有村昆、経営知識ゼロから年商数億円のホテル社長に 2年で50店舗へ拡大させた独自ノウハウ

タレント・有村昆(50)が今、民泊界で異彩を放っている。民泊・ホテル「LEON RESORT」グループを“顔出し”せずに展開しその規模はたった2年で50店舗に及び、年商は数億円。なぜ芸能一本、経営知識ゼロだった有村がこのビジネスに目をつけ、異例とも言えるスピードで成長していったのか。

インタビューに応じた有村昆【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた有村昆【写真:ENCOUNT編集部】

映画コメンテーターの経験が生んだ圧倒的「エンタメ空間」

 タレント・有村昆(50)が今、民泊界で異彩を放っている。民泊・ホテル「LEON RESORT」グループを“顔出し”せずに展開しその規模はたった2年で50店舗に及び、年商は数億円。なぜ芸能一本、経営知識ゼロだった有村がこのビジネスに目をつけ、異例とも言えるスピードで成長していったのか。(取材・文=島田将斗)


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 4年前の週刊誌報道で芸能界で先の見えない自粛生活を送っていた頃、副業として最初に検討したのは一般的な不動産投資だったという。銀行から融資を受け、千葉県内のアパート一棟を購入する計画だったが、有村はそこに違和感を覚えた。

「利回りが10%ぐらいなので、約10年で投資額を回収するつもりでした。不労所得が入るのはいいんですけど、なにか『面白くないな』『スピードが遅すぎて話にならんな』と思っちゃったんですよね。自分の営業努力によって、もっとスピード感を掛け算で増せるビジネスはないかと考えた時、投資家の仲間たちから『民泊って知ってます?』と教えられたのが始まりでした」

 当時は新型コロナ禍の真っ只中。現在のようにインバウンド需要など何もない。それでも外国人観光客が帰ってくることを信じて、渋谷区の築古マンションの一室を借りて民泊運営をスタートさせると、予想的中。コロナ明けとともに外国人観光客の予約が殺到し、毎月1軒のペースで物件を増やしていくことになった。

 事業の拡大が一気に加速したのは、独自の「転貸×フランチャイズ(FC)」システムの構築が契機となった。

「個人で自己資金や敷金・礼金を用意して借りて……とやっていてはスピードが出ない。そこで、僕が培った運営ノウハウや物件情報をパッケージ化して、フランチャイズのオーナーさんを集める形にしました。うちが一括して賃借したものをオーナーさんに転貸し、日々の運営や清掃手配、面倒な英語対応の代行は全てうちが引き受ける仕組みです」

 一般的なビジネスホテルと一線を画すのが、有村が手掛ける部屋の圧倒的な「エンタメ感」だ。ティファニーブルーで統一されたフェミニンな部屋から、近未来のスター・ウォーズ風、ゲームの『マインクラフト』を彷彿(ほうふつ)とさせる部屋、空港風、巨大な錦鯉を配した和風の部屋まで、まるでスタジオセットのような空間が広がる。驚くことに、これらのデザインに専門の内装デザイナーは一切入っていない。

「デザイナーは雇っていないです。これ、パース(見取り図)を引くところから家具の配置、色味まで全部僕が1人で考えています。フランチャイズでも僕がやらないとうちの『シネマティック・ジャパン』という思想が根付かないんです。外国人がせっかく日本へ訪れたのに、無機質な白い壁のビジネスホテルに帰ってくるのはつまらないじゃないですか。映画を見てきた経験が、こういう空間プロデュースの着想に生きているんです」

 最近では、AIを駆使してオリジナルの壁紙デザインを作らせるなど、最新テクノロジーの活用にも余念がない。徹底的にコストを削減し、着想から家具の搬入、完成まではなんと約2か月半という異例のスピードを誇る。

 もう一つ、事業の要となっているのがAIを活用した「スマートプライシング(変動価格制)」だ。

「ホテルって唯一、定価がないビジネスなんです。繁忙期は高くなり、閑散期は安くなる。うちはエリアごとの競合の価格帯や需給バランスをAIに読み込ませて、日々の価格を自動調整しています。例えばこの住吉の物件なら、最大4人泊まれて1泊2万円前後。他のビジネスホテルで4人分の部屋を取るより圧倒的に安いですし、暮らすようにキッチンや洗濯機も使えるので、高稼働を維持しています」

 実際に予約は数か月先まで埋まっている。長期滞在者も多かった。こうしたち密なデータ分析と運営実績が評価され、世界最大級の宿泊予約サイト「Booking.com」からは、日本に4人しかいない「公式アンバサダー」へと任命された。

今年2月にオープンしたホテル「LEON RESORT 住吉」の客室
今年2月にオープンしたホテル「LEON RESORT 住吉」の客室

インバウンド特化だからこそのトラブルも

 ビジネスの成功の裏には、当事者でなければ分からない、泥臭く過酷なトラブルの日常がある。インバウンドに特化しているからこそ直面する“現場のリアル”を、有村は隠すことなく明かした。

「一番多いのは洗濯乾燥機への詰め込みすぎによる故障ですね。あとはカーテンがレールごと外されていたり、なぜかスタンドライトのコードが全部抜かれていたり。でも、そんなのはまだ可愛いほうです。中には特殊清掃を入れる事例もありました。本来は死体が見つかった時などに、におい消しまでやるプロの清掃ですが、本当にそれぐらいしないと原状復帰できないこともあるんです」

 さらに近年は、インバウンドならではの“転売屋”の利用と見られるトラブルにも頭を悩ませているという。

「ある部屋で、日本の『オニツカタイガー』のスニーカーの空き箱が、50箱から60箱ぶわーっと大量に捨てられていたことがありました。海外だと大変な人気なので、日本で大量に買い占めて、荷物の体積を減らすために外箱だけを部屋へ投棄して持って帰るんでしょうね。ベッドに寝たような泊まった形跡はほぼなく、ただ転売の荷物整理の作業場・拠点として使われていたようです。あまりにも悪質な汚損やマナー違反に対しては、規約に基づいて一律5万円の修繕費や処分費を徴収していますが、本当にいろいろな人がいますよ」

 理不尽なカスタマーハラスメントや、深夜のクレーム電話にも対応し、少しでも備品が壊れれば即座に手配へ走る。タレント業とはまったく異なる毎日だ。

 民泊事業で一定の成功をつかんでもなお、有村は複数の事業を並行して手掛けている。その背景には、実業家としてたどり着いた強固な「リスク分散(ポートフォリオ)論」があった。

「どこか一つの事業だけが調子良くても、立ち上げ時だったり時代が変わったりすると、急に焦げ付いてダメになることが多々あるんです。その時、他のキャッシュポイント(収入源)があれば補填して経営を維持できる。一つだけにドーンと全掛けする会社は、こけるのも早いんです。株だって『全財産を1銘柄に全掛け』なんてそんなバカなことはしないじゃないですか。だからこそ自分の資産を民泊、飲食、整体、そして芸能といくつかへ分散して投資する。それが会社を守るポイントですね」

 現在は、「民泊」という枠組みを大きく超え、ビル一棟借り上げモデルや、山梨県・河口湖で富士山を望むサウナ&ジャグジー付きの直営ヴィラホテルを建設するなど、「ホテル屋さん」としてのステップを急速に進めている。

「今年はビル一棟もののホテルが一気に開くので、まずは100店舗を目指して、体力の続く限り走りますよ」

 ビジネスの世界に飛び込んでまだ4年。どん底で学んだしたたかな商才と、映画から得た無限のアイデア。“最強の営業社長・有村昆”のビジネスの快進撃は、今後も続くに違いない。

□有村昆(ありむら・こん)1976年7月2日、マレーシア生まれ・東京育ち。年間約500本の映画を鑑賞する映画コメンテーターとして活躍するほか、番組MCや司会経験も豊富。コロナ禍を機に実業家としての活動を本格化させ、始めた民泊事業は2年半で50店舗まで拡大。2025年からはフランチャイズ展開もスタートし、東京(スカイツリー近郊・品川)や大阪・難波でのビル一棟ホテル、河口湖のリゾートヴィラなど新規開業を続々と予定。近年中に「100店舗達成」を目指し、事業をけん引している。

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