「カムカムエヴリバディ」で好演 10歳少年が絵本作家デビュー「世界をよりよくするため」

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に出演した少年が、絵本作家デビューした。同作の3人目のヒロインひなたの子ども時代(新津ちせ)の初恋相手、ビリーを演じた幸本澄樹(こうもと・じょうじ=10)だ。初めて手掛けた絵本は、10月6日出版の「地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること」(KADOKAWA刊)で、本名のジョージYハリソンとしての作品になった。出版前にENCOUNTのインタビューに応じたハリソンは6歳から環境問題に関心を持ち、同書出版の経緯、ドラマ出演で得たこと、将来の夢などを語った。

絵本作家としてのデビューを果たした幸本澄樹【写真:荒川祐史】
絵本作家としてのデビューを果たした幸本澄樹【写真:荒川祐史】

幸本澄樹 本名・ジョージYハリソンとして初作品

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に出演した少年が、絵本作家デビューした。同作の3人目のヒロインひなたの子ども時代(新津ちせ)の初恋相手、ビリーを演じた幸本澄樹(こうもと・じょうじ=10)だ。初めて手掛けた絵本は、10月6日出版の「地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること」(KADOKAWA刊)で、本名のジョージYハリソンとしての作品になった。出版前にENCOUNTのインタビューに応じたハリソンは6歳から環境問題に関心を持ち、同書出版の経緯、ドラマ出演で得たこと、将来の夢などを語った。(取材・文=柳田通斉)

 10月6日出版「地球をまもるってどんなこと? 小学生のわたしたちにできること」

「カムカムエヴリバディ」のビリー君を演じた少年が、真剣に環境問題を考え、絵本を作った。ハリソンが本を出す目的は純粋に「世界をよりよくするため」で、同書では自身が実行中の12の具体例を紹介している。

「『ひとりの力』をしんじる」「自てん車や歩きで出かける」「ベジタリアンになる日を作る」「自分が食べられるぶんだけにする」「近くで作られたもの食べる」などで、「人間がべんりなくらしをもとめすぎたけっか、海にゴミがふえ、森がへり、空気がますますよごれました。地球の気候がかわってしまい、台風やこうずいなどによる自然さいがいもふえています。このままだと、わたしたちが大人になったとき、あんしんして地球にくらすことができなくなってしまうかもしれません。ものがたりの話ではなく、本当のことです」(本文より一部抜粋)と記している。

 絵はイラストレーター・たかしまてつを氏が担当。日本科学未来館が監修をし、ハリソンは同書で環境保全に向けた人工知能(AI)活用法を東大の松尾豊教授(AI専門工学者)に聞くなどしている。文字通り、10歳にしては類まれな意識の高さ、知力、行動力がうかがえる。

 ハリソンが地球のことを考えるようになったのは、6歳のときだった。

「2018年10月のことです。家族と行ったローマのFAO(国連食糧農業機関)に置いてあった本を読み、自分たちの行動が想像以上に地球に大きな影響を与え、大変なことになっていることを知りました。なので、僕は待つだけでなく、(環境保全活動を)手伝いたくなりました。そして、みんなに(現実を)知らせたいと思いました」

地球環境に問題意識を持ったのは6歳の時だったと語る【写真:荒川祐史】
地球環境に問題意識を持ったのは6歳の時だったと語る【写真:荒川祐史】

6歳で芽生えた環境問題の意識「地球が大変なことに」

 ハリソンの熱い思いは、人を介してKADOKAWAの児童書編集部に伝わり、約1年前から同書の出版準備が始まった。そして、ハリソンは自らが開設したウェブメディア「George’s room」で、フードロスや気候変動についての考えを発信し続け、自宅周辺のごみ拾いなどをしていると、FAOが主催するワールド・フード・フォーラム(WFF)から「環境問題に取り組む次世代」と紹介されて話題に。そんな最中、ハリソンが別の才能を発揮した。

「お母さんが知っている芸能事務所の社長さんから、『カムカムエヴリバディで、外国出身の子どもを対象にしたオーディションがあるから出ませんか』と誘われて、面白そうだったので、そのタイミングで事務所に入りました」

 芸名は幸本澄樹。演技経験は皆無だったが、事務所で演技レッスンを受け、オーディションに臨んだ。当日は、指定された「犬を探すシーン」を演じたという。

「頑張ってやってみました。面接では趣味を聞かれ、『歌です』と答えて、(英ロックバンド)グラス・アニマルズの「Heat wabes」を歌いました。緊張はしませんでした。そして、しばらくして合格の連絡がありました。『僕は受かっていない』と思っていたので、本当にビックリしました」

 デビュー作が朝ドラ。しかも、注目度の高い役だったが、演じることは新鮮であり、画面に映っている自分を見ることには不思議な感覚はあったようだ。

「撮影は楽しかったです。テレビで自分の姿を見るのは不思議でしたし、『みんなも楽しんでくれたかな。良かったと思ったかな』という不安な思いもありました。友達の中には『すごいね』と言ってくれる人もいたけど、だいたいの人はそっとしてくれました」

初めての出演作が朝ドラ「また、新しい役にチャレンジ」

 かわいらしくも自然体の演技は、視聴者に好評で、大きなインパクトを残した。ドラマ、映画関係者も注目し、本人も「また、新しい役にチャレンジしたいです」と話している。

もっとも、環境保全活動への思いは強くなる一方で、「カムカムエヴリバディ」の出演で、自分の知名度が高まったこともプラスにとらえている。

「(出演をきかっけに)多くの人に僕のしていることが伝わるのだったら、それは(結果的に)良かったなと思います」

 将来、就きたい職業を聞くと、「弁護士になるか、エコフレンドリーな家を作る建築家になりたいです」と返した。英国人の父親とは死別しているが、母親に甘えることなく、自主的に勉強をし、考え、休日には囲碁教室に通うなどしているという。

「囲碁は陣地に入っていくことが楽しいです。何回も負けていますけど、ゲームだから、『悔しい』というのはないです」

 穏やかな語り口は気持ちの優しさを感じさせるが、「ディベートや発表」が大好きという一面もある。すでに国内では、同じ小学生の前で「環境保全」をテーマにした講演も経験。そして、10月には、FAOのローマ本部で行われる同書を題材にしたWFFのイベントに登壇予定でいる。環境保全活動を続けながら、俳優として成長も期待される10歳。その可能性は無限大だ。

□ジョージ・Y・ハリソン 2012年(平24)5月26日、シンガポール生まれ。父は英国人、母は日本人。ロンドンと東京で育ち、6歳のときに国連食糧農業機関(FAO)ローマ本部を訪問したのをきっかけに環境問題に関心を持つ。「ひとりの力を合わせれば世界をよりよくできる」と信じ、環境保全活動に励んでいる。21年秋には、FAO主催のWFF「Masterclasses for a Better Food Future」で、次世代の主人公として紹介。同年、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のオーディションに合格し、今年4月8日まで放送された同作に出演。特技はマジック、動物の鳴き声のものまね、趣味は歌、囲碁、将棋、乗馬。好物は寿司、芽キャベツ、フルーツ。血液型O。

次のページへ (2/2) 【写真】幸本澄樹の全身ショット
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