「第24回テレビ朝日新人シナリオ大賞」大賞は戸成なつ氏 賞金500万円の使い道は“歯”
「第24回テレビ朝日新人シナリオ大賞」の受賞発表会見が22日、都内の同局で行われ、大賞は戸成なつ氏の『推さないでくれませんか?』が受賞。優秀賞には田中徳恵氏『令和にお見合いしてみたら』、奈良さわ氏の『レンタルくず』に決まった。会見には脚本家の岡田惠和氏、両沢和幸氏が出席した。
第24回目となる今回は、“ラブストーリー”というテーマ
「第24回テレビ朝日新人シナリオ大賞」の受賞発表会見が22日、都内の同局で行われ、大賞は戸成なつ氏の『推さないでくれませんか?』が受賞。優秀賞には田中徳恵氏『令和にお見合いしてみたら』、奈良さわ氏の『レンタルくず』に決まった。会見には脚本家の岡田惠和氏、両沢和幸氏が出席した。
テレビ朝日では、2000年7月に「テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞」を創設し、フレッシュで有能な脚本家の発掘と育成、および制作現場の活性化と魅力的なコンテンツの展開を目指してきた。第24回目となる今回は、“ラブストーリー”というテーマでテレビドラマ脚本を募集した。
今年3月1日の締め切りまでに計957篇の応募があり、第1次選考は日本脚本家連盟に所属する脚本家によって行われ、176篇が通過。第2次、第3次選考は、テレビ朝日のプロデューサー、ディレクターなどで構成された“社内選考委員会”によって審査が行なわれ、第3次選考で9篇に絞り込まれた。
今月1日、選考委員の井上氏、岡田氏、両沢氏の最終選考会が行なわれ、3篇の受賞作品が決定した。最終選考会で9篇の中から選出されたのは、田中氏の『令和にお見合いしてみたら』、戸成氏の『推さないでくれませんか?』、奈良氏の『レンタルくず』の3作品。大賞には賞金500万円、優秀賞には100万円が贈られる。
大賞に輝いた戸成氏は「このたびはありがとうございます。何度もこの賞には応募しました。何回も落ちて、今こうやってここでお話させていただいてるのが、まだ実感がありません。今回、ラブストーリーというテーマでしたが、そのなかに“夢を追う”と自分の中で考えて入れさせていただきました。諦めないでずっと書き続けてよかった。一生、書き続けたいと思います」と喜びを語った。
書き上げる点で大変だったことは「お笑いのお話ですが、ネタを書く書かない問題がありました。個人的にお笑いが好きなので、お笑いの方への冒涜になるんではないかと思い、ネタ部分のデータを消しました。過去の『M-1』もたくさん見ました。それが少し大変でした」と振り返った。
賞金の使い道は「昨日、差し歯がとれてしまって、良い歯を入れたい」と話し、笑いを誘った。
シナリオライターを目指したきっかけは「私、若干耳が悪いのですが、テレビを見る時にドラマも字幕をつけていつも見ています。なので、小さいから文字として受け入れる部分にはすごくすんなりいきました」と説明した。
そして「映画が好きなんですが、映画に携わるお仕事がしたいと思った時に、女優さんにもなれないし、映画監督にもなれない。そして、大きい映画会社も務められないし、残ったのがシナリオライター」と冗談を交え、「いまは超リスペクト。シナリオライターとして、目指すはアカデミー賞まで行きたいと思います」と意気込んだ。
最終選考会に残った3作品
『令和にお見合いしてみたら』田中徳恵氏
タイパ重視の栗原まどか(26)は、20代のうちにキャリアを身につけ、結婚し出産する計画を立て、最もタイパのいい婚活として見合い結婚を選択する。婚活アプリと違い、見合い相手もも保証され、親の審査も通過した男性ばかり。まどかさえ気に入れば即、結婚が決まる……はずだった。最初の見合い相手の星川健太郎(29)を気に入ったまどかだが、健太郎に断られてしまう。納得いかないまどかだが、気を取り直して次の見合い相手、椎名(27)と会う。条件は満たしている椎名だが、まどかはどこか気乗りしない。つい健太郎に会いに行ってしまったまどかは自分の何がいけなかったのかを尋ねる。健太郎はまどかに非はなく、まどかを幸せにする自信がないだけだという。まどかは、幸せにしてもららうつもりはない、ただ私の幸せを邪魔しない相手と結婚したいのだと健太郎を叱咤する。
椎名との結婚を進めることにしたまどか。両家の顔合わせや、式場予約など結婚に向かって一気に話が進み始める。仕事が忙しいまどかの代わりに、両親が張り切っていた。祖父に結婚の報告に行ったまどかは、祖母が見合い結婚した亡き祖父の話を聞きながら、なぜか健太郎のことを思い出してしまう。プライダルエステに行った帰りに、偶然、健太郎に会ったまどかは、結婚が決まったと伝える。話が弾んだあと、まどかは健太郎から思いがけないことを打ち明けられる。そんな中、まどかは取引先の本部長に、現場レベルで何度も検討を重ねた企画書を覆されて抗議する。しかし、本部長の話を聞いたまどかは、健太郎に自分の想いをぶつけにいくことに……。条件がそろっていようが、周囲が期待しようが、まどかが結婚したいのは椎名ではなく健太郎だと気がついたのだ。まどかは椎名との結婚を断り、健太郎と結婚することにする。もちろんタイパ重視で……。
『推さないでくれませんか?』戸成なつ氏
極限社畜の海老原みち(33)は、今にも死んでしまいそうな精神状態だった。そんなみちの前に、“推し”という神が現れる……。みちが勤める人材派遣会社に、みちの推し、お笑い芸人の星野優也(36)がやって来た。星野は物ぐさな性格のせいで先輩芸人から家を追い出され、半ばホームレス状態で仕事を探していた。みちは星野にもう一度お笑いでひと花咲かせてほしいと仕事探しを止めさせ、みちの家で養うと提案する。ここに“推したい女”と“逃げ出せない男”が生まれたのだった。
死にそうだったみちは、星野の世話(推し活)によって元気を取り戻していった。だが、星野は三食付き、ゲーム、ネットし放題の生活に堕落してネタが書けない。「こんなんじゃダメだ」と、星野はせめてアルバイトをして家にお金を入れようとするが、求人誌もデリバリー用のリュックも捨てられてしまう。みちは星野にお笑い芸人でいてもらわないと推し活ができない、推し活をしないと精神を保っていられないと、星野を縛っていた……。そしてついに、みちは星野の代わりにネタを考えるまでに。すると、そのネタがお笑いライブで大喝采。テレビ番組に誘われるようになった。
それがきっかけで星野はお笑いで自立してしまう。お笑いでの自立に、何も言えないみち。そのとき、推し活ではなく、星野自身に依存していたことに気づく。しかし、案の定、他人が考えたネタでの活躍は長くは続かず、星野はすぐに挫折。ついに芸人引退を決意する。みちはここぞとばかり、星野にまた家に来てほしいと提案するが、「僕はあなたの娯楽じゃない」と拒否される。そのとき、みちは星野の“辞める勇気”を感じた。実は、みちは中卒で学歴詐称して入社したため、怖くて会社を辞められなかったのだ。しかし、星野の姿を見て、自分もやっと辞める勇気を持つことができた。そして、やっと無職になった女と夢を諦めた男は新たに出会い直し、一方的な推し活ではなくお互いを支えあう存在へと進みたいと願うのであった。
『レンタルくず』奈良さわ氏
鏡日菜子は元カレ・西島瞬のことが忘れられず、つい男を西島と比べてしまう癖がある。また、西島と交際していたときに味わった女たちからの嫉妬と嫌悪の視線への優越感が忘れられずにいた。親友の定岡美月はそんな日菜子に“レンタルくず”を勧め、クズと付き合うことでいかに普通の恋愛が尊いかを知るべきだと論す。日菜子がお試しでレンタルくずに申し込むと、バンドマンのユウキが即座に派遣される。自由気ままなユウキに振り回され、レンタルは一日だけでいいと思う日菜子。だが、ユウキがライブで「日菜子のために歌った」と発言したことでファンらの嫉妬の視線を浴び、昔の感覚がよみがえる。気分が高揚した日菜子はユウキのレンタル延長を決める。クズなユウキに手を焼くが、ふとしたときにキュンとさせるユウキを憎めない。美月はそれを「クズの手口だ」と注意するが、日菜子はクズの魅力にハマッていく。
そんなとき、突如西島が現れ、日菜子は運命を感じてしまう。西島に「公私共にパートナーになってほしい」と言われ有頂天。ユウキの顔がちらつくも、やはり自分には西島が最適だと確信する。ところが急遽、金を貸してほしいと西島に頼まれ、現金を渡しに向かうと、ユウキが現れ阻止。美月も西島の裏の顔を暴露する。そして、ユウキをバカにした西島の態度に怒り心頭となった日菜子は、思わず西島を殴ってしまう。爽快な気持ちで帰路につくと突然、アラーム音が鳴り、ユウキのレンタル終了が告げられる。延長を申し出るも、ユウキはその日以来、姿を消してしまう。実は、ユウキ自身も楽曲制作のためにプロデューサー・小坂真治にレンタルくずをやらされていたのだった。ユウキは日菜子を傷つけたことから、小坂の元を離れる。
一年後、日菜子は資格を取り、パリバリ働いていた。ユウキは未だ消息不明だったが、SNSから偶然、ユウキの歌声を知る。日菜子はそれを手がかりにユウキを探し出し、本当の気持ちを伝えるのだった。