桜庭和志、「ちょっと違うでしょって」総合格闘技界の“迷走”に警鐘
10・9東京ドーム大会の第1試合の思い出
――そういえば桜庭さん、昔話を1つだけお聞きしたいんですけど、過去に「10・9」と呼ばれた大会が東京ドームであったじゃないですか(1995年10月9日)。
桜庭「あの、新日本との?」
ターザン「Uインターの全面対抗戦ですね」
――25年経って、今覚えていることはありますか? 第1試合で永田裕志、石澤常光VS金原弘光、桜庭組だったじゃないですか。
ターザン「あれは今見ても興奮しますね」
桜庭「あれは第1試合っていうのもあったけど、今考えても対抗戦らしい試合だったと思いますね」
ターザン「あれはこっちが吸い込まれるくらい激しい試合でしたよね」
――あれは面白かったですね!
ターザン「A猪木さんが一番面白がっていたね」
――あの試合はベタ誉めして、永田さんと石澤さんは試合後に猪木さんから金一封が出たんですよね。
桜庭「あ、ホントですか! 僕もらってないですよ!」
ターザン「パチパチパチ!」
桜庭「なんなんですか! そんなのばっかりですよ!(笑)」
ターザン「いやあ、今日は『QUINTET』のアウトラインがつかめたよ。趣旨、本質、ポイント、キーワードがだいたい頭の中に入ったからイメージができたじゃない。それは桜庭さんの語る言葉が分かりやすいからですよ。分かりやすいというのが一番重要ですよ!」
桜庭「あー、それはなんとなく分かります。たまに専門用語を使ったりして話す人がいるじゃないですか。あれはめちゃくちゃ分かりづらいですよね。例えば『ソーシャルディタンス』とかって。そのくせ、地震があったら『津波警報』とかって日本語を使って。そっちのほうが分かりやすいじゃないですか。だから『コロナ警報。外出を控えてください』でいいのに」
ターザン「『クラスター』って何かと思うよね」
桜庭「ええ。後はなんだっけ?」
ターザン「だから専門用語を使わずにかみ砕いて伝えないと素人には届かないんですよ。実はそれが一番才能が必要なんだよね。その才能があるかどうかが大きなポイントなんだよ」
――概略だけじゃなく「QUINTET」というかキラー桜庭の思考パターンが分かりましたね。
ターザン「分かったし、僕がこの時点で分かったということは、まだ世間には届いていないことも分かったんだよ」
――猪木さんの言われる「環状線理論」じゃないですけど、ファンの外側にいる世間に届かせるのはこれからだと。
ターザン「桜庭さん、おしゃべり面白いですね」
桜庭「僕の分かる範囲の話ならいいですけど、キャバクラの話は分からないです(笑)」
ターザン「いやあ、今日の桜庭さんは全部キラー言語だなー」
――これまで桜庭さんはキラー言語を公開してこなかったから。
ターザン「それは語り手側の問題じゃないのか?」
――だって今までは桜庭さんが「書かないでくれ」って言うんですから(笑)。
ターザン「そうなの?」
桜庭「(無視して)とにかく山本さんは、帰りの電車で空気椅子をやってください(笑)」
□桜庭和志(さくらば・かずし)1969年7月14日、秋田県出身。中央大学レスリング部出身。92年UWFインターナショナル(Uインター)に入門。「PRIDE」のリングでグレイシー一族を次々と撃破し、「グレイシーハンター」の異名を取る。2014年には「UFC」の殿堂入り。18年春より「QUINTET」を立ち上げ、現在に至る。10月27日には後楽園ホールで今年最初の大会が開催される。