包丁を使わない簡単調理、フライパン1つでできるレシピなど、SNSにはアイデア満載の情報があふれている。クリームチーズを混ぜて風味が増したポテトサラダなど、今すぐ作ってみたい！　と思う逸品に混ざって注目されたのが、未来感あふれるディストピア飯。目にした瞬間、時間が止まってしまう……。斬新なプレートについて、制作した蒼狐（@MofBat）さんに聞いた。

「今日の食事は豪勢だな！　成型肉なんて久々だぜ！」と気合が入った一文と共に投稿されたのは1枚の写真。アルミはくがかぶせられた無機質なトレーには、大きなゼリーと、5大栄養素をバランスよく含んだ「カロリーメイト」などの食品が載せられている。

　投稿したのはキャンプ好きの蒼狐さん。SF系アニメ・映画の紹介や解説を行うYouTuber・最低野郎のSF世界さんが配信した「SF飯特集」を見て、「自分でも作ってみたい！」と即実行。出来栄えを見てほしいと、ツイッターに投稿したという。

　終末感ある“飯テロ”写真は、222万3000件も表示され、4万7000件ものいいねを獲得。目にした人からは「完全にディストピア飯で笑った」「エヴァンゲリオンで見たあの謎のペーストとか食べてみたいですw」「下段のゼロカロリーを上段が全消しする素晴らしい献立ですね」などの反応が集まった。

　鳴りやまない返信通知などに、「バグったのかな？」と焦ったそう。「感想で印象に残ったのは、真ん中に配置されてるゼリーについて。『これは何ですか？』っていう質問が非常に多かったです。実際はスーパーやドラッグストアで売ってるマスカット味の寒天ゼリーなんですが、光の加減で赤黒く見えるから正体不明の物体感出ちゃってるんだと思います。そして一番強烈に感じたことは、『みんなディストピア飯好きすぎでは！？』ということでした」と苦笑いした。

　一目見て「うわ、何だこれ。おいしくなさそうだな……」と思わせる雰囲気を大切にしているという蒼狐さん。「人間性を捨てた工業製品的な無機質さとか、見た目で味が想像できないえたいのしれなさとか。でも怖いもの見たさで1度は食べてみたくなるくらいのバランスはほしいと思っています」とこだわりを語ってくれた。

　今回話題になったプレートについては「ディストピア飯としては定番のカロリーメイトと、やたらデカいゼリーは外せないかなと思ってました。合成成形肉って言えばそれっぽく見えそうなコンビーフと、四角い固形物という絵面がマッチしそうなチーズも採用しました。色とりどりのマーブルチョコは着色料で彩りを与えつつ、不足している栄養素や幸福を摂取するための錠剤という設定で、なおかつ無機質感を出すために均等に並べてます。実に退廃的……」と完成品を見て、脱力したという。

　気になる味については「見た目を重視して使ったので、やたらと甘ったるい上に食い合わせも最悪。なので食べながら虚無感に襲われるところまである意味リアルに再現できたんじゃないかと思います」と振り返った。好反応に応えたいと、食器を新調するなど“努力”を重ねたが、思うように数字が伸びない悲しみもあった。その度に残されたディストピア飯と向き合った蒼狐さんは「明日はちゃんとまともな飯食お……」「今なら心の底から言える。あー、本物の米と魚が食いてぇな」など投稿の中で本音を吐露。「しばらくディストピア飯は食べたくないですが、次に気が向いたときは、見た目もそれらしくてちゃんとおいしいやつが作りたいです」と打ち明けてくれた。