加藤清史郎「自分は面倒くさい人間」 1歳で子役デビュー、24歳になった今…主演作で見せた新境地
俳優の加藤清史郎が、フジテレビ・FOD で30日に放送・配信をスタートする青春クライム・サスペンスドラマ『スピナーベイト』(初回火曜深夜1時30分)に主演する。演じるのは、カーストの底辺から不穏な事件の渦中へと放り込まれていく高校生の三井宏太。子役から大人のマルチ俳優へと変貌を遂げた加藤が、今作で感じたことやエンターテインメントへの思いを語った。

青春クライムサスペンス『スピナーベイト』に主演
俳優の加藤清史郎が、フジテレビ・FOD で30日に放送・配信をスタートする青春クライム・サスペンスドラマ『スピナーベイト』(初回火曜深夜1時30分)に主演する。演じるのは、カーストの底辺から不穏な事件の渦中へと放り込まれていく高校生の三井宏太。子役から大人のマルチ俳優へと変貌を遂げた加藤が、今作で感じたことやエンターテインメントへの思いを語った。(取材・文=大宮高史)
同作は、此元和津也氏による同名マンガが原作で平瀬遼太郎監督が演出している。原作は2010年から11年にかけて、月刊コミックバーズに掲載された。三井は友人に誘われてフィッシング部に入部するが、部の正体は“スピナーベイト”と名乗る恐喝まがいの自警団だった。組織では強引に犯罪を取り締まり、稼いだポイントによって序列が決定するが、三井はゼロポイントの最下位。だが、なりゆきで連続殺人事件の犯人を追うことになった三井は、事件の渦中にどんどん巻き込まれていく。加藤は原作の印象を「鈍痛」に例えた。
「読み進めていくうちに何が起こっているか分からなくなりかけるほど、ち密な展開が続きます。原作は全3巻とタイトで怒とうの勢いで物語が進み、重たいものを押し付けられたような感覚になります。鈍い痛みが残りました」
三井はクラスでも目立たず、組織でも序列最下位。加藤は彼の本質を、立ち位置以上にその内面にある無関心さに見出している。
「彼ははい上がろうとせずにいた人間で、『序列を上げたい』という意志もなく、抜け出そうともしていません。流されてばかりの無関心さが、彼を作る大きな要素です。物語が進んでもその核の部分は変えてはいけないと考えました。だから、格好いい奴に見えてしまってはダメなんです。序盤と中盤で、同じセリフを投げかけられても彼の反応は変わるので、平瀬監督と『三井だったらどうするか』と話し合って模索していきました」

加藤自身は、三井とは正反対の人間だという。ささいな出来事でも、自分の感覚を信じたい性格だと明かした。
「去年『デスノート THE MUSICAL』で夜神月を演じた時も全く共感できなかったんですが、彼の時はまだゆがんだ正義感も共感はできなくても理解はできました。でも、三井はそれ以上でした。僕は小学生の頃から、けんかがあれば間に入って仲裁するような子どもで、三井とは真反対でした。彼のように何が起きても淡泊で流れに任せてしまうのではなく、『そうなんだけどさ』と違和感を覚える性格です。日常を退屈に思うかどうかも、気持ちの持ち方で変わってきます。信号待ちでふっと足元を見てみたら、たんぽぽが咲いているのに気づいて、『たんぽぽだ』で終わるんじゃなく何を感じるか。そういう感性の積み重ねで人って変わっていくと思っています。だから、自分のことは考えごとが多いです。面倒くさい人間です(笑)」
原作が描かれたのは約15年前だが、時代が違っても変わらないことがある。
「描かれている人間の生き様や社会の構図という本質は、どんなに時間が経っても古くならないと思うんです。時代に合わせて設定をどうこうするよりも、作品が持っているメッセージという『味』をいかに食べやすい状態で現代に届けるか。それを精査するのが僕たちの役割だと思っています」

エンタメ不要論に思うこと
加藤は、今回の作品や『デスノート THE MUSICAL』など、マンガ実写化作品への出演も多い。原作にどう色をつけていくか、これに関しても、料理に例えて誠実に言葉を並べた。
「原作者の方が届けたい方向性が既にあって、ファンもいます。となると、僕ら俳優は味をつけるスパイスにならないといけないし、具材をもっと柔らかく味わえるようにするのが役割だと思います。具材そのものであるキャラクターになりきる必要はないんですが、原作者が具材として人参を選んだのなら、『なぜ人参を選んだのか?』まで考えて、味を付けていくのが僕らの役目で、具体的に原作のこの表現をどう伝えるべきか、よりストレートに表現して共感を呼ぶべきなのか、それとも作品の核は伏せて届けた方が良いのか。そこまで考えて、生身の人間が演じるからこそのメリットを感じてもらえるようにするのが、僕の使命だと思ってそれぞれの作品と向き合っています」
論理的に自身の俳優論を言葉にしたが、「エンタメファンとして当たり前のことを積み重ねてきただけ」とも思っている。
「僕自身、いち観客としても多くの作品に触れてきました。それは皆さんが漫画や映画を見て、何かを感じて生きているのと全く同じ体験だと思います。誰もが、例え自覚がなくとも昔見たアニメやドラマ、バラエティーといった作品から感性を育んできたと思うし、僕自身も同じように磨かれてきました。だからこそ、届ける側になって皆さんの未来の人生を彩るきっかけになれる。そのことに強い意義を感じます」

それはコロナ禍を経て、エンターテインメントの必要性が問われた時期を経験したからこその確信でもある。
「エンタメは必要ないという考えもあるかもしれません。実際にコロナの時には、世の中の空気や支援の仕組みに歯がゆい思いをしたこともあります。でも、芸術との出会いは誰かにとっての豊かさにつながるはずで、僕が関わった作品でもそれができれば、この道を選んだ意味があるのかなと思います。もっとも、『ただ好きでこの仕事をさせていただいている』というのが根底にあって。『好き』が先にきて使命感は二の次かもしれません(笑)。何より自分以外の人間の人生を生きるのが好きなんです」
培ってきた確固たる役者論と人間観、エンターテインメントへの愛。「これさえあれば生涯、俳優の道を歩いていける」。24歳になった加藤は、そう確信している。

□加藤清史郎(かとう・せいしろう) 2001年8月4日、神奈川県生まれ。1歳1か月で子役としてデビュー。15歳からは3年間、英国・ロンドンへ演劇留学。近年の主なドラマは、TBS系『ドラゴン桜』、WOWOW『水滸伝』など多数。読売テレビ『君が死刑になる前に』で地上波連ドラ初主演。映画は『はたらく細胞』、ミュージカルは『デスノート THE MUSICAL』『未来少年コナン』など。今年12月上演予定の舞台『ミノタウロスの皿』(新国立劇場 小劇場)にも主演する。
ヘアメイク:入江美雪希、スタイリスト:山田安莉沙
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