声優15年の上坂すみれ「この仕事は声に心身が出る」…たどり着いた“自分をご機嫌にする術”
声優の上坂すみれが、公開中の映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』(和田純一監督)で、ヒロインのライバルで裏の顔も持つ優等生役を好演している。デビューから15年。上坂が同作への思い、声優業にとどまらないマルチな活動を続ける上での心の持ち方などを語った。

映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』でヤンデレ系優等生役
声優の上坂すみれが、公開中の映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』(和田純一監督)で、ヒロインのライバルで裏の顔も持つ優等生役を好演している。デビューから15年。上坂が同作への思い、声優業にとどまらないマルチな活動を続ける上での心の持ち方などを語った。(取材・文=大宮高史)
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『どこよりも遠い場所にいる君へ』は、阿部暁子氏の同名小説が原作の青春ストーリー。秘密を抱えて都会から島にある高校へ進学した月ヶ瀬和希(声・石橋陽彩)は、「神隠しの入り江」と呼ばれる場所で倒れていた秋鹿七緒(声・永瀬アンナ)をその場に居合わせた高津(声・玉木宏)と一緒に介抱する。「1974年から来た」と語る七緒によって、和希の生活が少しずつ変わっていく。
上坂が演じる三島たまきは、和希のクラスメートで明るく誰からも好かれる優等生の学級委員長。ところが、たまきは和希の過去の秘密を知っていた。学校で思いもよらない行動に出た上に、七緒を追う和希に今まで見せなかった危うい感情を露わにしていく。いわゆるヤンデレの系譜にあるたまき。上坂はそのキャラクターを存分に研究し、演じていた。
――たまきは序盤と終盤で全くイメージが違う二面性のあるキャラクターですが、演じるにあたって注力したことを教えてください。
「オーディションの時から、彼女の両方の面を演じていきました。全編を見ていただいた時に、彼女があの優等生ぶりを『すごく作っていたんだな』と皆さんが分かるようにしたかったんです。主演のおふたりがナチュラルなお芝居だったので、たまきはあえて少し盛り目で、ケミカルな優等生っぽさが出るように中盤までは演じていました」
――ケミカルとは。
「例えば、和希と七緒との掛け合いの場面だと、本音で話せる2人に対して、たまきは屈折したものの言い方しかできない。そんな風に育ったようないびつさを出していきました。一見かわいくて完ぺきな子なんだけど、どことなく芝居がかった振る舞いをしている。作り物の優等生なんです」
――他にたまきについてどんな考察をして、演じていきましたか。
「本当は島の環境が合わない子なんだと思います。大都会に出ていたら、いろいろな文化に触れて自分の心の闇も発散できたかもしれないです。でも島があまりに美しくて、それゆえにつまらないものばかりに感じてしまって、心に蓋をしながら生きてきて。そんな中で影を抱えて島に来た和希に出会い、抑圧してきた負の思いが強制的にこじ開けられてしまった。優等生を演じているのも、一見のどかで不自由ない環境にいるからこそ、そこから抜け出せない。『自分が作り出したろう獄の中で苦しんでいる子』というイメージを持っていました」
――すると、和希を前向きに変えていく七緒に対しては、たまきはどんな思いを抱いていたと想像しましたか。
「彼女からしたら、七緒自身がというより、七緒のおかげで2人が明るくなっていくことが耐えられなかったんだと思います。七緒も過去に置いてきた言えない秘密を持っているんですが、思ったことはストレートに伝えられる子です。正反対のたまきにとっては、自分の心の弱さを突きつけられるようで苦しかったのかなと。その対比は意識しました」
――収録現場で印象に残っているディレクションはありますか。
「終盤の嵐の中で言い合うシーンで、『距離を忘れて、隣にいるようなトーンで和希に話しかけてください』とアドバイスをもらいました。遠くにいるたまきがすぐ隣にいるような声で喋るのってアニメならではの表現ですし、彼女の執着や不気味さが際立ったと思います。永瀬さんの七緒との言い合いも2人で収録できたので、お芝居がつかみやすかったです」
――たまきのような屈折した役柄を演じる際、大切にされていることは。
「彼女のような真ん中で咲けなかったキャラクターには、寄り添いたくなります。私も子どもの頃から素直にものを言える方ではなかったので…。この作品でも悪役みたいな立場になっているんですが、『そうせざるを得なかった背景』を思って共感してしまいますね」

散歩&遠出好き「ふらっと知らない街を体感」
同作のようにキャラクターへの愛に裏付けられた声優としての熱演の一方で、音楽、ラジオ、舞台などでも活動をしてきた。さらにロシア、サブカル、アングラ芸術、プロレス…と、好きなカルチャーも尽きない。文字通り、多芸で多趣味な日々。上坂は自分のペースで生きる秘けつも明かした。
「声優の仕事って声に心身の状態が出るので、自分のご機嫌を取ることが大事です。愛猫のメロウくんと毎日接する時間も不可欠になったし、欲しいものを我慢せず買うために働いているような面もあります(笑)。お散歩も好きで、目的地も決めないで何時間も歩く時もありますし、そうやって仕事と全く関係ない時間を1日の中に作ると、『今日、何してたっけ?』みたいな空虚な気持ちにならずに済みます」
――「長時間歩くのが好き」となると、遠出もありますか。
「好きですね。温泉地へ行くのが好きなんですが、1人で特急に乗ってしまえば2、3時間で行けるので、ふらっと知らない街を体感するのも楽しいです」
――我慢しないのも大切だと。
「お酒が好きなので『今日はちょっといいワインを買ってみよう』と奮発して、ワイナリーの歴史を調べながら飲んでみたりするのも楽しいです。これも浪費なのかな(笑)」
――15年間を振り返って、糧になったと思う経験はありますか。
「『こんなこともできるんだ』っていう経験を多くしてきました。表に出る仕事も多くて戸惑った時もありましたが、どれも何かしら意味がありました。ラジオなら掛け合いの楽しさ、舞台では身体表現を学びましたし、アニメキャラのグラビアに挑戦したこともあります。アニメのキャラって現実的には再現困難なポーズもしていますが、実際にやってみたら『こんな格好をしてるんだ』って想像力も鍛えられたなと思います」
――それは上坂さんがご自身の好奇心や好きなことを隠さず、見せてきたからかもしれません。
「好きなものは『好き』と言っていきたい思いは一貫してありますね。好きを貫くって、普通に生きていると意外とできないことです。私が好きなものを大切にしていくことで、皆さんも『こだわりや好きなものを楽しんでいいんだ』と思ってくれたら。それに私は『できないかも』みたいな気持ちは持たないようにしていて。好奇心を持って取り組んでみたら、新しくハマれるかもしれないです。マルチな人になろうと意識していたわけではないですが、何でも発信してきたおかげで今があります」
――今後、ファンである「同志」の皆さんとどのように歩んでいきたいですか。
「一つのことを15年続けられたのは声優が初めてで、今後もやっていける自信になりました。インスタグラムを月曜と金曜に更新するのを習慣にしていますが、これも同志の皆さんへの近況報告というか。『これ!』と目標を決めるより、偶然の出会いを楽しみたいです。そして、『今年の上坂さん、こうなんだ』と同志の皆さんに面白がってもらいつつ、私を見て『自分も頑張ってみよう』と思ってもらえたら、最高です」
□上坂すみれ(うえさか・すみれ) 1991年12月19日、東京都生まれ。2011年に声優デビューし、主な出演作は、アニメ『中二病でも恋がしたい!』『ガールズ&パンツァー』『うる星やつら(2022)』『春夏秋冬代行者 春の舞』『ONEPIECE』、ゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』『艦隊これくしょん-艦これ-』『ウマ娘 プリティーダービー』など。13年にアーティストデビューし、24年にはベストアルバムもリリース。22年と25年には、舞台『ゲゲゲの鬼太郎』に出演。今年から27年にかけて順次公開の劇場版アニメ『機動警察パトレイバー EZY』には、久我
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