AV時代と同じ名前で新たな道へ、異色キャリアの澁谷果歩が語る信念「名前を隠さなくてもいいと証明したい」

昨年2月、自身の無修正アダルト動画のネット流出を受け、制作会社などに損害賠償を求める訴えを起こした元セクシー女優でタレントの澁谷果歩さん。現役時代には、青山学院大卒でTOEIC満点という英語力や、元東京スポーツ記者という肩書も相まって大きな話題を呼んだ。現在は作家や声優業、コスプレイヤーやゲーム実況の配信など、マルチにタレント活動を行う澁谷さんに、元セクシー女優としての信念と葛藤を聞いた。

AV引退後の現在について語った澁谷果歩さん【写真:ENCOUNT編集部】
AV引退後の現在について語った澁谷果歩さん【写真:ENCOUNT編集部】

TOEIC満点という英語力や、元東京スポーツ記者という肩書が話題に

 昨年2月、自身の無修正アダルト動画のネット流出を受け、制作会社などに損害賠償を求める訴えを起こした元セクシー女優でタレントの澁谷果歩さん。現役時代には、青山学院大卒でTOEIC満点という英語力や、元東京スポーツ記者という肩書も相まって大きな話題を呼んだ。現在は作家や声優業、コスプレイヤーやゲーム実況の配信など、マルチにタレント活動を行う澁谷さんに、元セクシー女優としての信念と葛藤を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

 幼いころから性への好奇心はあったものの、小学校から高校まで12年間女子校育ちで、大学卒業まで男性経験がほとんどなかったという澁谷さん。クリエーティブな仕事に就きたいという思いから、一般紙など大手メディアを中心に就職活動を行い、あえて女性記者のイメージの薄かった東スポへの入社を決めた。

「いずれは自分でコラムを書きたいという夢もあって、辞めた後にも『元東スポ記者』という肩書が何かと自分の武器になるのではと思い入社しました。男性中心の社会でそれまでまったく知らなかった野球の担当記者に配属され、女性記者ということで色眼鏡で見られたり、いろいろと苦労もしました」

 実家住まいで、大学生になっても厳しい門限があったという澁谷さんが、好奇心のまま夜遊びに興じるようになったのは記者時代のこと。

「新聞記者って、拘束時間が長くて仕事とプライベートの境が曖昧。実家暮らしの家を空けることが多くなり、ようやく親の目の届かないところで好きな時間を過ごせるようになったことが大きかったですね。当時はプロ野球担当記者として大谷翔平選手や田中将大選手を取材することもある環境。私もいつしか“記録を伸ばす”ことが目標になって、30人近い男性と関係を持ちました」

 その後東スポを退社。特技の語学力を生かして英語教室の講師に転職したが、記者時代と比べて時間に余裕ができたため、面白そうなバイトを探すように。合コンのピンチヒッターやアダルトグッズのモニターなど、ユニークな求人に触れるうちに、アダルト業界の仕事に行きついた。とはいえ、最初からAVの仕事にまったく抵抗がなかったわけではないという。

「最初はAVのエキストラの仕事を紹介されて、面白半分で応募したところ、そこからデビューの話につながっていって。当時は今と違って、業界のリクルートも強引なところがあった。『ここまで来てやっぱりナシはなしだからね』と念押しされたこともありましたが、記者的な好奇心で自分にいくらの値段がつくのか気になったこともあって。自分ももう大人だしと思い、挑戦しました」

引退前には医学部受験のため、撮影現場に参考書を持ち込み猛勉強するも補欠合格

 厳格な両親にはデビュー後ほどなくして出演がばれ、猛反対に遭うことに。「AVに出るなんて頭がおかしい」と精神科に連れていかれるも、そこでのカウンセラーとの出会いが皮肉にも「澁谷果歩」として生きていく自信につながったという。

「女性のカウンセラーさんだったんですが、『お母さんも少しヒステリックね』と母の分の精神安定剤も処方してくれました(笑)。『あなたの話はとても面白い』とも言ってもらえて、それまで青森出身とか清純派とか、うそで固めたプロフィルでやってきたけど、等身大の私でも受け入れてもらえるんじゃないかと」

「3年いればベテラン」と呼ばれる業界で「やりたいことは一通りやった」と18年に引退を表明した。正式引退を前に両親から医学部受験を強く勧められ、約3か月の間、撮影現場に参考書を持ち込み猛勉強に励んだが、結果は補欠合格。もう1年勉強するか、「澁谷果歩」として生きていくかの二択の末、後者を選択した。

 引退後に収入が減って再び脱ぐというケースが多いなか、コスプレイヤーやゲーム実況など、非アダルト分野でマルチに活躍。収入面ではすでにセクシー女優時代に並んだ。今年都内にマンションを購入、両親とは分籍しており、自分のための人生を生きているという。

 元セクシー女優が一般の場に出ることには、賛否両論があるのが実情だ。「澁谷果歩」名義で活動することに制約や葛藤はないのだろうか。

「辞めた以上、アダルトとは違う方向に進みたい。一般イベントだと、検索で出てくるからダメと言われることや、名前を変えたら? と言われることもあります。逆に引退した後もAVの話ばかりを聞かれたり……。でも、名前を変えるのはAV時代から応援してくれているファンに申し訳ないし、やましいことではないのに隠していると思われるのも嫌。

 私は現役でも引退済みであっても、AV女優が子どもの前に出るのがいけないことだとは思いませんが、それは服装に気を遣ったり、AVの話はしないことが前提にあってこそ。たまに全年齢のイベントで、サインしてほしいと昔の出演DVDを持ってくるファンの方もいるんですが、『ここはパブリックな場所だからしまって』と断っている。大事なのはTPOだと思うんです。

 肩書にはメリットもデメリットもありますが、『澁谷果歩』のままアダルト以外の方面でも活躍して、AV女優のアフターキャリアの可能性を示していきたい。名前を隠さなくてもいいんだということを証明していきたいと思います」

 異色の経歴を持つ元セクシー女優は、「澁谷果歩」という唯一無二のキャリアを歩んでいる。

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