観客ゼロ→武道館公演 “たたき上げ”アイドルグループ11年の軌跡「コロナ禍で成長」

アイドルグループ・PassCode(パスコード)が、9月11日に約1年ぶりとなるシングル『WILLSHINE』(テレビ東京系アニメ『SHY』主題歌)をリリースする。同グループは、バンドメンバーをバックに「ラウドロック」と呼ばれるジャンルの楽曲を叫びながら、パフォーマンスをするステージを展開。一昨年には初の日本武道館公演を開催し、ライブ動員数を着実に伸ばした。昨年は念願だった米国ツアーを成功。海外での活動も見えてきた中、ENCOUNTは勢いに乗るメンバー(南菜生、高嶋楓、大上陽奈子、有馬えみり)を取材し、それぞれの素顔に迫った。

PassCodeの高嶋楓、南菜生、有馬えみり、大上陽奈子(左から)【写真:冨田味我】
PassCodeの高嶋楓、南菜生、有馬えみり、大上陽奈子(左から)【写真:冨田味我】

PassCode(南菜生、高嶋楓、大上陽奈子、有馬えみり)インタビュー

 アイドルグループ・PassCode(パスコード)が、9月11日に約1年ぶりとなるシングル『WILLSHINE』(テレビ東京系アニメ『SHY』主題歌)をリリースする。同グループは、バンドメンバーをバックに「ラウドロック」と呼ばれるジャンルの楽曲を叫びながら、パフォーマンスをするステージを展開。一昨年には初の日本武道館公演を開催し、ライブ動員数を着実に伸ばした。昨年は念願だった米国ツアーを成功。海外での活動も見えてきた中、ENCOUNTは勢いに乗るメンバー(南菜生、高嶋楓、大上陽奈子、有馬えみり)を取材し、それぞれの素顔に迫った。(取材・文=福嶋剛)

 PassCodeは2013年に結成。メンバーチェンジを重ねた末、現在の4人編成になった。結成2か月後に加入した南はメンバー歴最長で、グループの精神的な柱になっている。

高嶋「南はすごくクレバーな人で、グループの中でも率先して大変な作業をやってくれます。例えるなら学校で先生に言われる前にキッチリやっておく子かな。でも、ステージではきらびやかで華のあるメンバーです」

大上「PassCodeを大切にする気持ちは全員持っていますけど、南はその中でも誰よりも先頭に立って私たちを引っ張ってくれる存在です。そして、大変な時に助けてくれた人たちやファンの気持ちを絶対に忘れない『義理人情の厚い人』です」

有馬「3年前に初めて会った時、顔がとっても小さくて目が大きくて、『アニメの主人公みたいでめっちゃかわいい!』って思いました(笑)。でも、ライブの時の爆発力はものすごいし、レコーディングの時も存在感があって『アーティストやな』って。憧れの存在です」

 高嶋は南の次に加入した最年長メンバー。だが、南は「私のことを一番分かってくれる双子の妹」と表現した。

南「高嶋とは長いので話をしなくても、『こういう風にした方がいい』という意見が自然と一致するんです。まるで脳内を共有しているみたいです。人を惹きつける力も持っていて、4人の中では、すごく気になるメンバーだと思います」

有馬「私と身長の差がほとんどないのに脚がめっちゃ長い。まるでルイージみたい」

大上「楓ちゃんは、生命体としてめっちゃ面白い子。もともと持っている才能がたくさんあって、芸人さんに例えるとアドリブで笑わせられるタイプ。その場におったらみんなが安心するし、私にとってはお姉さんみたいな人です」

南「みたいって、お姉さんやん(笑)」

大上「あっ、そうやった(笑)」

 天然ぶりを発揮した大上は、メンバーの中で一番の陽キャ。高嶋は「PassCodeの太陽」と呼んだ。

高嶋「純粋さと誠実さを持っている子。しっかりしているところと天然な一面のギャップもかわいいし、あと、根っから明るい子なので、ステージでもバックスステージでもいつも素敵な笑顔を見せてくれます」

南「楓の言った通り、他の3人が真面目なんで陽奈ちゃんが明るくいてくれるのがすごく救われています。『ピュアな歌姫』みたいな感じで加入した時からすごく歌が上手くて、大事なパートがあると『陽奈ちゃんに任せたら大丈夫』みたいな安心感もあります。加入した高校生の頃から変わらないピュアな一面もすごく愛らしくて、私たちお姉さんメンバーの『箱入り娘』なんで、悪い人にだまされないように常に守り続けています」

有馬「例えると『ボルゾイ犬』。結構高貴な雰囲気を持っていて、性格も人懐っこくて賢いみたいな。調べたら明るい性格の犬らしくて、それもピッタリやなって(笑)」

 3人をキャラクターに例えた有馬は、グループの核となるシャウトの担当を前任から引き継ぐ形で、21年に加入。大上はそんな有馬を「PassCodeの攻撃力をアップさせた存在」と絶賛した。

大上「有馬は、パフォーマンス面でPassCodeの代名詞(=シャウト)をすごく磨いてくれました。でも、普段は意外と妹気質みたいなおとなしい一面があって、楽屋では『猫ちゃん』みたいな。ちょっと、構ってあげたいタイプなんです」

高嶋「一見、『クールで強い女』みたいなイメージなんですが、しゃべったらすごく気さくで話しやすい。面白いのは普通の子が知らないようなマメ知識をたくさん持っていていろんなことを教えてくれます」

南「今まで他のグループでやってきた自信とかこだわりもたくさんあったと思うんです。でも、『PassCodeで必要とされているのは何か』を柔軟にくみ取って、その上で有馬らしさを魅せられる。プロですね。普段はシャイなんですけど、1度話すと、すごく人懐っこい感じになるので、『職人気質な気まぐれ猫ちゃん』ですかね(笑)」

 南が引っ張り、高嶋が支え、大上が明るく照らし、有馬が新しい風を吹き込む。それぞれタイプの違う4人のキャラクターが今のPassCodeを形成している。

南「PassCodeはアイドルなのか、アーティストなのか、バンドなのかという質問もよくあるんですが、正直なところこだわりはないんです。『解釈自体はご自由にどうぞ』という感じなんですが、どこでもPassCodeの大切なところはちゃんと魅せるようにやっています。ラウドロックというニッチなジャンルですが、やっていることは変幻自在なので『他にはない面白さのあるグループです』とちゃんと伝えていきたいと思います」

高嶋「お客さんがゼロから始まったグループが、コツコツと時間を掛けてここまでやって来たので1つのライブ、1つのチャンスをみんなすごく大切にしているんです」

移籍第1弾シングル『WILLSHINE』(テレビ東京系アニメ『SHY』主題歌)を9月11日にリリース【写真:冨田味我】
移籍第1弾シングル『WILLSHINE』(テレビ東京系アニメ『SHY』主題歌)を9月11日にリリース【写真:冨田味我】

米ライブツアーで感じた「言葉の壁は関係ない」

 コロナ禍の活動はライブが思うようにできないなど、グループにとっても痛手だった。しかし、南は「それがあったから当たり前を見直せた」と振り返った。

南「今まで『ライブの一体感をお客さんに頼り過ぎていたな』って気がついたんです。コロナ禍で声を張り上げたり、ぐちゃぐちゃになって遊んだりみたいなのができなくなって、自分たちのステージングだけで魅せないといけなくなった時、『歌もダンスも今のままじゃ弱いな』って分かって、パフォーマンスを上げられたんです。そしたら、声を出せるようになった時に有馬のシャウトも入って、今まで以上に盛り上がって。コロナ禍が成長させてくれました」

 昨年は念願だった米国ツアーを行い、ニューヨーク、ダラス、ロサンゼルスで現地のファンを驚かせた。

大上「最近はSNSで海外のファンから『いつか日本に遊びに行きたい』というコメントが増えてきたので、このタイミングで海外に行けて良かったです」

南「初めは『海外仕様にしないと伝わらないかも』と不安でした。でも、やってみると言葉の壁なんか関係なかった。むしろ、海外のファンが日本語で一緒に歌ってくれたんです。きっと、アニメとかラーメンみたいに日本の文化として受け入れてくれたのかなって。海外進出なんて遠い夢でしたけど、世界中にPassCodeを好きでいてくれる人がいることを知って、今はすごくワクワクしています」

 今年はレコード会社を移籍。第1弾のシングル『WILLSHINE』(テレビ東京系アニメ『SHY』主題歌)を9月11日にリリースする。

高嶋「レコード会社を移籍して初めての楽曲で、すごく前向きな歌詞になっています。『これからもファンと一緒にどんな困難にも立ち向かっていくぞ』っていう思いが込められています」

有馬「どんな気分の時にも楽しめる曲です。アニメのオープニングサイズの約90秒まではPassCodeの光の部分を照らしている曲なんですが、そこからは怒涛の展開なんです。ぜひ、確かめてください」

大上「今回の衣装は新しいことに挑戦したいというのもあって、アニメ『SHY』ヒロインの衣装の色合いを取り入れて赤をポイントにしています。ぜひ、チェックしてみてください」

南「PassCodeって、今まで宇宙とか結構壮大なテーマを歌にすることが多かったんです。だけど、今回は自分たちにより身近なテーマで、聴いてくれる人に寄り添えるような楽曲になっています。こういう等身大の曲を通して今までとはちょっと違う私たちの一面を伝えていきたいと思います」

 最後に4人がこれからの抱負を語った。

有馬「『WILLSHINE』を出すまでに前回の曲から1年近く待たせてしまったので、これからもっと新曲を作ってパフォーマンスも磨いて頑張ります!」

大上「『初めてPassCodeを知った』という人をアニメの主題歌を通して増やしたいですし、『もっと、世界にも広めていくぞ』って思いました。レコード会社を移籍して新しい仲間も増えたので、その人たちともっとたくさん楽しい作品を届けていきたいです。楽しみにしてほしいなと思います」

南「私たちの目標は『PassCodeを長く続けること』なんです。この先もいろんなことがあると思いますけど、『自分たちの人生の多くを占めるようなグループでありたい』って思っています。なので、これからも長く続いていけるように頑張っていきますので、ファンのみなさんも応援よろしくおねがいします」

高嶋「私も! もちろん、PassCodeはこれからも長く続いていきますよ。いつでもライブに遊びに来てくださいね」

□PassCode(パスコード) 日本の女性ラウドロックダンスボーカルグループ。メンバーは南菜生、高嶋楓、大上陽奈子、大上陽奈子、有馬えみりの4人。2016年、メジャーデビュー。18年、英国のJPU Recordsから、米国、カナダ、欧州で海外デビュー盤『Ex Libris PassCode』をリリース。19年には、TBS系連続ドラマ『賭ケグルイseason2』及び『映画 賭ケグルイ』のオープニングテーマに『一か八か』が起用された。2022年、初の日本武道館公演を開催。23年には、ダラス、ロサンゼルス、ニューヨークを巡る初の米国ツアーを完走。他にも国内外の大型フェスに出演し、ロックファンからアイドルファンまで幅広い支持を獲得している。

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