中居正広さんへの接し方に疑問、女性から被害報告を受けたフジ側は「許せない」と思えなかったのか【記者コラム】
元タレントの中居正広さんが、芸能界引退を表明して2日がたった。昨年12月中旬から週刊誌などで20代女性との「性的トラブル」が報じられ、それを明確に否定できないままの決断だった。だが、相手女性に示談金を払い、女性と近い立場であるフジテレビ側が、トラブルの事情を知りながらも使い続けてくれていた事実がある。今後は、本人に「乗り切れた」と思わせた人々、組織の責任がより問われることになる。
27日開催、やり直し会見の大テーマ
元タレントの中居正広さんが、芸能界引退を表明して2日がたった。昨年12月中旬から週刊誌などで20代女性との「性的トラブル」が報じられ、それを明確に否定できないままの決断だった。だが、相手女性に示談金を払い、女性と近い立場であるフジテレビ側が、トラブルの事情を知りながらも使い続けてくれていた事実がある。今後は、本人に「乗り切れた」と思わせた人々、組織の責任がより問われることになる。(取材・文=柳田通斉)
中居さんは天才ではなく、努力の人だった。SMAPの初期から「自分はトークを磨いて、司会者を目指す」と決めていた。グループ解散後はそれが本業になった。歌、ダンスを披露する機会はわずかにあったが、それもバラエティー的なノリ。視聴者を笑わせ、喜ばせるためだった。
そんな中居さんが2022年11月から70日間、画面から姿を消した。病気を患い、治療に専念するためだった。その間の生活ぶりは復帰後に明かした。23年1月15日、ニッポン放送『中居正広 ON&ON AIR』では、「仕事好き」を感じさせるエピソードを語っていた。
「テレビを見ながら、『僕が論ずるのならば』ということをずっと書いていました。(復帰して番組で)何か聞かれた時用だよね。ああいうのも何か書いて見返しておかないと、頭の中に刷り込まれないからね」
だが、今回は復帰を断念した。カメラの前に立つことなく、文書を残して去った。会見を望む声も多くあったが、トラブルの内容を明かしたくないのが本音だろう。
振り返ると、中居さんはテレビ局員、スタッフらとともに歩んできた。私が新聞社のデスクだった頃の12年前、番組関連で単独インタビューした時も大勢がその様子を見守り、中居さんのコメントにうなずいていた。周りからは常に気をつかわれ、同意されていた。理由は番組を任せられる実力、視聴者への影響力があるからだ。当時、所属していた旧ジャニーズ事務所は20年3月末に退所。その後も仕事は順調でテレビ局員、スタッフから大事にされ続けた。
どの世界でも、「力のある人」「利益をもたらす人」は気をつかわれる。時には周りが忖度し、不祥事もなきものにする。取材をしていく中、「実はあの人、前に大きなトラブルを起こしているけど、後援者がすぐに動いたから表沙汰にならなかった」との話も耳した。だが、それが「性的トラブルで深刻なもの」だった場合、被害者に近い人たちは「許せない」と思うのが当然だろう。
同時期にジャニー喜多川氏問題で「性加害は許されない」の声明
今、フジテレビ側が問われているのは、この感覚があったかどうか。被害者の人権を軽視し、テレビ局にとって売り上げに直結する視聴率を優先で「このままうちで仕事を」「示談も済ませたようだし」という感覚でいたとしたら、「最悪」と言わざるを得ない。
港社長は会見で「女性のプライバシーを守りたかった」「番組を終わらせるタイミングを計っていた」と言うが、中居をパリ五輪の特番に起用した事実もある。それを止めなかったことについて、民放連会長で同局の遠藤龍之介副会長は23日の会見で「止めることで臆測を呼ぶかもしれなかった」と釈明した。だが、それは真実なのだろうか。
女性は最新号の週刊文春でも、中居さんがフジテレビから“出禁”にされず、テレビに出続けていることについて「絶望しました」とコメントしている。23年、故ジャニー喜多川氏による性加害が大問題になり、フジテレビも同年8月29日、「性加害が決して許されないことは当然です。当社としても、あらゆる人権侵害を防ぐべく対処していく所存です」との声明を出している。女性からの被害報告を受けたとされる同年6月には、既にジャニー氏の問題はクローズアップされていた。にもかかわらず、中居さんは気をつかわれ続けていたことになる。
だからこそ、女性は中居さんとフジテレビを「今でも許せない」と週刊文春に語ったのだと思う。仮に被害報告を受けた際、フジテレビ側が女性と同じ気持ちで「絶対に許せない」と思っていたら、少なくとも中居さん本人に聞き取り調査をしていたはずだ。それをしなかった本当の理由とは何なのか。それが、27日に開催される「やり直し会見」での大テーマとなる。