加藤夏希、30代の10年間は「意図した休業」 結婚や出産を経て積み上げた“人生経験”
舞台『春よ来い、マジで来い』(10月23日スタート)への出演を控える俳優・加藤夏希(41)。かつて映画やドラマで存在感を放っていた彼女は、30代の約10年間、芝居の世界から距離を置いていた。そこには結婚、出産という経験が重なっているが、加藤自身にとっては、人生の経験値を積むために選んだという「計画的な休業」という意味合いもあったという。40代を迎えた今、再び表現の場へと戻ってきた加藤が、男女のリアルな心理を描く本作の魅力や水川かたまりとの共演、そして変化した自身の仕事観について語った。

舞台『春よ来い、マジで来い』で水川かたまりの元恋人役
舞台『春よ来い、マジで来い』(10月23日スタート)への出演を控える俳優・加藤夏希(41)。かつて映画やドラマで存在感を放っていた彼女は、30代の約10年間、芝居の世界から距離を置いていた。そこには結婚、出産という経験が重なっているが、加藤自身にとっては、人生の経験値を積むために選んだという「計画的な休業」という意味合いもあったという。40代を迎えた今、再び表現の場へと戻ってきた加藤が、男女のリアルな心理を描く本作の魅力や水川かたまりとの共演、そして変化した自身の仕事観について語った。(取材・文=磯部正和)
元坂道メンバーの熱烈なクルマ愛「最初の一台は国産車」…現在の愛車を告白(JAF Mate Onlineへ)
舞台『春よ来い、マジで来い』で加藤が演じるのは、水川が演じる脚本家志望の主人公・大山孝志の元恋人・ユキ。男女の煮え切らない関係性をリアルにすくい取った台本を読んだ時、そこに描かれた人間模様に強い手応えを覚えた。
「すごく遊びがいがありそうな台本だと感じました。どの登場人物に自分を当てはめても、人生の中で経験してきた恋愛や仕事への向き合い方に近いものがあります。無理に話を盛っていないからこそのリアリティーがあり、誰もが共感できる作品です」
しかし、演じるユキというキャラクターに向き合う中で、加藤は「私が登場するシーンのほとんどは、実際のユキではなく孝志が思い描くユキなんです。彼の中で記憶が美化されている状態が見えてこなくて……」とひとつの疑問に直面したという。
加藤は女性目線で見た時、別れに至るプロセスには現実的でドライな計算があるはずだと分析する。「女性は別れた相手に対して悪いことしか残らないものですが、男性は記憶を美化しがちですよね。私自身は女性脳なので、男性特有の美化された感覚がつかみきれず、模索している最中です」と語る。そんな役作りに悩む加藤に対し、演出のマギーから示されたのは「一人で煮詰まらないで」という方針だった。
「マギーさんからは『一人で考え込まないでください。稽古が始まってからみんなでヨーイドンで作っていきましょう。考えそうになったら僕にDMをください』と言っていただきました」
主人公・孝志を演じるお笑いコンビ・空気階段の水川とは今回が初共演となるが、初対面の時点でその存在感に圧倒された。
「本読みの時点で、かたまりさんは、すでに孝志そのものでした。うだつが上がらない人の絶妙な間合いやテンポの緩急が完成されていて、さすが芸人さんだと感じました。私はその周りをちょこちょこ動き回るユキを表現できたらと思っています」
生身の人間が対峙する舞台だからこそ、突発的な掛け合いも予想される。これまでも舞台経験はある加藤だが、本人は意外な弱点を明かす。「実はアドリブが苦手なんです」と苦笑いを浮かべると「突然仕掛けるのではなく、『こういうやり方をしたら面白いかも』というパターンをたくさん持って稽古に挑みたいです」と舞台の“生感”を楽しみつつも、しっかり準備もしていきたいと思いを述べる。
加藤が、アドリブが苦手であることや、ハプニングへの懸念には、過去の苦い体験も影響している。「去年出演した舞台の千秋楽で、冒頭のセリフを3~4ページ分飛ばしてしまい、誰も助けてくれない沈黙にヒヤッとした苦い思い出があります。そうした失敗も舞台上で克服し、ライブ感を楽しみたいです」と前を向く。

40代で迎えたマインドの変化
10代から20代にかけて新人OLや大学生役を重ねてきた加藤は、30代を迎えるタイミングで自らのキャリアを冷静に見つめ直した。
「新人OLや学生から、もう1~2歩先の社会人女性を演じるには、自分の人生経験があまりにも足りないなと。その意味で、当たり役も少ないと感じていた30代の10年間は、経験を増やすためにあえて芝居から離れた、意図した休業でした。そこに結婚や出産、子育てという部分が重なったという感じです。“計画的”というと少し言葉は強いですが、そういう時間にしたいという意識はあったんです」
2016年の出産を経て濃密な時間を過ごし、40代を迎えた今、現場での立ち位置や意識にも変化が訪れている。加藤は「今回のキャストの中で私が最年長なんですよ。これまでは基本的に皆さん年上の現場が多くて。それが、お休みをしている間に、皆が年下になった」とつぶやくと、「でも最年長だからといって、引っ張っていこうとか、盛り上げようという気持ちはないです。無理はしないように」と笑う。
また、時代の変化にもしっかり対応しようという思いがある。加藤が10代、20代の時は「先輩からあーだこーだと言ってもらって、お尻を叩かれるような感覚でやっていました。もともと自分は、負けず嫌いなので褒めて伸びるよりも、ボロボロに言われる方が『絶対見返してやる』っていう考えで頑張れたのですが」と振り返り、「でも自分の子どもを育てても思うのが、これまで私が経験してきたことではなく、接し方を変えないといけないんだなというのは実感します。だから少し傍観しながら『伸び伸びやってください』と少し引いて見守る方が、自分にもゆとりが持てると思っています」とスタンスを述べた。
経験を蓄えて迎えた40代。かつての葛藤を乗り越え、仕事へのマインドはより能動的なものへと進化した。「40代になって『できないなら自分でやればいい』と考え方が変わりました。親になって広がった横のつながりも含めて、培った経験をこれからの役者人生に活かしていきたいです」。
人生経験を増やすために芝居を休むという大胆な決断を経て、加藤夏希はより深みを増した表現者として帰ってきた。「できないなら自分でやればいい」と語る加藤の言葉には、年齢を重ねたからこそのしなやかな強さがある。男女の機微をリアルに描く本作の舞台上で、進化を遂げた加藤がどのような輝きを放つのか、とても楽しみだ。
□加藤夏希(かとう・なつき)1985年7月26日、秋田県出身。97年にゲームソフトメーカーのイメージガールとしてデビュー。99年、テレビ朝日系『燃えろ!!ロボコン』のヒロイン役で俳優活動をスタートさせた。その後も多数の映画やドラマ、バラエティーなど多岐にわたって活躍中。2014年に一般男性と結婚し、16年に長女、19年に長男、21年に次男、24年に次女を出産した。
あなたの“気になる”を教えてください