若い人と映画の未来を作りたかった―世界で活躍する永瀬正敏が学生映画に出る意味とは
永瀬正敏が京都芸術大学の学生と6年前に撮影した「二人ノ世界」(7月10日公開)は今年の賞レースで忘れてはいけない傑作だ。体が不自由な男女の濃厚なラブストーリーは、コロナ禍でふれあいが難しくなった今こそ、より心に突き刺さる。映画俳優・永瀬がコロナ禍で何をしていて、何を考えたのか?
独占インタビュー後編、映画「二人ノ世界」10日から緊急公開
永瀬正敏が京都芸術大学の学生と6年前に撮影した「二人ノ世界」(7月10日公開)は今年の賞レースで忘れてはいけない傑作だ。体が不自由な男女の濃厚なラブストーリーは、コロナ禍でふれあいが難しくなった今こそ、より心に突き刺さる。映画俳優・永瀬がコロナ禍で何をしていて、何を考えたのか?
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――永瀬さん演じる主人公が前向きに生きようとする中、逆に土居志央梨さん演じるヒロインはある出来事をきっかけに逆に希望を失っていきます。土居さんは、その微妙な心の変化もよく表現されていました。裸を見せる場面もあり、体当たり演技でしたね。
「自分の信じた道に迷いがないというか、そういう意味でも肝が据わっていました。言っても、まだ当時、21歳の学生さんですよ。何度も現場を経験している女優さんではないわけです。そういう意味でも、その時から将来が楽しみな女優さんでした。(二階堂ふみ、吉沢亮主演の)『リバーズ・エッジ』(行定勲監督)でも良かったですよね。ほかにも、『いきもののきろく』(井上淳一監督、原案・主演:永瀬)にも出てくれたミズモトカナコさんが重要な役で出ています。彼女は出演シーンが終わったら、パッと着替えて、腰にポーチをつけて、現場仕様になって、演出部のスタッフをやっていました。いわゆる俳優部も、そういう二足も三足も草鞋を履いている人たちがいっぱいいるわけです。土居さんも、仲間の努力を見てきたので、自分がこの役をまっとうするんだと思っていたんでしょうね」
――永瀬さんは海外の監督、山田洋次監督に代表される巨匠から学生映画の監督作品まで幅広く出演されています。学生たちと一緒に映画を作ることに、どんな思いがありますか?
「彼女彼らは“今”じゃないですか。僕たちが経験してきたものとはまた違う今を生きている。その子たちがどういう表現をしたいのか、どういう思いなのか、と考えるんです。現場に立つと、逆に僕の方が刺激をとても受けるんですよね。学生の卒業制作の映画やゼミで作る映画に、まさかプロの役者が出てくれないだろうと、諦めちゃう人たちもいるかもしれませんが、どんどん声をかけて欲しいですね。それはそれで、僕の未来にも持っていけるので、ありがたい経験なんです」
――永瀬さん自身も、若い頃は不遇の時代もありました。その時に感じた思いということもあるんでしょうか?
「なんとかしてあげたくなっちゃいますね。なんとも言えない心の中の地団駄を踏んでる感じはわかりますから。僕も若い頃、全く仕事がなくて、心の中では1人で殴り合いのようなことをしていた時も、ただ映画のことだけは信じていた。観る方でも映画に救われた経験がいっぱいあるんです。同じように、彼ら彼女たちも、映画のことは信じているわけです。そこを潰したくない。今は我慢だよ、でも、分かってる人がここにいますよ、と。そんな思いはあります」