「よく今まで生きてこれたね」医師の言葉に衝撃 「朝がつらい」がまさかの難病診断…俳優・飛永恵那が公表したワケ
「朝どうしても起きられない」「日中に耐えがたい眠気が襲ってくる」。そんな経験をした人は多いだろう。俳優の飛永恵那(とびなが・えな、28)もその1人だった。悩んだ末、病院で検査を受けると、思いもよらない病名を告げられた。難病の「ナルコレプシー」を公表した飛永の闘病生活に迫った。

発症から診断まで10年近く…受診のきっかけは知人の一言
「朝どうしても起きられない」「日中に耐えがたい眠気が襲ってくる」。そんな経験をした人は多いだろう。俳優の飛永恵那(とびなが・えな、28)もその1人だった。悩んだ末、病院で検査を受けると、思いもよらない病名を告げられた。難病の「ナルコレプシー」を公表した飛永の闘病生活に迫った。(取材・文=幸田彩華)
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飛永が自身の不調を感じていたのは、10年前の学生時代からだった。
高校卒業後、演劇の専門学校に通っていた頃から「朝起きられない」「日常的に遅刻してしまう」という症状があった。
ただ、「朝がつらいのは誰でもあること」と思い込み、自分の感覚と他人の感覚のズレに気づけなかったという。
通院のきっかけになったのは23歳の頃だ。フルタイムのアルバイトを始めると、福祉関係の知人から「気絶するように寝てしまうのは不自然。ナルコレプシーじゃない?」と指摘され、初めてこの病名を知ることとなった。
2023年10月、受診した睡眠外来で日中の眠気指数を測定する採血を行った際、医師から告げられた言葉は衝撃的だった。
「先生から『言っていいか分からないけど、よく今まで生きてこられたね』と言われました。普通の人なら眠くて仕方がないと感じるレベルの数値が出ていたんです。でも、私自身は眠いという感覚すらまひしていて、自覚がないほど日常化していました」
ナルコレプシーは、時間や場所を選ばず強い眠気に襲われる「睡眠発作」や、感情が高ぶった際に全身の力が抜けてしまう「情動脱力発作(カタプレキシー)」などを特徴とする睡眠障害だ。
「私の場合は1型という脱力発作(カタプレキシー)があるタイプです。大笑いした時など、喜怒哀楽の感情が高ぶった瞬間に全身の力が一瞬フッと抜けちゃうんです。友達に会って『久しぶり!』となった瞬間にガクッとなったり、座っていても膝カックンされた時と同じような状態になり、顔の筋肉も含め突然、力が抜けてしまいます。意識はあるけれど一瞬動かなくなってしまうんです」
精密検査を経て、同年12月から投薬治療を開始。現在はうつ病の治療に用いられる、脳内のセロトニンの働きを強めて、気分の落ち込みや不安感を和らげる抗精神薬(ナルコレプシーの睡眠の質を高める効果)と中枢神経を刺激して日中の強い眠気を抑える薬を併用しながら生活している。
「夜寝れていようが、昼間気絶しちゃうようなことがザラにあったのですが、薬を飲むことでそれを防いでいます。電車で吊り革につかまっていてもガクッといってしまうので、座ったら絶対アウト。薬を飲まないと頭がぼやっとして起きられません」
振り返れば、高校時代、自転車通学中に無意識のうちに眠りながら運転し、電柱にぶつかる単独事故を何度も起こしていた。なぜ早く異変に気づかなかったのか。「もっと早く病院に行っていれば」。そんな、悔しさもこみ上げた。
1錠290円の高額な薬代 「怠け」に見られる偏見との闘い
薬の服用を始めてからは生活は大きく改善し、「薬を飲んだらこんなに楽なんだ」と実感したと語る。
一方で、飛永が直面しているのが、治療費の負担や社会の理解不足といった新たな課題だ。
治療を続けながら俳優活動やアルバイトを続けている飛永だが、覚醒を促す薬には「短時間で効く安い薬」(1錠約6.3円)と「長時間優しく効く高価な薬」(1錠約290.9円)があり、後者の薬を利用する場合は、3割負担でも1か月の薬代だけで5000円を超えてしまうため効き目や金銭的な理由から処方を調整せざるを得ないという。
また、職場や周囲の理解についても格差が大きいと感じている。
「今のバイト先にはたまたま睡眠障害に理解のある方がいて『無理しないでいいよ』と言ってもらえますが、別の職場では『なんで遅刻するの? みんなやってることだからできるよね』と言われてしまうこともありました。なったことがない人には分からないのも当然ですが、寄り添う姿勢がないと続けるのは難しいと感じます」
ナルコレプシーは指定難病(医療費助成の対象)ではないものの、日常生活に大きな支障をきたす難病だ。ところが、症状が「単なる怠け」と区別がつきにくく、本人さえも病気だと気づきにくい。日本の調査では、発症から正しい診断が下りるまでに平均8.7年かかっているというデータもある。生活を維持するためには、薬の服用だけでなく、昼食に温かいおにぎりを食べないようにしたり、満腹にならないように調整したり、合間に10~15分の仮眠を確保するなど、徹底した自己管理が求められる。
「早ければ早いほど良かった」早期受診の大切を訴え
「少しでも悩んでいる人は一刻も早く受診してほしい」
現在、飛永はSNSなどで自身の病気や体験について発信を続けている。認知度の低さから、「だらしない」「気合が足りない」「夜更かしのせい」などと誤解されやすい病気を、1人でも多くの人に周知したい思いがある。
「私も全然知らなかったし、自分に違和感があるからって調べることもなかった。ちょっとでも知識がある人と出会えてたら、もっと(症状は)変わったのかもしれない。10年前は、今と比べたら、もうちょっと症状軽かったしなっていうのはやっぱりあって。症状が軽い時だったら、こんなに薬飲まなくてよかったなとか。症状が軽かったら治りやすいだろうし、重かったら重かったで症状が消えるまでは時間がかかるだろうしって思うと、早ければ早いほど良かったかなって思います」
最後に、同じように原因不明の眠気や体の不調に悩む人々へ向けて、メッセージを寄せた。
「ナルコレプシーに限らず、睡眠の悩みがある人は一刻も早く睡眠外来を受診してほしいです。病気であろうとなかろうと、自分の今の状態を知るきっかけになりますし、もし病気なら早く治療を始めた方が生きやすくなります。ナルコレプシーの認知度が低いからといって治療の方向が狭まってはいけないと思っています。逆に試験的なものがあるのであれば、私はやりたい。それで治療法が見つかる近道になるのであれば、前向きに受けたいなとは思います。悩んでる人が少しでも悩みが消えたりとか、生きやすくなる方法が見つかればいいなって思っています」
目に見えない病と向き合いながら、声を上げる飛永。その真摯(しんし)な発信は、同じように悩む人々にとって、確かな道しるべとなるだろう。
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