格闘技のメガイベント「THE MATCH 2022」は6月19日、東京ドームで開催される。キックボクシングの“神童”那須川天心と、“ナチュラル・ボーン・クラッシャー”武尊の「世紀の一戦」をメインに、RISE、K-1の両団体が誇るトップファイターがズラリと勢ぞろいする。「ENCOUNT」では出場選手へのインタビューを実施。カウントダウン連載で紹介する。最終回はK-1の安保瑠輝也（CLUB es/team ALL-WIN）。RISEスーパーライト級王者の山田洸誓（正道会館KCIEL）と対戦する。

　人と同じことをするのが好きじゃない――。ただの目立ちたがりではない“令和”の格闘家らしい柔軟な思考が安保にはあった。

　カード発表会見では納豆を手にし、登場した。「まぁ、山田選手を覚えてもらうためですよね。この試合は、そこからの勝負だと思ったんです。チャンピオンで実力があるのはもちろん分かっているんですけれど、調べたときに名前を聞いたことがあるくらい。マジで知らなかった」と爽やかに笑う。

“世紀の一戦”の注目度についても冷静に考えていた。「僕はまだ世間に知られている部類に入る選手だと思う。格闘技のコアなファンは知っていても、『THE MATCH』って一般の方も東京ドームで観る試合だと思うんですよ。山田選手をみんなに認知してもらえたらなって」と説明した。

　対戦する相手の知名度の重要性にも言及した。「今の時代は特に大事。強いだけで試合を観たいと思われる時代では今はないと思う」と本音を漏らした。

　自身のYouTubeチャンネルの最高再生回数は800万回超え。YouTuberとしての一面もある安保は、格闘技のおもしろさをコアなファン以外にも広めようとしていた。4月に行われた「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ～K’FESTA.5～」では、試合前にカラオケボックスに行くなど世間を驚かせていた。

「あれは、本当にリラックス。あの日の会場の控室がすごく狭くて、あそこで6時間以上待機するのは、試合に悪影響と思いました。歌って、試合でKOしたらおもしろくなるんじゃないかなと。プロレスと比べるわけじゃないですけれど、格闘技は打ち合わせなし。カラオケに行って、『もし、負けたらどうしよう』って話。それまでの過程で何をしようが勝負にうそはないんでね。男と男の勝負、楽しいと思います」

　東京ドームへの思いも明かした。「やっぱり感慨深いですよね。それこそ、横に後楽園ホールがあるじゃないですか。あそこで下積みじゃないですけれど、そういうところで試合重ねていって、横に東京ドーム。『こんなところで格闘技の試合したいな』って思っていました。それが武尊選手と天心選手ありきの話ですけれど、そういった会場で僕が試合をできるのは、やっぱりうれしい気持ち」とうなずいた。

「実力があるのはもちろん分かっている」と山田を評価する。対戦相手の印象も改めて口にした。

「空手家。空手って、結構無差別級とかでもやるんですよね。だから今回、僕の体重に合わせてもらうようなかたちになりますけれど、そこは相手は気にしていないと思いますね。そういう意味で蹴りもパンチもできて、前にくる選手の圧力にも強いかなと思います」

　山田は4月の試合でプロ初ダウンという強者だ。それでも安保は「穴はありますよ。攻撃力は強いですけれど、後半にあげていく選手ではないのかなと思いますね。だから、全然倒せると思っていますね」と豪語する。

　リングではどう盛り上げるのか。「倒せるイメージはもちろんあります。ただ、強引に倒しに行くんじゃなくて、流れの中でやってきたことを出すことがKOにつながる。会見とか試合までの過程で盛り上げることはしますけれど、試合では無理に盛り上げに行こうとするんじゃなくて、自ずとやってきたことを出せば盛り上がるので。それを意識してやります」と自信をのぞかせた。

　K-1とRISEの対抗戦という見方もあるが、安保にとっては関係なさそうだ。「僕はそこに関してそんなに思い入れのある選手じゃないんですよ。そこは武尊選手、大将がやって。僕、人と同じことをするのが好きじゃないので、そこに対する思いはそんなにない。“安保瑠輝也”を見せることです」と白い歯を見せた。

○…ENCOUNTではインタビュー実施選手に天心―武尊を予想してもらった。

　安保瑠輝也の予想「生物的には武尊が優位」

「僕も結構大衆と同じ意見で、判定まで天心選手がうまくゲームメイクをする可能性はあるんですよね。例えば『THE MATCH』のリングの大きさを僕は知らないんですけれど、K-1のリングって小さいんですよ。今回のリング、そんなK-1サイズのリングではないと思うんです。後ろに下がったり、距離が図りやすくなる中で、3分3Rとなるとそれは天心選手（のファイトスタイル）には有利に働くと思う。

　武尊選手がそれでも捕まえるっていう予想もあるんですが、そこで捕まえきれるのか。天心選手が疲労して、そろそろしんどくなったかなってところでゴングが鳴るかもしれない。これだけは言えるんですが、“生物的”には武尊選手の方が優位にいると思います。スポーツじゃ分からない。武尊選手が最初に言った『無制限延長ラウンドで』ってなったらそれは武尊選手に有利に働くと思う」

□安保瑠輝也（あんぽ・るきや）1995年10月29日、兵庫県姫路市出身。2012年デビュー。19年に第4代K-1 WORLD GPスーパーライト級王座を獲得。24勝（14KO）6敗。180センチ、67.5キロ。