【プロレスこの一年 #16】女子プロで世代を懸けた勝ち抜き戦、混乱の全日本とW-1の設立、小橋の引退…17年のプロレス

「FINAL BURNING in BUDOKAN」の小橋建太【写真:平工 幸雄】
「FINAL BURNING in BUDOKAN」の小橋建太【写真:平工 幸雄】

武藤はWRESTLE-1の設立を発表

 ゆずポンがリングを下りる1か月前、ところも同じ両国では、日本マット界の老舗、全日本プロレスが揺れに揺れていた。3・17両国の全試合終了後、マイクで演説していた白石伸生オーナーがKENSOに張り手を見舞ったのである。すると佐藤光留がリングに突進、オーナーの言動に激怒した。白石は2月25日に新しくオーナーに就任したばかりで、その後すぐにSNSでの発言が物議を醸していた。暴走する言動に現役選手は混乱。1・26大田区では元NOAHのバーニング(秋山準、潮崎豪、金丸義信、鈴木鼓太郎、青木篤志)が全日本参戦を表明、2・23後楽園より全日本マットへの侵攻を本格的に開始したばかりだったのだが、話題はリング外の騒動に持っていかれてしまったのだった。

 5月31日には武藤敬司が会長辞任届を提出する事態に発展。翌日には白石があらためて社長に就任するも混乱はおさまらず、全日本を離脱の武藤は7月10日に新団体WRESTLE-1の設立を発表した。武藤には11選手、練習生3名にスタッフ3人が追随した。一方、全日本では渕正信が取締役相談役に就任し、「生涯全日本です!」と宣言。諏訪魔や古巣に戻ってきた和田京平レフェリーも全日本に残留、戸惑う全日本ファンを一安心させた。

 エースの諏訪魔が潮崎を破り三冠ヘビー級王座を防衛、ベルトをジャイアント馬場家に返還した8・25大田区では、白石社長が全身フル装備で休憩時間のエキシビションマッチに登場。KENSO&白石組VS蝶野正洋&ジョー・ドーリング組というカードが組まれた。白石社長は31日、横浜文体で爆破マッチの「人間爆弾」として大仁田厚「横浜大花火」のリングに登場。この2試合で度重なる混乱の清算をおこなうも、結局は9月11日の後楽園で社長退任を発表、後方支援にまわることが発表された。非レスラーに振り回された全日本だが、9月6日には元横綱・曙がプロレス8年目にして全日本へ入団、所属選手となった。曙はその後、王道トーナメントで優勝。さらに10・27両国では三冠ヘビー級王座を獲得。新調された三冠ベルトを諏訪魔から奪ってみせたのだった。また、バーニング勢もまとめて古巣・全日本に入団する運びとなった。

 全日本から分裂したW-1は9月8日、TDCホールにて大々的に旗揚げ戦を開催した。所属以外の17選手が「X」として当日発表。メインは武藤&ボブ・サップ組VSレネ・デュプリ&ゾディアック組で、真田聖也が海外遠征から凱旋。真田は10月1日付で、W-1所属選手となった。

 全日本の混乱とは対照的に、この年の新日本プロレスは独走態勢とも言える盤石な興行人気を博してみせた。恒例の1・4東京ドームでは棚橋弘至がオカダ・カズチカを破り5年ぶりとなる所属同士のイッテンヨンメインでIWGPヘビー級王座を防衛。敗れた“レインメーカー”は4・7両国にてIWGP王座を奪回した。また、1・4ドームでは中邑真輔と桜庭和志がIWGPインターコンチネンタル王座を懸け初対戦。試合は中邑が防衛も、桜庭のセコンドには木谷高明社長がついていた。

 ジュニアの祭典「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」では20回目にして大会史上初の外国人同士による決勝戦が実現。アレックス・シェリーを破ったプリンス・デヴィットが全勝優勝を達成した。夏の「G1クライマックス」では“エース”棚橋を破った内藤哲也が初優勝。10月7日には飯伏幸太が新日本とDDTのダブル所属となることが発表された。

 数々の苦難を乗り越えてリングに上がり続けた“鉄人”小橋建太が引退したのも2013年のハイライトだった。小橋は5月11日、日本武道館での「FINAL BURNING in BUDOKAN」にてラストマッチ。8人タッグで秋山&武藤&佐々木健介と組み、かつての付き人であるKENTA&潮崎&金丸&マイバッハ谷口と対戦。最後はムーンサルトプレスを決め、四半世紀に及ぶ現役生活にピリオドを打った。この年、小橋が全身全霊を捧げたNOAHでリングの中心を担ったのは、GHCヘビー級王座を年間通じて守り抜いたKENTAである。KENTAは13年1月27日から翌年1月5日まで歴代3位の9度防衛に成功。方舟のカリスマとして、小橋の魂を受け継いだのだ。(文中敬称略)

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