【マリーゴールド】ロッシー小川氏、“1・3興行戦争”へ 古巣スターダムに言及「ウチは“闘い”を見せていけばいい」
過日、2024年のプロレス大賞における女子プロレス部門に Sareeeが選ばれたが、今年、最もプロレス界を掻き回した人物の筆頭に挙げられるのはマリーゴールド(MG)のロッシー小川代表だろう。今年2月4日付でスターダムから業務委託契約を解除されたが、その理由は所属選手・スタッフに対する引き抜き行為によるものだった。結局、小川代表は、5月にMGを立ち上げ、待望のジュリア―Sareeeをはじめ、次々に話題を提供してきた。
業界50周年では何かもらいたい
過日、2024年のプロレス大賞における女子プロレス部門に Sareeeが選ばれたが、今年、最もプロレス界を掻き回した人物の筆頭に挙げられるのはマリーゴールド(MG)のロッシー小川代表だろう。今年2月4日付でスターダムから業務委託契約を解除されたが、その理由は所属選手・スタッフに対する引き抜き行為によるものだった。結局、小川代表は、5月にMGを立ち上げ、待望のジュリア―Sareeeをはじめ、次々に話題を提供してきた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「特別賞か話題賞でしょう」
残念ながらプロレス大賞の受賞はならなかった旨を小川代表に伝えると、そんな言葉が返ってきた。しかも「3年後に業界50周年になるので、そこで何かもらいたいですね、どうせだったら。MGが軌道に乗ってから」と続ける。
それでも小川代表が今年最もプロレス界を引っ掻き回した人物であることに疑いの余地はない。そう進言すると、「意図してやったことじゃなくて、そういう運命にあったんじゃないかな」と答えた。
やり切った感はあるのか、との問いには、「まだ何もしてない。MGを旗揚げしただけだから。これからこれから。これまで全女(全日本女子プロレス)も入れたら団体を変わったのは(アルシオン、スターダム、MGの)4度目かな。その度にガーッと上昇して、同じことを繰り返しているわけですよ。MGもイチから始まったばっかりなので、まだ頂点に達してないし、これからですよ、まだ」とのこと。
とはいえ、丸1年前にはMG構想が頭にあったはずだ、と問うと、「頭の中だけで、何も具体的な行動をしていなかったので……」と話したが、現実的に考えても、小川氏の人生が激動の一年間だったことは間違いがない。この問いに小川氏は「うーん……」と一瞬だけ間があって、「なんか……(スターダムを)抜けて良かったな。それは自分が生き返ってきているし、まだそこで生き返った選手もいるだろうし、そういう意味では」と率直に語った。
では、古巣にあたるスターダムに気になる選手はいるのかと訊(たず)ねると、「気になる選手はいないけど、ニュースはね、やっぱりSNSを見ていると入ってくるし、一応把握しているかな」と話しながら、非常に興味深い返答をした。
小川代表いわく、スターダムの動向について、「(把握は)しているんだけど、なんか細分化しすぎちゃって、絶対的な人がいなくなっちゃったかな。プロレスって格差があって、その格を乗り越えるところが魅力じゃないですか。それが平均化して、誰もが勝ったり負けたりしたら……。相撲だってそうじゃないですか。強い人は横綱が一番強いんだから。だから面白いんでしょう」と答える。さすがは業界歴47年を数える大ベテランの言葉だと感服した。そこにはプロレスを知り尽くしている頑固親父のオーラがあった。
一番楽しみなのは“スーパールーキー”山岡聖怜(せり)デビュー
さて、MGでは年明け1月3日に大田区総合体育館でのビッグマッチを開催する。首都圏における大会場での開催は、7月30日にあった両国国技館以来になる。その話になると、小川代表は「一番楽しみなのはスーパールーキーのデビューじゃないですか。それが一番ですよね、順位をつけるならば」と目を輝かせる。
スーパールーキーとは“腹筋JK”として注目を集めている山岡聖怜(せり)のこと。小学4年生からレスリングを始めた山岡は、全国中学選抜選手権54キロ級で2位、全日本ビーチレスリング軽量級(高校生)で1位を獲得。デビュー前ながら4日には『東京スポーツ』の一面を飾るなど、早くもメディアから破格の扱いを受けている。
小川代表的には、山岡が2025年はMGの台風の目になってほしいとの願望が見え隠れしている気がしたが、まずはデビュー戦を見てみないと分からないというのが正直なところ。現実論として楽しみなのは、メインで争われる、MGワールド王者・Sareeeに林下詩美が挑戦するタイトル戦になる。
現に、Sareeeは19日に行われた会見上、旗揚げから半年経っても大人しい印象を受ける林下に対し、「一生サブキャラやっとけ」と挑発。怒らせて、眠っている林下を覚醒させようとしている。その上で林下を倒さなければ意味がない、との見識が王者Sareeeの狙いだろう。
これに関して小川代表は、「詩美は力はあるんですよ。力はあるんだけど、それを開花させる人がなかなかいない。(スターダム時代に)朱里がいた時は詩美の良さが出たよね」と当時を振り返る。
かつてはUFCでMMA戦を生業としていた朱里と林下は激闘を繰り広げてきた。林下にとって大田区総合体育館は、その朱里と計43分を越える壮絶な両者KO試合を闘った場所(2021年6月12日)でもあり、初のピンフォール勝ちをゲットした(2022年7月31日)ゲンのいい会場でもある。
小川代表は、「そういう強敵じゃないと詩美の強さは出ない。相手が強ければ強いほど詩美は底力が出る。だからSareeeが詩美からそれを引き出すのか。その上で叩き潰すのかもしれないし。ここは大一番だからね。“怒りの詩美”が見られるかどうか。Sareeeによって、今まで見たことのない詩美が出るかもしれない」と期待を寄せる。
いずれにせよ、2025年は林下の出来次第でMGの方向性も大きく変わってくることは間違いない。
また、小川代表は林下同様、「相手が強ければ強いほど底力が出る」と“初代UN王者”青野未来の名前を挙げた。青野は1・3大田区では桜井麻衣の挑戦を受ける。両者はアクトレスガールズ時代、青野が桜井のデビュー戦の相手を務めた関係性を持つが、桜井は19日の会見でハイヒールで青野を踏みつけ、「どん底に突き落としてやる」と宣戦布告した。以降、SNSでの舌戦を繰り広げているが、青野VS桜井は、まさに“女の情念”が爆発する闘いになりそうだ。
ジュリアは海外出張に行っているようなもの
「今までと違った面が二人とも出れば。どちらかというとお互いに内に引き込むタイプだったから。それがこの試合を通じて、バーッて感情が出てきているんで、いい傾向だと思いますよ。それは詩美にしてもそうだけど、みんなね、内向的な人が多いんですよ、MGの選手たちは」
ちなみにこれはMGのリング上の話ではないが、小川代表からすると、9月からWWE(NXT)への挑戦を果たしているジュリアの動向は気になるのか。「この前、連絡がありましたね」と話すと、「ジュリアは順調に行っていると思いますよ。それだけ破格の扱いは受けているし。ただ、NXTは経験しないと上(WWE本戦)に行った時に、下地を作っていないとマズいからね」と証言した。
さらに「ジュリアとはこの間、結構、長い時間喋ったけど、どっかでつながっているんじゃないですか? だってなぜかウチの公式サイトにまだジュリアは(所属選手として)載ってるんだから。だから海外出張に行っているようなもんですよ」と口にするとニヤリと笑った。
そして小川代表は「一年の計は大田にあり、みたいな感じだね」と口にしたが、実は同日には古巣であるスターダムが東京ガーデンシアターでビッグマッチを開催。早くも2025年初の興行戦争になる。
それでも小川代表は、「(スターダムは)気にはしてなくはないですよ。ただ、ウチは“闘い”を見せていけばいいと思っている。話題性以上に。真摯な“闘い”を見せるだけ。話題に惑わされないで。だから“闘い”を見たければ、MGに来てくださいってファンの人に訴えたい」と語る。
そこで素朴な疑問だが、小川代表的にはMGの路線は、結果的にそうなったのか、最初から骨太な“闘い”を主軸にすることになったのか。この問いに対し小川代表は、「最初からジュリアとSareeeがそういう試合になっちゃったから、MGってこういう団体だったかな?って、俺も手探りだったから。でも、今はそうなっちゃったんだよね」と語り、流れで今の“闘い”を主軸にした路線が実施されていることを明かした。
振り返ると、今年4月にあった旗揚げ会見で小川代表は「来年は昭和100年」と語っていた。昭和で生まれ育った67歳の小川代表からすれば、来年はさらに自身の年になる予感はあるのか。
「そうだね。昭和のプロレスは面白いものがいっぱいあったでしょう。年末年始に餅つきをやったり、選手の晴れ着撮影会をやったりとか。そういう昭和的なことを今年もやりたかったんだけど、なかなかできなかったから、来年はもっと昭和的なことをやりたいね」
そう話す小川代表に「また、来年もプロレス界に爆弾を落としてほしい」旨を告げると、「爆弾なんかないよ」とポツリとつぶやいた。この世界でそれなりに長く生きていると、重鎮の言葉はそのまま信用してはいけないことが分かってくる。
そう考えると、おそらく小川代表は来年も、思ってもいない手法で、業界をさらに掻き回すに違いないと見る。