“元祖貝殻ビキニ女優”武田久美子、58歳で挑んだ23年ぶり写真集「出さなかったのではなく出せなかった」

「元祖貝殻ビキニ女優」「グラビアの伝説」――。数々の異名を持つ俳優・タレントの武田久美子が、23年ぶりに帰ってきた。1989年発表の写真集『My Dear STEPHANIE』で、ビキニの代わりにホタテガイの殻を身にまとった“貝殻ビキニ”は今なお語り草となっている。90年代にヒット作を連発してきたグラビアクイーンが、今年9月に発売した通算20冊目となる単独写真集『Sango』(講談社)では、美を追求し続ける「妥協なきボディー」を再び披露した。ENCOUNTでは、58歳になっても挑戦を続けるレジェンドのグラビア魂に迫った。

インタビューに応じた武田久美子【写真:増田美咲】
インタビューに応じた武田久美子【写真:増田美咲】

23年ぶり写真集『Sango』に込めた表現者としてのこだわり

「元祖貝殻ビキニ女優」「グラビアの伝説」――。数々の異名を持つ俳優・タレントの武田久美子が、23年ぶりに帰ってきた。1989年発表の写真集『My Dear STEPHANIE』で、ビキニの代わりにホタテガイの殻を身にまとった“貝殻ビキニ”は今なお語り草となっている。90年代にヒット作を連発してきたグラビアクイーンが、今年9月に発売した通算20冊目となる単独写真集『Sango』(講談社)では、美を追求し続ける「妥協なきボディー」を再び披露した。ENCOUNTでは、58歳になっても挑戦を続けるレジェンドのグラビア魂に迫った。(取材・文=福嶋剛)

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「写真集を出すなんて全く考えていなかったんです。でも心の片隅で『いつかできたらいいな』ってずっと思っていました」

 インタビューの第一声で偽らざる本音を語った武田。23年というブランクには、私生活の事情が大きく関わっていたという。

「出さなかったのではなく、出せなかったのかもしれません。母親として娘との生活を大切にしてきたので。写真集って男性向けの特殊なものですから、今の環境ではご縁がないだろうなって思っていたんです。その間は女性向けの美容関連の出版物を何冊も出させていただいて、30年前と変わらない体型は維持してきたので、いつかそんなタイミングが来たら……。とは思っていましたね」

 止まっていた時間が再び動き出したのは、子育てが一段落した昨年のこと。米サンディエゴの自宅に、友人の女性エディターが遊びに来たことがきっかけだった。

「もう40年以上の付き合いで、23年前の写真集にも携わってくれた友人です。自宅で昔の紙焼き写真を見ながら思い出に浸っていたら、『またやってみたら』『まだできるよ』って背中を押されて。娘も大きくなって、私自身もやってみたいという気持ちが日に日に膨らんでいきました。そうしたらいろんなことがいい方向に進んで、今回のご縁をいただいたんです。娘に『写真集を出すよ』と伝えたら、『そうなんだ』と素っ気ない返事でしたけど(笑)」

 とはいえ、決断に至るまでには葛藤もあったと打ち明ける。

「話をいただいた時、うれしい気持ちと裏腹に『きれいな思い出は触らない方がいいんじゃないか』『出さない方がよかったんじゃないか』という思いも頭をよぎりました。でも、チャレンジ精神というか、頑張ればもしかしたら前と同じぐらい、それ以上のエネルギッシュな作品が作れるんじゃないかって。その気持ちを信じてやってみようと決めました」

 そんな前向きな姿勢の裏にあるのは、美容への強いこだわりと、長年スタイルを維持してきた地道な努力だ。

「私、美容オタクなんです。歳を取りたくないというより、なるべく変わりたくないというこだわりがあって。街を歩いていてお店からおいしそうなパンの匂いがしても、体型維持を大切にしているので、誘惑に乗らないように我慢じゃなくて『自分の意思』だと言い聞かせて行動しているんです。だから私にとって、スタイル維持は日常生活の一部なんですけど、傍から見たら努力に見えるのかもしれませんね。もちろん今回の写真集で多少のメリハリをつけるために禁酒したり、バレエに通う回数を増やしたりはしましたが、写真集のために減量やハードなボディーメイクをしたことは一度もないんです」

通算20冊目となる単独写真集『Sango』を9月に発売した【写真:増田美咲】
通算20冊目となる単独写真集『Sango』を9月に発売した【写真:増田美咲】

23年ぶり写真集は「今の年齢に合った“素”で勝負」

 撮影は沖縄で実施。タイトルになぞらえ、貝殻ビキニをオマージュした“サンゴNUDE”も話題を呼んでいる。23年ぶりの撮影について尋ねると、意外にもブランクは全く感じなかったという。

「今までと変わらず、先月も撮影したような気分でした。カメラの前に立ってポーズをきめたら『こんな感じだったな』って。長くやってきた分、すぐに感覚が戻って、緊張も気後れもなく、23年前と変わらないスイッチが入りましたね」

 完成した写真集を見て「大満足! やってよかったなって思います」と笑みをこぼしつつ、写真集への思いを続けた。

「もともと子どもモデル上がりで、7歳ぐらいからカメラの前に立つお仕事をしていたので、撮られることには慣れていて、得意な分野でした。でもファッション誌とは違って、写真集って誰でもできるものじゃない特殊な分野で洋服やメイク、きれいなスタイルだけじゃなく、全身の撮影を通してその人物像に迫るものだと私は考えているんです。皆さんも写真集を開くたびに、当時の記憶や感情までよみがえってくることってありませんか。そんなふうに色あせず、永遠に残るものだからこそ、一つひとつ大事に作りたいですし、それが私にとって特別なものなんです」

 1983年5月、15歳の時にファースト写真集『パステル・ファンタジー』を出版し、同年10月には本格的なグラビア写真集『TOUCH ME! KUMIKO』を発売。それから43年、今回の『Sango』で単独写真集としては通算20冊目を迎えた。中でも広く知られているのは、やはり89年発表の“貝殻ビキニ”で有名な『My Dear STEPHANIE』だろう。テレビ番組で取り上げられるほどの話題となり、30万部の大ヒットを記録した。武田も「インパクトは一番ありました」と振り返るが、一番思い出に残っている作品を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「『JUST A GIRL』(87年)です。当時は10代後半でしたが、それまでとは違って、10代でしかできないかなり攻めたことをやっていました。その後の私を完全に印象づけてくれた作品で、武田久美子のビジュアルの原点なんです。他にも数多くの写真集を出してきましたけど、その一つひとつに精魂込めて作ってきたので、どの作品にも思い入れがたくさんあります」

 武田にとって写真集は、大切な自己表現の場だ。大胆なショットや話題性の裏には、表現者としての飽くなき探求心が隠れている。

「私の写真集は、ただ自分がきれいに写っているカットとか、人を驚かせるための面白いアイデアとか、そういうものを作品にしようとは思っていないんです。毎回違うテーマやコンセプトを考えて、過去の作品と重ならないものを出してきました。私のこだわりでもありますし、ファンの皆さんには全部持っていてほしいから、同じテーマの写真集は作りたくないんです。撮影中も常に真剣勝負なので、ワクワクするというよりも、1ミリでもいい作品にしたいという思いで全身全霊を捧げていて。撮影が終わるとご飯ものどを通らないくらい、いつもフラフラになります。でもそれが楽しいんです」

 23年という歳月の分だけ、撮影環境も大きく変わった。カメラはフィルムからデジタルへ。今回、初めてデジタルでの撮影に挑んだ。

「時代は大きく変わりましたよね。昔は修正1か所で5万円も請求される時代だったから、よほどの傷でもない限り修正してもらえなかったんです。でも今、コテコテに修正した写真にしたらサイボーグみたいになって誰も買ってくれませんから(笑)。今の年齢に合った“素”で勝負しようと決めていました。どうしたって過去の作品と比較されるのは当たり前ですから。ただ、『ただ歳を取ったな』とは思われたくなくて。以前よりパワーアップしたところを見せたいし、前作より良くなったと思ってもらえるように、今の自分を最大限に出そうという思いで臨みました」

 今年8月に58歳を迎えた武田。今の自分を写真集という形で記録できたことは、この先に進むための大きな励みになったようだ。

「大変でしたけど、今回やってみて自信がついたのは確かです。また機会があれば、今後の自分を維持するための目標にもなると思うので、まだまだやっていきたいですね。それが今の私の楽しみです」

□武田久美子(たけだ・くみこ)1968年8月12日に静岡で生まれ、東京都で育った。小学生からキッズモデルとして活動し、81年、中学1年の時に「東大生が選ぶアイドルコンテスト」で優勝し、芸能界入り。翌82年、映画『ハイティーン・ブギ』で主演・近藤真彦のヒロイン役を務め、83年に『噂になってもいい』で歌手デビュー。その後もドラマ、映画、グラビアと活動の幅を広げ、89年の写真集『My Dear Stephanie』で“貝殻ビキニ”が大反響を呼び、一躍グラビアクイーンとして人気を博す。2000年、結婚を機に渡米し一女をもうける。26年、23年ぶりに通算20冊目となる写真集『Sango』(講談社刊)を出版。

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