トランス女性の女子トイレ利用は「女性の恐怖を軽視」 一石投じた市議に「よくぞ言った」
近年、LGBT(性的マイノリティー)の人々の権利をめぐり、各方面でさまざまな議論が起こっている。中でも大きな議論を呼んでいるのが、トランスジェンダー、とりわけトイレや入浴施設などで女性スペースの利用を望む女性自認の身体男性(=トランス女性)に関する諸問題だ。トランス女性の女性スペース利用をめぐっては一般女性の安全に対する懸念から慎重論も根強いが、そんななか、埼玉県LGBT条例基本計画案について問題提起をした市議の動画がネット上で大きな話題を呼んでいる。埼玉県富士見市議会の加賀ななえ議員に投稿の意図を聞いた。
トランス女性の女性スペース利用は一般女性の安全に対する懸念から慎重論も
近年、LGBT(性的マイノリティー)の人々の権利をめぐり、各方面でさまざまな議論が起こっている。中でも大きな議論を呼んでいるのが、トランスジェンダー、とりわけトイレや入浴施設などで女性スペースの利用を望む女性自認の身体男性(=トランス女性)に関する諸問題だ。トランス女性の女性スペース利用をめぐっては一般女性の安全に対する懸念から慎重論も根強いが、そんななか、埼玉県LGBT条例基本計画案について問題提起をした市議の動画がネット上で大きな話題を呼んでいる。埼玉県富士見市議会の加賀ななえ議員に投稿の意図を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
先月26日に投稿された3分ほどの動画で、加賀市議は「安全を求める女性の声が差別として扱われていた」「『心は女性・体は男性』の方が同じトイレに入ってくることは私も怖いと感じると伝えたらカウンセリングを勧められた」「どれだけ当事者の苦しみを知ったとしても、だからといって女性の恐怖を軽視して良いわけではない」「男性身体を持つ方の女性の性自認に関する要求については明確に女性の生存権との衝突が起きうる」とやや緊張しながらも意を決した表情で主張。
「人権と人権が衝突する場合は、公共の福祉による制約が働くとされていますが、制約を働かせることが行政の役割にも関わらず、現状、LGBT条例制定後の埼玉県の審議会においては、性自認ベースのトイレ利用や災害時における避難所運営のあり方、苦情処理制度など、女性の生存権や恐怖を軽視した形で議論が進められています」として、女性の生存権を考慮した施策を求めた。
加賀市議の投稿は3月1日現在で4200件以上のリツイート、9000件以上のいいねを記録するなど大きな反響を呼んでおり、26日には「#加賀ななえ市議を支持します」がトレンド入り。「みんなが言いづらかったことをよくぞ言ってくれた。勇気ある発言」「女性の安全、女性用スペースを守ることはトランス差別じゃない」「女性への人権侵害に声をあげただけで差別扱いされるのはおかしい」と賛同の声が多く上がっている。
加賀市議はENCOUNTの取材に「昨年6月に制定されたLGBT条例では、その後具体的な運用について審議会で議論し、基本計画にて定めることとしていますが、基本計画案には県営のトイレ・浴室などのあり方や、差別の通報窓口設置、災害時の避難所のあり方などかなり踏み込んだ内容が書かれています」と説明。埼玉県では今回、2月1日から28日までの1か月間、LGBT条例基本計画について県民からパブリックコメントを募集したが、氏名と住所を必要とする意見様式には県民から不安を感じる声も多いという。
「特にトランスジェンダー問題をめぐっては、これまでに海外で懸念を表明した人に対してトランスヘイトであるとして殺害予告を含む脅迫行為が行われたり、日本でも同様の発言に対し謝罪に追い込まれるといった事例が起きてきました。こうした背景から、行政のパブリックコメントであっても提出に際して不安をお感じになられるというのは、当然その心情をお察しするところでした」と加賀市議。
「私自身もこれまで、この問題について顔や名前、事務所の住所などの個人情報が公開されている状態で意見表明することは怖いと思っていましたが、ここで女性の声を届け、抵抗しないと、性的同意の事柄と同じで同意したものと見なされ、なかったことにされる。計画ができてからではいよいよ手遅れになると思い、今回SNSでの呼びかけをするに至りました。埼玉県行政においては、パブリックコメントの意見を重んじていただき、一方の人権だけではなく、女性・子どもの人権も考慮した形で施策を進めていただくことを望んでいます」と女性の声を政治に届けるためにSNSでの動画公開に踏み切ったという。
市井の女性たちの声は政治の現場に届くか――。パブリックコメントの結果を踏まえたLGBT条例基本計画の審議会は4月に予定されている。