元CoCo・宮前真樹が語るアイドル引退から20年 料理研究家に転身 きっかけは「ショートケーキ」

アイドルグループ・CoCoのメンバーとして活躍した宮前真樹。グループ解散後も持ち前の明るさと対応力で“バラドル”としてその才能を発揮し、テレビ番組に引っ張りだこだったが30歳を機に芸能界を引退。現在は料理研究家として自身のスイーツブランドを立ち上げ、週末は大手デパートの店頭に自ら立ち、手作りのロールケーキを販売する。そんな彼女が50歳を機に、20年ぶりとなる一夜限りのステージに立った。今は「元アイドル」という肩書きが愛おしいと語る彼女の半生を追った。

愛犬「エルマー」と宮前真樹 笑顔の2S【写真:荒川祐史】
愛犬「エルマー」と宮前真樹 笑顔の2S【写真:荒川祐史】

「元アイドル」と呼ばれることが嫌だった30代

 アイドルグループ・CoCoのメンバーとして活躍した宮前真樹。グループ解散後も持ち前の明るさと対応力で“バラドル”としてその才能を発揮し、テレビ番組に引っ張りだこだったが30歳を機に芸能界を引退。現在は料理研究家として自身のスイーツブランドを立ち上げ、週末は大手デパートの店頭に自ら立ち、手作りのロールケーキを販売する。そんな彼女が50歳を機に、20年ぶりとなる一夜限りのステージに立った。今は「元アイドル」という肩書きが愛おしいと語る彼女の半生を追った。(取材・文=福嶋剛)

――久しぶりにファンの前で歌ってみていかがでしたか?

「すごく楽しかったです。芸能界を辞める前にお別れライブをやって以来だったので忘れていた振り付けをYouTubeで思い出しながら練習しました(笑)。始まる前は緊張と不安がいっぱいで、でもステージに上がった瞬間にたくさんのファンの人たちが目の前にいてくれたのでとても心強くて。声出しOKのライブだったので当時の感覚がよみがえりました。ライブをやってよかったです」

――当時がよみがえったということですが、CoCoとして活動していた平成元年あたりは“アイドル冬の時代”と呼ばれていたそうですね。

「たしかに歌番組が次々と終わってしまいましたが、アイドル雑誌もいっぱいありましたし、何より本人たちは10代だったのでまったくそういった意識もなく、毎日『アイドルって楽しいな』って(笑)。でも振り返るとスタッフさんや関係者さんに助けてもらい、恵まれていたグループだったと思います」

――CoCoの中では、ほかのアイドルさんやスタッフさんをつなぐ“パイプ役”をされていたそうですね。

「CoCoはリーダーがいなくて、私が1番年上だったのでスタッフやメンバーの伝達係だったり、ゲストで一緒になったアイドルさんと一緒にご飯を食べにいって仲良くなったり。もともと裏方気質なところもあったのかもしれませんね」

――宮前さんが芸能界を目指したきっかけは?

「小さい頃から松田聖子さんや中森明菜さん、小泉今日子さんといったアイドルが大好きで、私もキラキラした衣装を着てみたいと思ってオーディションを受けてみたんです。それでCoCoのメンバーになれたので、夢がかなったという気持ちでした。当時は、将来の夢について聞かれたらいろいろと答えていましたが、私の中ではアイドルがゴールでした」

――グループが解散してもアイドルとして、バラエティー番組にもたくさん出演されました。

「ありがたいことに、上沼恵美子さんや明石家さんまさんに大変お世話になって、さんまさんの『痛快!明石家電視台』(MBS)は、8年間も出演させていただきました。でも私自身は一度も納得するような結果を出せず、出演者のみなさんには申し訳ない気持ちでした」

――8年間出演できたこと自体が結果なのでは?

「それは出演者さんやスタッフさんに恵まれていたからです。アイドルグループの中でポジションを作れても芸能界という大きな枠の中ではまったく通用しないので。自分が求められていることを瞬時に返していかなくてはいけない、という今まで感じたことのないプレッシャーがずっとありました。特にさんまさんの番組は、なんとか結果を残さなくちゃと思って大阪行きの新幹線に乗ると、その瞬間から緊張が走り、収録を終えた新幹線の中では『ああ言えばよかったのに……』といつも肩を落としながら帰っていきました。だから私の中ではバラエティーで一度もうまくいかないまま終わってしまったんです」

――理想と現実を味わった、と?

「たしかに自分に過剰な期待をし過ぎていたかもしれません。でも22歳の頃に芸能界って絶対的に才能のある人かものすごく努力できる人じゃないと生きていけないと分かって私はどちらでもないなって気が付きました」

――それで次の道を進もうと?

「16歳からこの世界でお仕事をしてきたから芸能界しか知らないですし、現場にはさんまさんや上沼さん、(間)寛平さん、(村上)ショージさんといった大好きな人たちがいっぱいいて、辞めたら二度と会えなくなるという寂しさもありました。だからすぐに辞めるという決断はできないけれど、芸能のお仕事をしながら将来本当にやりたい仕事を見つけようと思ったんです。それで24歳になったとき、お料理の仕事がしたいと思ってその準備を始めることにしました」

アイドル時代、現在とすべてを語った宮前真樹【写真:荒川祐史】
アイドル時代、現在とすべてを語った宮前真樹【写真:荒川祐史】

「元アイドル」という呼び名はとても名誉なことだと分かった40代

――なぜお料理の仕事を?

「もともと子どもの頃からの趣味でアイドルをやっていたときも自分でお弁当を作ったり、お友達を呼んでお料理を作ったりしていました。ある日、料理教室に通って先生に教わりながらイチゴのショートケーキを生地からデコレーションまで2時間かけて完成させたんですが、それを食べた瞬間、めちゃくちゃおいしくてお料理ではじめて感動したんです」

――きっかけはショートケーキだった?

「そうなんです(笑)。『私もお料理の楽しさを伝えられる先生になりたい!』って次の目標が決まりました。それからいろんな料理学校のパンフレットを取り寄せてどこに行こうかと考えながらタレント活動を続けていたんです。そして30歳になったときに『今だ!』って突然スイッチが入って芸能界を辞めようと決意しました」

――それからフランスの有名な料理学校「ル・コルドン・ブルー」の日本校に入り、1から料理を学んだそうですね。

「はい。フランスまで行くお金がなくて(笑)。でも、まったく私を知らない人ばかりの未知の世界はとても刺激的でした。学校を卒業したあと、お友達の紹介で高級フレンチレストランの研修を受けたんですが、とっても優しいシェフで皿洗いや食器の整え方を教わり、無謀にも『厨房に入って見させてください』ってお願いしたら下ごしらえの仕方まで見学させてもらったんです。ほかにも参加できる料理サロンやシェフがこっそりやっている料理教室なんかも調べては片っ端から受講して、食材調達から受講生への教え方など、すべてを学びました。食に関する資格も取れるだけ取りました」

――その間の生活は大変だったそうですね。

「限られた貯金で生活していたので大変でした。でもアイドル時代の仲間にも助けてもらい、りえちゃん(三浦理恵子)にはお洋服をもらったり、私から電話をかけると、『かけ直してあげるね』と言って、電話代がかからないように気を使ってくれたんです」

――そんな中で、渋谷と蒲田にご自身のお店「CAFE・RESUTAURANT M.NATURE」をオープンさせました。

「当時、学んだレシピをブログや友達に紹介して『お料理の仕事やってます!』というアピールを欠かさなかったんです。『こんなお仕事はできます?』と聞かれたら、必ず『できます』と答えてなんとかやっていくうちに、青山のカフェのオーナーさんと知り合って『お店を手放すからよかったら引き継いでほしい』と声をかけてくださったんです。それから10年間やらせてもらいましたが、数年前にコロナ禍でお店は閉めてしまいました」

――現在はご自身のケーキブランド「maqbon」(マキュボン)を立ち上げて、西武渋谷店の地下食品フロアや名古屋のタカシマヤゲートタワーモールといった大手デパートで自ら販売されているそうですね。

「お店を閉めて半年後くらいにケーキブランドを作りました。私自身が年齢とともに美容や健康に気を使うようになったこともあって、美味しいだけじゃない体に優しいスイーツを提供したいと思い、グルテンフリーで低糖質のロールケーキを作っています。やっぱり私が作るものには責任を持ちたいので自分の目がちゃんと行き届く範囲内で、ロールケーキもすべて私1人で1000本ぐらい作って販売しています」

――芸能界を辞めてからメディア露出を断り、元アイドルと呼ばれることにも抵抗があったそうですね?

「とくに30代の頃はそうでした。当時はアイドルのセカンドキャリアをばかにされたくないという思いが強かったんです。でも恐る恐るSNSを始めてみるとみなさんすごく今の活動を肯定的に捉えてくださり、むしろ『元アイドル』って呼び名は実はとても名誉なことだと40代をすぎてようやく気が付いたんです」

――50歳を前にして、そんな人たちへの恩返しをするタイミングがきたと?

「はい。これまで関わってくださったすべての人たちに『一緒の時間をすごしてくれてありがとう』って直接感謝を伝えようと思い、ライブを企画しました。せっかくライブをやるならビジネス抜きでファンへのプレゼントとして新曲を入れたCDをスタッフと手作りで制作しました。歌詞を書いたのも30年ぶりです(笑)。でもそうやって肩の力を抜いてバランスよく考えられるようになったのは年をとった証拠なのかもしれませんね(笑)」

――歌ってみていかがでしたか?

「歌の実力はファンの人がよく分かっていますから(笑)。でも歌っていいなって、あらためてそう思いました」

――これまでを振り返ってみて宮前さんが大切にされてきたことは?

「やっぱり“自分の心の声を信じる”ことです。今でも失敗することはたくさんありますが、『今だ!』と思ったら、やらないで後悔するよりやってみようって、今でもそう思っています。そしてやっぱり人と人のつながりはこれからも大切にしていきたいです」

□宮前真樹(みやまえ・まき)1989年アイドルグループCoCoの一員としてデビュー。「食」を本格的に学ぶため30歳で芸能界を引退。フランスの名門料理学校ル・コルドンブルーで学び、2010年に青山と蒲田に「エムナチュール」をオープン。現在はロールケーキブランド「maq bon」を立ち上げ、グルテンフリー・低糖質ロールケーキを販売。国際食学協会親善大使・名誉理事を務める傍ら、自らの経験をもとに「体に優しい食事」を提案しながら「犬の食事」にも力を入れている。

宮前真樹
インスタグラム:https://instagram.com/miyamaemaki
ロールケーキブランド「maq bon」:https://maqbon.jp/

インストアライブ情報
宮前真樹 30年ぶりのCD「Waltz」インストアライブを開催
2月18日 名古屋 ヴィレッジヴァンガードパルコ 午後2時~
2月19日 大阪 TSUTAYA戎橋店 午後1時~

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