自慢の愛車は「旋回能力が抜群、切れ味最高」 還暦過ぎても峠に 忘れられない青春の走り
21歳の頃の青春時代を思い出して、あの1台をもう一度――。63歳の男性オーナーの自慢の愛車は、1989年式「トヨタ MR2 AW11」だ。還暦を迎えても、「忘れられない」という“走り”を存分に味わっている。
63歳オーナー スピードを出せなくても今でも峠道ドライブ 走行距離数は約17万1000キロ
21歳の頃の青春時代を思い出して、あの1台をもう一度――。63歳の男性オーナーの自慢の愛車は、1989年式「トヨタ MR2 AW11」だ。還暦を迎えても、「忘れられない」という“走り”を存分に味わっている。
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“伝説のトヨタ車”MR2。21歳ぐらいの時に別の1台を新車で買い、2年ほど乗っていた。「若い時に1度乗っていたんですよ。ただ、周りはセダン車ばかりで、友達と一緒に遊ぶにはやっぱり4人乗りが必要ですよね。MR2は2人乗りだから、当時はちょっと合わなくて、結局すぐ売っちゃったんですよ」。
それでも、年を重ねて、あの頃の感覚がじわじわとよみがえってくるようになった。
「昔乗っていて楽しかったなあ。若い頃に戻って、また乗りたいなあ。そう思うようになったんです」
1年越しで見つけ、5年前に中古で手に入れた。前の所有者の仕様をほとんど残しているが、リアのスタビライザーやブレーキバランサーは交換。エンジンはオーバーホールを施した。「古い車なので、走っていていつ壊れるか分からない。それを防ぐために、まず壊れないことを重視して、それでいてパンチのあるエンジンにしたい、これがテーマでした」。こだわりを搭載している。
スピードを出して走ることはないが、今でも山道・峠道のドライブを楽しんでいる。「ハンドルを少し切るだけでも、ぐーっと回る。旋回能力が抜群で、切れ味最高。そんなにスピードを出さないのですが、気分的にスカッとするんですよ」と笑顔を見せる。
それに、「MR2は『味のある』という表現がぴったりで、エンジンもデザインもかっこいい。フロントフェースがよくて、自分にとっては『外車が来る』というようなイメージなんですよ」。
渋い国産スポーツカーだけに、「今の人は知らない人もいるみたいで、『なんて言う名前ですか?』とたまに聞かれることがあります。それに、『まだ乗っているんですか』と驚かれることもあります」。人々の関心を集めることも楽しみの1つだ。
電気自動車(EV)の普及が進む一方で、ガソリン車は13年を超えると自動車税が高くなる。旧車・ガソリン車は“肩身が狭くなる”という物悲しい声を聞くようにもなってきた。
走行距離数は約17万1000キロ。男性オーナーが乗ってからは約1万キロを走ってきた。愛車が歩んできた歴史を実感している。
「時代の流れなので仕方ないというのはあるんですが、それでガソリン車がなくなっちゃうのは寂しいですよね。エンジンの音、ふかした時の音、それがゼロになっちゃう。やっぱり音がしないと乗っている感じがしないんですよ」。ガソリン車ならではのよさを強調する。
「あとは、カツカツ、コツコツ、というギアの入り心地とでも言いましょうか、感覚的に伝わってくるもの。これもEV車にはないですよね。本当のマニュアルミッションは違うんですよ。自分で操作して自分の感覚で走れる、そこに楽しさがありますよね」。熱い思いを重ねる。
それに、自動車文化の変化を痛感しているという。「昔は『このクルマはかっこいいな』と思って買っていた、そう思うんです。でも今の子たちは、そもそも免許を取らない人もいるし、生活の足は電車・バスでいいやという感覚なのではないでしょうか。車をただの移動手段と考えている若い人が多いですよね。趣味にいかない人が多いのかなあ」。寂しげに語る。
続けて、「今のクルマはどこのメーカーを見ても、みんな内容は一緒なんですよね。スポーツタイプであっても、オートマに近いマニュアルみたいな感じになっていて。誰でも乗れるという利点はあると思うのですが…」。
技術の進歩、安全面の向上はもちろん素晴らしいことだ。それでも、「自動運転で安全に乗りやすくなるのはいいことですが、最後にはタクシーに乗っているのと同じになるかもしれませんね」と複雑な思いを明かす。
旧車に乗ることで、改めてかみしめる価値観がある。
「我々はスーパーカーの時代に育ってきて、今でもランボルギーニに乗りたいと思っていますよ。買えませんが。でも、考えが変わってきて、もし自分がお金を持っていればランボルギーニだって買うことができます。でも、このMR2はもう買えないかもしれない。買いたくてもモノがない。そうすると、こういった古いクルマに乗っているのは貴重なことなのかなと思うようになりました。『1億円出します』とお願いしても、『売らないよ』と言われれば手に入れられない。だから、少しでも長く乗っていこうかな。そう考えているんです」
「結局は、憧れだけで乗っているんですけどね。体が動く以上は乗っていたいですね」。浪漫あふれるひと言が、かっこよく響いた。