【マーベラス】“令和のクラッシュギャルズ”へ…長与千種の遺伝子持つ18歳コンビ暁千華&彩芽蒼空がプロレスラーになるまで

2024年はNetflixシリーズ『極悪女王』の配信により、昭和の女子プロレスが再注目された1年となった。その主役の一人が、クラッシュギャルズとして一世を風靡した長与千種。その長与が手掛けた新人二人が、昨年末デビューした。赤いコスチュームの暁千華(あかつき・せんか)と、青いコスチュームの彩芽蒼空(あやめ・そら)。目立ったスポーツ経験もなかった同じ年の二人(今年19歳になる早生まれ同士)は、運命的に2023年夏に出会った。暁と彩芽はどのようにマーベラスに誘(いざな)われ、プロレスラーになったのか。

マーベラスの新人・暁千華と彩芽蒼空【写真:橋場了吾】
マーベラスの新人・暁千華と彩芽蒼空【写真:橋場了吾】

彼女たちの運命を変えたのは、長与千種、桃野美桜、木村花、ウナギ・サヤカ

 2024年はNetflixシリーズ『極悪女王』の配信により、昭和の女子プロレスが再注目された1年となった。その主役の一人が、クラッシュギャルズとして一世を風靡した長与千種。その長与が手掛けた新人二人が、昨年末デビューした。赤いコスチュームの暁千華(あかつき・せんか)と、青いコスチュームの彩芽蒼空(あやめ・そら)。目立ったスポーツ経験もなかった同じ年の二人(今年19歳になる早生まれ同士)は、運命的に2023年夏に出会った。暁と彩芽はどのようにマーベラスに誘(いざな)われ、プロレスラーになったのか。(著者・橋場了吾)

 まずは暁千華。石川県出身の彼女とプロレスの出会いは、流血戦だったそうだ。

「小学生の頃ですね、9歳のときに夜中になかなか寝付けないときに、母親に見せられたのが尾崎真弓さんと下田美馬さんのシングルマッチでした。これが大流血戦でトラウマになりそうだったんですが(笑)、初めて見る世界にどんどん魅せられていって、全日本女子プロレスの対抗戦時代の試合を見るようになりました。高校生になってからですかね、プロレスラーに成りたいと思ったのは。石川県にはなかなか女子プロレスが来ないのですが、スターダムとイベントで来たセンジョは生観戦しました。親には軽く言っていたんですが、本気だとは思っていなかったみたいで。ただ親も対抗戦時代世代なので『この子、本気なのかな?』と思ってきたみたいです。

 マーベラスを選んだのは、やっぱり長与さんの団体だったからです。アッセンブル(2020年11月に上野で開催された『Women’s Pro-Wrestling Assemble』。女子プロレスオールスター的なカードが組まれた大会)で北斗晶さんが長与さんの凄さを語られていて、そこで長与さんがマーベラスという団体の代表をされていると知ってここしかないなと思いました。あと桃野美桜さんの試合を見て憧れていたのも、マーベラスに入りたいと思ったきっかけですね。学生時代は吹奏楽部だったので、スポーツは全然やっていなかったんですが……」

 片や彩芽蒼空。彼女の場合は、ある女子プロレスラーからのアドバイスがあったそうだ。

「コロナ禍になってすぐに、時間がたくさんあったのでずっとYouTubeを見ていて、たまたま木村花さん(故人)とジュリアさんが乱闘する映像が出てきたんです。それがプロレスとの出会いで『何これ? すごい』と思って。それから花さんの試合を見るようになって、スターダムにウナギ・サヤカさんが出るようになってから、ウナギさんに夢中になりました。ウナギさんの試合をいろいろなところに見に行って、本人にも『プロレスラーになりたい』と伝えたんです。

 そうしたらウナギさんからDMが来て、女子プロレスラーになるなら自分のもとでやってほしい、マーベラスなら道場も寮もあるし練習もしっかりしているからいいんじゃない? と教えてもらって。もう、ウナギさんと一緒のリングで戦えるならと思って、マーベラスに応募しました。私はダンスをやっていたんですが、大会に出るようなレベルではなかったので、スポーツ経験はないのと一緒ですね」

赤と青、対照的なコスチュームで試合に臨む【写真:(C)マーベラス】
赤と青、対照的なコスチュームで試合に臨む【写真:(C)マーベラス】

練習は厳しくて辛いのは当たり前のこと

 暁と彩芽が初めて会ったのは、2023年夏。ともに高校生活最後の夏休みに正式入門前の合宿が行われたときだった。彩芽は暁に対して「でかい」という印象で、暁は彩芽に対して「静かそうでかわいい」という印象を抱いたという。彩芽はいう。

「最初、私は腕立てが一回もできなかったんですよ……膝をついてもできなくて、先輩がここ(お腹の下)にタオルを入れて引っ張ってくださったんですけど、自分が全然支えられなくて、タオルがそのままビリビリ裂けてしまうという(笑)。腕立てに10分もかかるレベルでした。でも、もうやるしかないですよね。きつかったですけど、何とかできるようになりました」

 暁にとっても練習はきつかったというが、耐えられた理由があった。

「先輩方が練習そのものを見てくださるっていうのもあるんですけど、今私がこう考えているだろうなとか今ここが弱いなとか、そういう部分もすごく見てくださっているので、自分も理解しやすいですし愛情をもって教えてくださっているのがわかるんです。厳しくて辛いのは、先輩方もよく言ってらっしゃる通り当たり前だと思っていました」

 暁も彩芽も、2024年3月に高校を卒業しマーベラスに入門。暁は同年9月に、彩芽は10月に公開プロテストをパスしてデビューにこぎつけた。実は二人は同日にプロテストを行う予定だったのだが、彩芽が水疱瘡に罹患してしまい暁が先に一人で受けることになった。この公開プロテスト、スクワット300回に始まりスパーリング3本勝負まで、なんと45分も動きっぱなしという過酷なものだった。

「プレッシャーが凄かったですね。一人になっても絶対合格することしか考えてないわけで、緊張はするんですけど、マーベルスのプロテストも久々だったので余計にプレッシャーを感じました。私は前日に大体の流れはいわれていて、基礎体がスクワット300回か腕系のメニューになるかの二択で、ぶっつけで決まるという……。だんだん頭が回らなくなってきますし、体も動かない。でもテストは続くから苦しいけどやり続けなきゃいけないという、気力で何とかするしかない状態でしたね」

 一方の彩芽は、水疱瘡で体力も筋力もピーク時から落ちてしまった状態でプロテストに臨むことになった。

「プロテストの5日前ぐらいから、やっと練習が再開できた状態だったので、事前に練習していたときよりもできないからどうしようと思っていました。実は当日もプロテストを受けるかどうか迷っていたんですが、先輩方が合格してもしなくてもお客さんは自分が頑張っている姿が見たいんだから挑戦してみなよ、とアドバイスしてもらって決断できました」

 無事プロテストをパスした二人は、デビュー戦に臨むことになる。その相手は、とんでもないレスラーが用意されていた。

(17日掲載の後編へ続く)

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