俳優の船越英一郎が主演するNHK・BSプレミアムの時代劇「赤ひげ4」（4日スタート、金曜午後8時）の取材会に、今シリーズから出演する戸田菜穂と出席し、作品にかける思いや見どころを語った。江戸時代の小石川養生所を舞台に、赤ひげと呼ばれる医師の所長・新出去定（にいで・きょじょう＝船越）を中心に、若き医師の保本登、津川玄三らが貧しい人々の治療に奮闘する姿を人情たっぷりに描く。養生所には、毎回、つらい事情や秘密を抱えた貧しい訳ありの患者たちがやってくるが、戸田はそんな患者の1人、おたねを演じる。

　船越は「赤ひげ先生を演じるにふさわしい俳優、生き方、それを教師だと自分の中で思えるような普段の暮らしを重ねていきたいなと思うぐらい、僕の生活の中心に赤ひげがいるような感じがしています」。また、シリーズ4を演じる機会を得たことに「狂喜乱舞、羽化登仙」と心境を語った。

　船越はこの作品を日ごろからライフワークにしたいと話している。その理由やきっかけも説明。船越は「元々、山本周五郎作品の愛読者でした」と語ると、原作「赤ひげ診療譚」は山本周五郎作品の中でも異色の、独特の世界があると受け止めたと紹介。「映画やNHKでやっていたドラマに本当にはまりました。若かりし頃は保本登をやりたいと。これが俳優になったばかりの頃の夢の一つでした」と、熱烈なファンだったと明かした。出演のオファーには逡巡（しゅんじゅん）や怖さもあったとしたが、「自分の中に『赤ひげ』への並々ならぬ思い入れがありました」と説明した。

　一方、戸田は、熱い思いを持って赤ひげを演じる船越の現場の様子を紹介。「船越さんご自身が赤ひげ先生みたいな存在。現場では若い役者さんたちを引っ張って、頼れる温かい存在。衣装を着て扮（ふん）装したら赤ひげ先生がそこにいるという感じです。着替えて帰るときは20歳ぐらい若くなったみたいで面白かったです」と笑顔で語った。

　シリーズ3で赤ひげの過去が少し描かれていたが、船越はシリーズ4の見どころを紹介。「今回の作品で、ほとんどの赤ひげの過去が明らかになっていきます。それが物語を大きく今までと違う、うねりに持っていく。そういうシリーズ4になっています。つまびらかになる過去に大きな役割をもたらすのがおたねさん（戸田）。何かある。おたねさんと赤ひげには過去があっただろうと、最初から登場したときから完全ににおいます」。また、いろんな想像ができるとした上で「赤ひげの身にも何か起きるぞというサスペンスも味わっていただける」とPRした。

　キーパーソンとなるおたねを演じる戸田は「撮影は終わったのですが、まだ余韻がぬけないというか、そのぐらい私の中ではインパクトが強い役で、心もいっぱい揺さぶられました」。また「まだ見たことのないような景色を見させていただきました」とした。

　また、船越は、これまでのシリーズとの違いを問われると「おたねさんの正体が明らかになったら赤ひげの過去を含め、今、この物語が抱える皆さんの中のある種の疑問はほとんど解消されていくのではないでしょうか」と明かした。

　船越は、また、大岡越前が新しい医学校をつくりたいと提案し、赤ひげがそこに行かされるかもしれないという展開が描かれることも紹介。「ついに赤ひげが養生所を卒業するのか」と、もう一つの見どころとして紹介すると「最終回なんて……。僕、自分の作品で自分が出演する場面で泣いたことなんてないんです。40年も俳優をやっていても。今回、不覚にも、こんなことが俳優人生の中で起きるんだ、というような『赤ひげ4』でございます」と語った。

　戸田は、患者を一喝し、「あなたはどう思うんだ、どうしたいんだ」と聞く赤ひげ先生を「すごく温かい」と語ると、「今、怒ってくれる人はあまり世の中にいません。『自分の人生は自分で決めろ、自分で責任を持て』と、赤ひげ先生の言葉は毎回心に響き、涙してしまいます。こんな存在が近くにいたらいいなと思います」とした。