個性派女優うらじぬの、“令和の樹木希林”に集まる注目 映画初主演で感じた「楽しさ」

俳優のうらじぬの(34)が映画『炎上する君』(8月4日公開、ふくだももこ監督)で初主演を果たした。うらじは個性的なルックスと確かな演技力を武器に舞台で活躍し、最近は安藤サクラ主演の日本テレビ系ドラマ『ブラッシュアップライフ』の演技が注目を集めた個性派バイプレーヤー。初の主演はどんな経験になったのか。

映画初主演について語ったうらじぬの【写真:荒川祐史】
映画初主演について語ったうらじぬの【写真:荒川祐史】

『ブラッシュアップライフ』で注目、映画『炎上する君』で初主演

 俳優のうらじぬの(34)が映画『炎上する君』(8月4日公開、ふくだももこ監督)で初主演を果たした。うらじは個性的なルックスと確かな演技力を武器に舞台で活躍し、最近は安藤サクラ主演の日本テレビ系ドラマ『ブラッシュアップライフ』の演技が注目を集めた個性派バイプレーヤー。初の主演はどんな経験になったのか。(取材・文=平辻哲也)

 小2で演技の面白さに目覚め、演劇一直線。劇団子供鉅人の公演を中心にコミカルからシリアスまで幅広い役をこなす、うらじ。2019年には、濱田岳主演のテレビ東京『フルーツ宅急便』でデリヘル嬢を好演し、『ブラッシュアップライフ』(23年1月期)では安藤サクラ演じる主人公の同級生役を演じ、注目を集めた。名バイプレーヤーぶりには「令和の樹木希林」との声もある。

「演劇は、お客さんとの距離感、抜け感があるのが魅力ですが、テレビドラマは反響がすごく大きいですね。『ブラッシュアップライフ』の時は、小学校の友達からも『見たよ』というLINEが来て、びっくりしました。共演者の皆さんは、第一線で活躍されている方ばかりだったので、その場にいるだけでも面白かった。いい経験になりました」と話す。

 そんなうらじが、映画でいきなり主演に抜てきされた。『炎上する君』は西加奈子の同名短編が原作。女性への抑圧にNOを突きつける梨田(うらじ)&浜中(ファーストサマーウイカ)の親友2人が、世にも奇妙な「炎上する男」を探すシスターフッド・ムービーだ。

「びっくりしましたし、うれしかったです。梨田は私とすごく似ていたので、運命的なものを感じました。高円寺の近くに住んでいて、銭湯好き。おかっぱ頭だったし、話を頂いた時の年齢も同じだったので、役に入り込むことができました。常に自分の前にカメラがあるのは不思議な感覚でしたね。だんだん、カメラが眼の前にあるのが麻痺してくるんです」

 劇中では、2人は世にまかり通る女性への抑圧に怒り、ルッキズムに反旗を翻すように脇毛を見せながらストリートダンスを披露し、体全体で表現する。

「私自身は、大体ぼんやりと生きているんですけど、舞台を見た人たちからはよく『すごい爆発していたね。溜まっているんだね』と言われるので、何か溜まっているものがあるんでしょうね」と笑い。

 親友役のファーストサマーウイカは劇団子供鉅人の公演で共演したことがあり、本当の親友同士のように演じることができた。

「ウイカさんは360度目がついているのかなと思うくらい気を遣える方。距離を感じさせないし、壁を作ったりせず、フレンドリーな雰囲気で私を巻き込んでくれました。おかげで『炎上する君』は映像から飛び出してきそうなぐらいのインパクトとエネルギーがある作品になったと思います」

 うらじの演技の原点は小2の時。社会科の授業で、各々の生徒が歴史を調べて、教室で発表するというものがあった。

「同じクラスの男の子と一緒に、原始人のアウストラロピテクスの生態を発表しようとなったんです。それで、私がアウストラロピテクスとして登場して、男の子が通訳するという設定でやったら、クラスのみんなが笑ってくれ、演じるのは面白いと思ったんです」

 中学では、俳句部に所属したが、顧問の教師が俳句部を廃部し、新たに演劇部を立ち上げたことで、さらに演劇の深みにはまっていく。千葉県内でも、演劇が盛んな女子高を経て、大阪芸術大学では舞台芸術学科演技演出コースに進学。卒業後は、益山貴司が主宰する劇団子供鉅人に参加し、小劇場の人気者になった。

「自分独自の路線で頑張っていきたい」と語ったうらじぬの【写真:荒川祐史】
「自分独自の路線で頑張っていきたい」と語ったうらじぬの【写真:荒川祐史】

映画初主演終えて心境の変化は?「楽しさも大変さも感じる事が出来ました」

 近年はドラマなど映像作品の出演も増えているが、「映像は慣れないですね。舞台は1か月ぐらい稽古があって、本番。共演者のみなさんとコミュニケーションが取れた状態で、作品を作れますが、映像作品はその場ですぐに作らなきゃいけないことが多いので、全然違います」と話す。

 常々「バイプレーヤーになりたい」と話していたが、初主演を終えて、心境の変化はあったのか。

「私はこれまで主人公の人生に一瞬出会った人として作品に参加する事に魅力を感じていましたが、今回の撮影を通して、主役を演じる上での、楽しさも大変さも感じる事が出来ました。演劇が好きというのは変わりませんが、前よりも映像作品に興味が湧いてきましたし、面白みも少しずつわかってきたので、機会をいただけるなら、両方やっていきたい。樹木希林さんのような存在になれたら、それは嬉しいですが、自分独自の路線で頑張っていきたいと思っています。」。今後も幅広いフィールドで活躍を見せてくれそうだ。

□うらじぬの(うらじ・ぬの)1989年6月13日生まれ、千葉県出身。青年団無隣館2期生となり平田オリザ氏の元で学び、その後、劇団子供鉅人に入団。2023年4月にはひとり芝居「押忍、わたしたち」を自身で企画。舞台出演に、劇団子供鉅人作品、維新派、ままごと、財団江本純子、夏の日の本谷有希子、二兎社など。映像の出演作品に、テレビ東京「フルーツ宅配便」(2019)、TBS「病室で念仏を唱えないでください」(2020)、テレビ朝日「あのときキスしておけば」(2021)、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」(2023)、Netflix『全裸監督 シーズン2』(2021)など。

ヘアメイク:加藤遥香
スタイリスト:川上麻瑠梨

衣装クレジット
ベスト3万5200円
ワンピース4万1800円
シャツ3万5200円/全てESLOW(ENKEL 03-6812-9897)
スニーカー3万3000円/PEDALA(アシックスジャパン株式会社 お客様相談室 0120-068-806)

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