ファーストサマーウイカ、芸能界の立ち位置は“隙間産業” 「逆張り」でたどり着いた現在地

音楽、バラエティー、ドラマ、ラジオなど幅広く活躍するファーストサマーウイカが、映画『炎上する君』(公開中、ふくだももこ監督)で主演うらじぬの(34)の親友役を演じた。本作は西加奈子の同名短編が原作。女性への抑圧にNOを突きつける親友2人が、世にも奇妙な「炎上する男」を探すシスターフッド・ムービーだ。ウイカが、映画のテーマと自身の処世術を語った。

インタビューに応じたファーストサマーウイカ【写真:山口比佐夫】
インタビューに応じたファーストサマーウイカ【写真:山口比佐夫】

ウイカが語る挫折は1度も無いと断言できるワケ

 音楽、バラエティー、ドラマ、ラジオなど幅広く活躍するファーストサマーウイカが、映画『炎上する君』(公開中、ふくだももこ監督)で主演うらじぬの(34)の親友役を演じた。本作は西加奈子の同名短編が原作。女性への抑圧にNOを突きつける親友2人が、世にも奇妙な「炎上する男」を探すシスターフッド・ムービーだ。ウイカが、映画のテーマと自身の処世術を語った。(取材・文=平辻哲也)

「2012年に出た原作が、ふくだ監督の手によってよりパワーアップして映像化されたと感じました。アップデートされた部分と、何年たってもまだ変わらないモヤモヤする感情を短い時間の中にギュっと凝縮されてすてきな作品になったと思います」とウイカは話す。

 主人公2人のビジュアルはインパクト十分。梨田(うらじ)はおかっぱ頭、浜中(ウイカ)はおさげの黒メガネ。銭湯で政治や世の中のルッキズムに不満をぶちまけ、ストリートでは、「なぜ隠さないといけないのか」と脇毛を披露してのダンスも披露する。

「脇毛はあってもいいし、なくてもいいものですよね。最近は男性でも脱毛する人もいる。生やしていてもいいのに、女の人で脇毛がめっちゃ生えているのが見えたら、一瞬ぎょっとする人がいる。監督の繊細な目の付けどころはさすがだなと。呪いのように刻まれているものは実はたくさんあって、無意識に両親の教え、家庭環境、住んできた国、法律などいろんなものが刷り込まれている。でも、実は自由でいいんだと思います」

 劇中には、世の中への数々の疑問が投げかけられる。ウイカが一番印象的だったのは、たまたま居合わせた韓国料理屋で、隣のテーブルでの会話を聞いてしまうシーン。一人の女性が思い切って同性愛者であることを告白すると、友人たちは何気ない言葉で同調するが、その言葉が返って、女性を傷つける。

「『ひどい友達』と思う人もいるかもしれないけど、私も同じことをやっちゃっていた可能性あったよな、と思ったりして、すごく考えさせられる。要所要所に、『分かる分かる』『あるある』が散りばめられている感じがします」

 特別な絆で結ばれた2人のキャラは監督を始め、スタッフ・キャストで作り上げた。梨田は独自の世界観を持ったカリスマ。浜中は、その梨田に影響を受けた一番のフォロワーといった存在だ。

「私が浜中を自然に演じることができたのは、『(王道)じゃない側』の人間の人生をずっと歩んできたから。この業界では、圧倒的な天才、絶対的な個性の持ち主が多いと思うんですね。でも、私は違うので、逆張りして、天才の横に並ぶ術を身に付けてきた。そこが私自身に近い」

「挫折は1度もない」と口にしたファーストサマーウイカ【写真:山口比佐夫】
「挫折は1度もない」と口にしたファーストサマーウイカ【写真:山口比佐夫】

 09年にデビューし、アイドル、舞台俳優としてキャリアを積み上げてきたが、大ブレークを果たしたのは19年、バラエティー番組の出演がきっかけだった。コテコテ関西弁でまくし立てる毒舌キャラが大ウケした。

「絶世の美女なら、それで勝負できるけれども、そうではない。バレエやピアノをやっていましたという特技もない。そうなったら、策で勝つしかない。女優になりたいという熱い思いを持ち続けていたかと聞かれると、全然ブレブレだった。音楽にシフトしたり、アイドルのオーディションも受けている。人前に出られるなら何でもいい。バラエティーでうまくいったのも、ヤンキーっぽいキャラと言われ、しかもその枠があまり居なかったのでそれに乗っかろうと思ったから。他人からもらったアイデアで始まった隙間産業(笑)。ただ、振り返ってみると、いつの選択も間違ったことはなかったかな」

 キャリアの中で大きな挫折は1度もない、とキッパリ言う。

「挫折って、大きな夢を掲げて、ガチガチに固めるから、ポキッて折れちゃうんだと思うんですよね。私はそんなに大きな夢を掲げていなかったし、全然固めてもなかった。だから、風の吹く方に倒れても、踏まれたとしても、ダメージがない。後は根気かな。向いてる向いてないで諦めようとか考えることは1度も無かった。芸能以外の人生を考えたことが無かったです」

『炎上する君』には、俳優として役をやりきった感があるという。

「映像作品は撮った後に細かい反省をしちゃうんですけど、悔いがほとんどなかったんですよ。役を演じているけれども、自分の中から勝手に出てきた感じがありました。みなさんと作り上げる中、その場で生まれたものもたくさんあって、『もう一度、やれ』と言われてもできない。その場でその場で生まれたことが全て。それ以上でも以下でもない。ある種ドキュメンタリーを見るような気持ちで完成された作品を見ました。そこが今までの違いです」。ウイカにとっても特別な作品になったようだ。

□ファーストサマーウイカ 大阪府出身。2013年にBiSメンバーとしてメジャーデビュー。翌年解散後、19年までBILLIE IDLEのリーダーとしてライブを中心に活動した。現在ではバラエティーやドラマ、ラジオなど多岐にわたり活躍。最近の主な出演作は日本テレビ『ファーストペンギン!』(22)、NHK『超人間要塞ヒロシ戦記』(23)、テレビ朝日『unknown』(23)、映画『私はいったい、何と闘っているのか』(21/監督:李闘士男)など。23年7月期テレビ朝日火曜午後9時『シッコウ!!~犬と私と執行官~』に出演中。24年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』清少納言役での出演が控えている。

スタイリスト:近藤伊代
ヘアメイク:吉田真妃
ブラウス:DISAYA
ドレス:LEMON

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