「市川姓」を許された女性伝統芸能者・市川櫻香が「古典の日」に込めた思い

5日に愛知・名古屋能楽堂で公演「古典の日」が開催される。同公演に出演するのが、伝統芸能者・市川櫻香。「名古屋むすめ歌舞伎」を立ち上げ、歌舞伎宗家である成田屋の故・十二代目市川團十郎さんから「市川姓」を認められた女性だ。今回の公演は、11月1日が「古典の日」と制定されていることを広く周知し、伝統芸能や古典について伝えていくためのイベント。「古典の日」は2008年11月1日に、「源氏物語千年紀」を言祝いで制定された。公演では子どもおどり「お乳や乳母(おちやめのと)」、むすめ歌舞伎「哥宗論(うたしゅうろん)」、舞踊「七福神」の3演目を上演。「お乳や乳母」には櫻香のもとにお稽古に通う5歳、8歳、10歳の女の子が出演し、「哥宗論」は櫻香の弟子の市川阿朱花(あすか)、柴川菜月が務める。櫻香は舞踊「七福神」を披露する。公演の見どころや意気込みを聞いた。

むすめ歌舞伎「哥宗論」の市川阿朱花(左)と柴川菜月(右)【写真提供:日本の伝統文化をつなぐ実行委員会】
むすめ歌舞伎「哥宗論」の市川阿朱花(左)と柴川菜月(右)【写真提供:日本の伝統文化をつなぐ実行委員会】

子どもおどり「お乳や乳母」、自分と向き合い「芸道」に触れる子どもたち

 5日に愛知・名古屋能楽堂で公演「古典の日」が開催される。同公演に出演するのが、伝統芸能者・市川櫻香。「名古屋むすめ歌舞伎」を立ち上げ、歌舞伎宗家である成田屋の故・十二代目市川團十郎さんから「市川姓」を認められた女性だ。今回の公演は、11月1日が「古典の日」と制定されていることを広く周知し、伝統芸能や古典について伝えていくためのイベント。「古典の日」は2008年11月1日に、「源氏物語千年紀」を言祝いで制定された。公演では子どもおどり「お乳や乳母(おちやめのと)」、むすめ歌舞伎「哥宗論(うたしゅうろん)」、舞踊「七福神」の3演目を上演。「お乳や乳母」には櫻香のもとにお稽古に通う5歳、8歳、10歳の女の子が出演し、「哥宗論」は櫻香の弟子の市川阿朱花(あすか)、柴川菜月が務める。櫻香は舞踊「七福神」を披露する。公演の見どころや意気込みを聞いた。(取材・構成=コティマム)

――演目の見どころをお聞きします。まず「お乳や乳母」。地唄の「お乳や乳母」を、お稽古に通われている子どもたちが踊るのですね。

櫻香「『日本の音で踊る、間を感じる』ということを次の世代にも伝えていきたいため、最初の演目は『子どもおどり』ということで『お乳や乳母』にしました」

――「お乳や乳母」は、高貴なお殿さまの姫を育てる乳母の仕草を表していますね。姫をあやし、寝かしつけ、年を数える。また空想で姫を舟に乗せて旅に出たり、踊り子のように踊ったり。

櫻香「元禄期の子守歌狂言小舞謡『七ツ子』が主題になっています。この『七ツ子』に歌詞をつけ、地唄で膨らませて三味線音楽にしています。『もともとの狂言にプラスαしてつないでいる』というのが大事。長唄やいろいろな邦楽での表現方法があるのですが、大幅に内容は変えずにわたくしども独自の形で、子どもが踊りやすいようにしています」

――独自の形というのは?

櫻香「例えば『てんてん』という節を『てん』にするなど、子どもたちが拍子に合わせやすいように工夫しています。これを『私たちのやり方』としてつないでいきます」

――お稽古を通して子どもたちは古典に触れていますが、反応はいかがですか?

櫻香「大変緊張しているし、自分にも厳しいです。彼女たちと交換日記をしていますが、『今日はうまくできなかった』『今日はちょっとやれた』と書いています。教室には2年、3年とお稽古している子もいます。同じものを日々やっていても、毎日何か発見がある。曲調や踊りがどうというよりも、自分との向き合い方や、伝統芸能の『道』に触れるきっかけが、この『お乳や乳母』です」

――貴重な経験の場ですね。

櫻香「子どもたちは、(歌詞や踊りの意味など)その時は分からないですが、自分で調べたりもします。こういう経験は宝物のような気がします。お稽古での経験から、『能を見てみたい』『和歌を研究してみたい』という扉が開いていく。その糸口を皆さんにお渡ししていきたい」

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