貴重な車を持つオーナーとファンの交流の場となるカーイベント。シーズンの秋や春には毎週のように各地で開催され、にぎわいを見せている。各オーナーは愛車の近くにいすを置くなどして見守っているが、ちょっと目を離した隙に、とんでもない被害を受けることも…。中には盗難前提の動きをする悪質ファンもおり、警戒を募らせている。

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　日本でめったにお目にかかれないイタリア車に乗る男性がため息を漏らした。

「1台ポツンと置いていたときに、やられたときがあった。ちょうど友達なんかとしゃべってて、目を離していた。戻ったら車の黒いところが手あかでみんなベタベタ。その頃はまだコロナ前だったから、外国人のお客さんもいっぱいいたものだから、触っちゃうんだよね。特にアジア系は下手したらドア開けて中に入っていきますよ。本当に。なんだこいつはって」

　被害はこれだけではない。意図的でなくても、細かい傷を負わされることは珍しいことではないという。

「特にフェンダーミラー。荷物や体が当たって曲がってしまうことがある。あとはお客さんのカメラだね。首からぶら下げていると怖い。前にかがむとき、カメラも揺れてぶつかるんですよ」

　愛車を多くの人に見てもらいたい気持ちはある。頼まれれば、車内にも案内するようにしている。しかし、カバンやカメラがどのように動くかは想像できないという。イベントに向かう際に、高速道路でサービスエリア（SA）に立ち寄ると、人だかりができる。「なんつぅかパーキングなんかに止めとくと、もうみんな寄って来て写真撮っていいですかとか言うから、どうぞって言うんだけど、ずっと出られないんですよね」。礼儀正しく、好感の持てるファンがほとんどだが、次から次へと撮影者が訪れる中で、どこに死角ができるか分からないという。

　さらに悪質なファンもいる。生産台数337台と言われ、オークションでは1億円を超える価格で落札されることもあるトヨタ2000GTのあるオーナーは、「いろいろ変にのぞき込んでるやつがいる」と嘆いた。

「『エンジンを見せてください』と言われてボンネットを開けると、車体番号とか、位置ばっかり確認している。海外に出すとき、書類を先に書けるから。書類を書いておいて、日付だけ入れればいいようにして、あと車を持ってきちゃえばそのまま直行で波止場まで行って税関通して書類ポンと出していける。それで船に乗っちゃったらもう終わり。そういうやつがいるんだよ。怖いよ。だからなるべく開けないようにしている。一応、車体番号だなんだというのは分からないようにシールを貼ったりしていますね」

　日本の産業遺産と言うべき、愛好家の多い車だ。少しでも長くの間、ファンの前に車を披露していたいが、気は抜けないという。

「別の車なんだけど、売ってくれと言ってきて、車検証を写メしていいかとか、外国人が聞いてくるわけよ。（情報が）全部書いてあるじゃん。それが一番やばいね。車検証を渡したのと同じだから。もう全て書類に書き込めるようになっている。結局、盗むということ。そういう人がいるの。車検証は中にあるから、車についてないといけない。怖いよ」

　車検証の撮影とは身勝手極まりない。もはや自動車ファンではなく、転売ヤーや窃盗犯の一味なのかもしれない。トイレなどで離れた隙に、車体の裏にGPSを取りつけられる可能性も危惧しており、「たまに下をのぞくよね」と話した。

　別の国産の希少車に乗るオーナーは、「楽しいのはいいんですが、ドアを開けて中に乗り込んじゃうやつがいるんですよ。これは私、非常に嫌なんですよね。人さまの家に土足で上がるようなもんでしょう」と、やはり無断乗車に不快感を示す。一方で、「逆にこないだ若い奥さまが子たちに、『触らない。ダメよ』って注意していました。そういう姿を見ちゃうと、こっちはうれしくなっちゃってね。子どもさんが乗りたいと言うから、乗せてあげるよって乗せたんですよ。そしたら喜んでいましたね」。

　ちょっとしたことでも車への気配りがあれば、オーナーにとってはうれしいもの。最低限のマナーは守って、イベントを楽しみたい。