【週末は女子プロレス#43】総試合数は900に到達、すぐやめるつもりだった松本都が歩んだ13年間

コミカルとカオスが融合する独自な世界観で唯一無二の存在と言える女子レスラーが、松本都である。都は2008年8月にアイスリボンでデビュー。当初はいまにでもやめそうな弱さだったが、「女子プロレス界のエース」を自称し、根拠なき自信が妙な人気を博して、いつの間にかサバイバル。自身のプロモーション「崖のふちプロレス」「崖のふち女子プロレス」も主宰し、本人も知らない間に通算試合数は900に到達した。来年はデビュー15周年で、今月は「みやここ誕生月間」なんだそう(4月11日が誕生日)。そこで今回は、都のレスラー生活を振り返ってみることにする。

松本都は、独自な世界観で唯一無二の女子レスラーだ【写真:新井宏】
松本都は、独自な世界観で唯一無二の女子レスラーだ【写真:新井宏】

きっかけはオーディション「プロレスには一切触れられていなかった」

 コミカルとカオスが融合する独自な世界観で唯一無二の存在と言える女子レスラーが、松本都である。都は2008年8月にアイスリボンでデビュー。当初はいまにでもやめそうな弱さだったが、「女子プロレス界のエース」を自称し、根拠なき自信が妙な人気を博して、いつの間にかサバイバル。自身のプロモーション「崖のふちプロレス」「崖のふち女子プロレス」も主宰し、本人も知らない間に通算試合数は900に到達した。来年はデビュー15周年で、今月は「みやここ誕生月間」なんだそう(4月11日が誕生日)。そこで今回は、都のレスラー生活を振り返ってみることにする。

 そもそもきっかけは、あるひとつのオーディションだった。「映画、CD、バラエティー番組に出られるというものだったんですよ。プロレスには一切触れられていませんでした。当時はプロレスとは縁遠い文化系だったので、見たこともないし、まったく知らなかったです。プロレスだと知っていたら絶対!行かなかったですね」。

 説明会の途中で、このオーディションが映画出演者を募集するものだということがわかってきた。どうやらその映画は、女子プロレスを題材にするようだ。しばらくすると、出演するにはプロレスラーデビューが必要との説明があった。確かにCDデビューもあり、作品じたいがバラエティー番組の企画から生まれたものでもあった。が、出演するには実際にプロレスラーとしてリングで闘わなくてはならない。オーディション会場が騒然となった。

「怒って帰っちゃった人もいましたね。100人くらいいたうちの半分くらい練習に来たのかな。でも、日に日に人数が減っていって、最終的には8人になりました」

 結果的に8人がレスラーとしてリングに上がり、映画「スリーカウント」も完成、劇場公開された。主題歌「いつかきっと」もリリースされた。が、映画出演のミッションをこなした後、プロレスをやめる選手が続出。残ったのは主演の志田光、藤本つかさ、そして都の3人。現在も現役を続けているこの3人は文字通りの三者三様だが、都のプロレス継続は奇跡としか言いようがない。いったいなにがどうなって、プロレス継続を決めたのだろう?

「最初は、私も映画ができたらやめるつもりでいました。つらいし、痛いし、苦しいし、お金もそんなになかったし……。ただ、映画が公開されたとき、主演でもないし、ひとつもいい思いをしてないぞって気づいたんですよ。それが悔しかったし、お客さんからもやめるだろうと思われていたのも悔しかった。なので、やりますと言って続けていたんですが、まだまだイヤだなと思いながらやっていましたね」

 しかし、デビューから9戦目の09年1・18北沢で、都に転機が訪れる。元・全日本女子プロレスでNEO所属のタニー・マウスとのシングルマッチで、あることに気づいたのだ。

「大先輩のタニー選手と初めてシングルを組んでいただいて、初めてコミカルというか、ちょっと変わったプロレスに触れたんです。

 それまではマジメな感じでストロングスタイル(!)だったんですけど、タニーさんとの試合がお客さんにウケたんですね。ああ、コミカルなプロレスもありなんだ、こういう世界もあるのかと思って。すべてはタニーさんのおかげですね」

 この試合で初めて出したのが、都流ボディープレス、マンマミーアだった。当時はアバの楽曲をベースにしたミュージカルの映画化『マンマ・ミーア!』が公開された頃でタイミングもよく、ダンスをモチーフにした都の動きをタニーがうまく引き出してくれた。これを機に、都はちょっと変わったプロレスに開眼する。「歴史的な出来事でした。タニーさん、ホントにありがとうという気持ちです!」と都。そしてわずか1週間後、都は初めてタイトルマッチ(ICE×60王座)に挑戦した。が、王者・市来貴代子からボコボコにされたのは言うまでもない。

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