僕は公の場でいじられているのでみんなまねしたくないなと思いますよね、冷静に(笑)」

 それでもファッションが仕事になっている。個性を貫くとは都築にとってどんなことなのか。

「自分のこと好きだけど、自分のことをそんなに大事にはしていない。バカなフリをできるバカ。まぁバカなふりをできる人って結局バカなんでしょうけど。“個性を出したいけど出せません”って人いっぱいいると思うんですけど、仕方ないです。それが悪いことでもない。全員が個性を出していたら日本はとんでもないことになっているし、出さずにこらえている人がいるから世の中成り立っているんです。ただ葛藤している人は苦しいと思います」

「でも個性って周囲の環境で決まると思います」――。多様性が叫ばれる時代、“個性を大事に”と訴えかける一方で自分はどこかで誰かの個性をつぶしてはいないか。最前線で戦っている都築が最後に出したこの言葉はずしりと重たかった。

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