新・帝国劇場の概要が明らかに 劇場は90度回転、“行列”トイレも改善 設計は国内外で受賞多数の建築家・小堀哲夫氏

新・帝国劇場の概要に関する記者発表会が16日に開催され、「日本建築学会賞」「JIA日本建築大賞」など、国内外で数々の受賞歴を誇る建築家の小堀哲夫氏(54)が新・帝国劇場の建築を手掛けることが発表された。新・帝国劇場の建築デザインコンセプトは「THE VEIL」。小堀氏は「帝国劇場は時代を経ても色褪せない感動を持っています。帝国劇場に携われたことを光栄に思っています」と喜びを語った。

建築家の小堀哲夫氏【写真:(C)Tetsuo Kobori Architects】
建築家の小堀哲夫氏【写真:(C)Tetsuo Kobori Architects】

設計者選定の経緯も説明

 新・帝国劇場の概要に関する記者発表会が16日に開催され、「日本建築学会賞」「JIA日本建築大賞」など、国内外で数々の受賞歴を誇る建築家の小堀哲夫氏(54)が新・帝国劇場の建築を手掛けることが発表された。新・帝国劇場の建築デザインコンセプトは「THE VEIL」。小堀氏は「帝国劇場は時代を経ても色褪せない感動を持っています。帝国劇場に携われたことを光栄に思っています」と喜びを語った。

 帝国劇場は、1911年に開設され、現在の“2代目”が竣工したのが1966年。半世紀以上にわたって多くの人々に親しまれてきた。このたび、劇場が入るビルの老朽化に伴い、隣接するビルとともに建て替えが決定し、2025年2月をもって休館する。

 設計者選定の経緯は、22年に「指名型プロポーザルコンベ」(オープンコンペとは異なり、指名した者が参加できる形式)を実施。有識者も含めた選定委員会を設け、実績、デザイン、将来性などにおいて厳正な審査をした結果、小堀氏が選定された。小堀氏の提案は帝劇の継承と発展を理解し、新しい帝国劇場のあり方を的確に捉え、期待感にあふれる提案内容だったという。

 新しい帝国劇場の建築のコンセプトは、「THE VEIL」。帝国劇場は皇居に面し、水のきらめき・美しい光・豊かな緑といった唯一無二のロケーションに恵まれている。それらの自然をまとい、自然に包み込まれるようなイメージが、新しい劇場にふさわしいと考えた。自然の移ろいを感じながら、ヴェールの向こう側の世界を想像することで、人々の期待感は最高潮に達する。そして、ホワイエの華やかな風景が街から垣間見えることで、街の舞台となるような劇場を作り出す。

 正面性をもったエントランス・ホワイエ・客席・舞台への連続性は、新たな帝国劇場の格式をつくる。ヴェールのように幾重にも重なる空間をくぐり、体験が変化していくことで、客席に至るまでのアプローチ全体も含めて、この場所でしかできない豊かな観劇体験をつくり出す。帝国劇場のもつ華やかさを発展させながら、世界に向けて発信できる日本の劇場として、すべての人に高揚を与える、そしてこここちよい空間となることを目指す。それは「未来を見つめた日本らしさ」でもある。これらのコンセプトのもと、関係者とともに現在設計を進めているところという。

(1)劇場の配置を90度回転/正面性のあるアプローチ

 メインエントランスはこれまでと同様、丸の内5th通り側になるが、劇場の配置を90度回転することで、エントランスの正面に客席を配置した計画となる。正面性が高まることで、格式高い劇場空間になるとともに、開演・終演時の混雑緩和に配慮した動線計画となっている。

(2)見やすくゆとりがあり一体感のある客席

 この場所でしか体験できない、より一体感が感じられる客席空間に。現在の劇場と同等数程度の客席数を設けながら、現・劇場より見やすいサイトラインを備えた、ゆとりのある座席とし、今まで以上に快適な観劇環境を目指している。

(3)最先端の技術を備えた、演出の可能性を最大限引き出す舞台

 現在と同規模の舞台空間とし、演出の自由度のある設えとする。舞台袖上部には、十分な作業性・安全性を確保したテクニカルギャラリーなどを設ける計画。さらに世界レベルの最先端の舞台技術を導入。楽屋やスタッフのスペースの快適性にも配慮し、誰にとってもここちよい帝劇を目指す。

(4)ロビー・ホワイエ空間・機能の強化/劇場と日比谷の街をつなげる劇場カフェの整備

 ロビー・ホワイエ空間が広がり、よりここちよく過ごせるとともに、カフェやバーなどの充実を図ることで多様な過ごし方ができる空間となる。またトイレ等のユーティリティー機能を拡充し、幕間も含めた総合的な観劇体験の充実を図る。

 さらに、有楽町駅側の南東の一角には、一般の方も利用できるカフェ等を劇場に併設し、観劇前後や公演以外の時間も楽しめる劇場に。劇場と丸の内の街がより一体となって、地域に親しまれる劇場を目指す。

(5)劇場全体でのアクセシビリティ強化

 新たな劇場もこれまでと同様、都内の複合施合施設では数少ない1階に客席がある劇場となる。屋外から段差なく客席までアクセスでき、まちと劇場のつながりもより感じられる劇場。地下には、エレベーター・エスカレーターを設けた劇場ロビーを新設する。地下鉄からもよりアクセスしやすくなり、多様なお客様が劇場へ訪れやすい計画になっている。また施設内の商業スペースなどへもアクセスしやすく、公演前後の体験も含めて、誰もがここちよく楽しめる劇場となる。

 発表会では、帝国劇場の名作、設計者プロフィール、新帝劇イメージ映像をまとめたムービーが上映。東宝株式会社 常務執行役員のエンタテインメントユニット演劇本部長・池田篤郎氏と、設計者の小堀氏が説明を行った。池田氏は「新しい帝国劇場に関しては、小堀さんの設計で自然光を取り入れて明るさと華やかさを提供していきたい」と話した。

 リニューアル時期について、池田氏は「2030年度を予定しています。諸情勢を鑑みて、お知らせできる変化がありましたらお答えできる時期にお知らせをしたいと思っております」と答えた。施工業者に関しては検討中という。

 帝国劇場の象徴とも言えるステンドグラスの使い方について、池田氏は「この劇場自体は本当に美術館みたいなもの。小堀さんも非常にそこは考えてくださっています。何とか残せるところは残したい気持ちであるんですが、今こういう風にしますとはお答えできるような状況には至ってないです。ただ、我々の考えでは、この継承というのはできる限りしていきたいという気持ちはあります」と話した。

 休憩時間に、行列ができるトイレ問題についても「大幅に個数を増やしていこうとは思っています」と改善策を明かした。

 小堀氏は1971年9月29日、岐阜県生まれ。97年、法政大大学院工学研究科 建設工学専攻修士課程(陣内秀信研究室)修了後、久米設計に入社。2008年、株式会社小堀哲夫建築設計事務所設立。17年「ROKI Global Innovation Center -ROGIC-」で日本建築学会賞、JIA日本建築大賞を同年にダブル受賞。19年に「NICCA INNOVATION CENTER」で二度目のJIA日本建築大賞を受賞。海外では、風土、地域社会、歴史を踏まえたクライアントとのワークショップを通して、極めて質の高い建築を設計、建設したということで、デダロミノッセ特別賞を受賞した。代表作に「ROKI Global Innovation Center-ROGIC-」、「NICCA INNOVATION CENTER」梅光学院大学「CROSSLIGHT」など。

次のページへ (2/4) 【写真】新・帝国劇場の遠景イメージ、劇場エントランス、客席
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