【週末は女子プロレス#20】アイドルをクビになった“自称クビドル” 東京女子・伊藤麻希の夢は東京ドームのリング

10月9日、東京女子プロレスが東京・大田区総合体育館にて「WRESTLE PRINCESSⅡ」を開催。これは昨年11・7東京ドームシティホールを上回る、団体史上最大のビッグマッチだった。メインを飾ったのはプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合、山下実優vs伊藤麻希。“東京女子のエースvs東京女子のカリスマ”という図式のタイトルマッチは、山下が勝利し防衛に成功した。敗れた伊藤は同王座3度目(山下には2度目)の挑戦だったが、またもや最高峰のベルトには届かず、山下からのシングル初勝利も持ち越しに。終わってみれば、旗揚げ当初から数々の修羅場をくぐり抜けてきた山下のリング経験値が上回ったと言えそうだ。

東京女子・伊藤麻希が山下実優戦を振り返った【写真:新井宏】
東京女子・伊藤麻希が山下実優戦を振り返った【写真:新井宏】

大田区総合体育館で団体史上最大のビッグマッチ実現

 10月9日、東京女子プロレスが東京・大田区総合体育館にて「WRESTLE PRINCESSⅡ」を開催。これは昨年11・7東京ドームシティホールを上回る、団体史上最大のビッグマッチだった。メインを飾ったのはプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合、山下実優vs伊藤麻希。“東京女子のエースvs東京女子のカリスマ”という図式のタイトルマッチは、山下が勝利し防衛に成功した。敗れた伊藤は同王座3度目(山下には2度目)の挑戦だったが、またもや最高峰のベルトには届かず、山下からのシングル初勝利も持ち越しに。終わってみれば、旗揚げ当初から数々の修羅場をくぐり抜けてきた山下のリング経験値が上回ったと言えそうだ。

 大会のエンディングでは、王者・山下がステージ上から来年3月19日、両国国技館に初進出することを発表。この瞬間、場内は選手、ファンとも大きな喜びに包まれていたのだが、伊藤はステージにいながらも茫然自失状態……今大会をも凌駕するであろう、さらなるビッグマッチを素直に受け入れることはできなかった。王者のまま両国で再びメインに立つことを目標とした山下に対し、伊藤はこれからどこに向かっていくのだろうか?

「セミ(プリンセスタッグ王座戦)がかなり盛り上がってる感じで、そのリアクションをバックステージで聞いているときが緊張マックスでしたね。ただ、試合前の煽りVTRをモニターで見ていたら緊張がほぐれてきて、いまさら自分がやってきた以上のものは出せないし、やるしかないんだって開き直れました」

 挑戦者の立場ながら、会場の空気を変えるという点では山下に勝つ絶対の自信がある。山下に限らず、すべての選手に対してそうだろう。山下がリングの修羅場なら、伊藤には若くして人生の痛みを数多く経験しプロレスにたどり着いたとの思いがある。自分の弱み、欠点をあえてさらけ出すことで、かえって共感を得るようになったのだ。

 たとえば、アイドル出身もグループから外され自身を「クビドル」(クビになったアイドル)と呼んだ。小顔整形や借金も告白。また、リング上では今回の挑戦権を獲得した「第8回東京プリンセスカップ」の準々決勝で顔面を骨折してしまう。常識的には欠場だが、伊藤は強行出場。「ダメならダメだし、もしも勝てたら自信がつく」と、大きな賭けに出たのである。そして伊藤は準決勝、決勝も勝ち抜いて初優勝を成し遂げた。ここで待ち受けていたのが、同郷で同い年の山下だった。山下の方から10・9大田区での挑戦者に伊藤を指名したのだ。

 最近では121000000(ワントゥーミリオン)というタッグチームとしても活動するこの2人。関係が親密になったのはここ数年のことだろう。山下が格闘技のバックボーンを持つ正統派の旗揚げメンバーなら、伊藤はアイドルがプロレスのリングに上がるDDTの企画からプロレスに興味を抱いた。それだけに、試合スタイルも正反対。実際、伊藤のデビューから数年間はリング上で関わる機会は少なかった。

 が、19年1・4後楽園で伊藤が山下のプリプリ王座に初挑戦。試合は伊藤にトラウマを与えるほど山下が圧勝し、以来、伊藤が追いかける立場でライバルとなっていく。伊藤は19年10月にインターナショナルプリンセス王座を獲得しシングル初戴冠。英米への海外遠征でも人気を博し、山下とは別のアプローチでトップへ急迫していくのである。

 それだけに、頂点王座奪取の機は熟していた。それでも結果は、山下超えには至らなかった。試合中、伊藤には戸惑いがあったというのだ。観客の感情をコントロールしながら闘っていくスタイルに狂いが生じたである。

次のページへ (2/3) 来年3・22には両国大会「プロレスラーになったからには」
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