次期朝ドラヒロインの覚悟 20歳を迎え大切にする誠実さ「甘えが許されない場所だからこそ」
俳優・上坂樹里は2025年、ドラマ『御上先生』での好演で一躍脚光を浴び、20歳の節目を鮮やかに彩った。今、彼女は26年前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』のダブル主演として、日本中の朝を照らす存在となるべく奮闘している。「夢」と語っていた場所に立ち、いまだ見ぬ景色の中を疾走する上坂が抱く、静かな情熱と新たな決意に迫る。

自己否定を越えて見つけた、役者としての「確かな居場所」
俳優・上坂樹里は2025年、ドラマ『御上先生』での好演で一躍脚光を浴び、20歳の節目を鮮やかに彩った。今、彼女は26年前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』のダブル主演として、日本中の朝を照らす存在となるべく奮闘している。「夢」と語っていた場所に立ち、いまだ見ぬ景色の中を疾走する上坂が抱く、静かな情熱と新たな決意に迫る。(取材・文=磯部正和)
所属事務所の晴れ着お披露目会に現れた上坂のたたずまいは、春の陽光をそのまま纏ったかのような柔らかさに満ちていた。しかし、ひとたび役の残り香を感じさせると、その瞳には凛とした強さが宿る。激動と呼ぶにふさわしい2025年を越え、役者として、そして1人の大人として、かつてないほど濃密な時間を積み重ねている。
「2025年は、まさに『変革』という言葉がぴったりの1年でした。ずっと心に描き続けてきたことが、まるで魔法のように形になっていく……。そんな不思議な感覚と、温かな人の縁に支えられた日々は、私にとって夢のような時間でした」。
かつて上坂は、自身のことを「あまり好きではない」と語り、自分ではない誰かになることで、心の均衡を保っていたという。自己否定を燃料にするような繊細な感受性が、皮肉にも彼女を芝居という表現へと駆り立ててきた。だが、幾多の現場を潜り抜けてきた今、鏡に映る自分自身を、少しずつ受け入れ始めているように見える。
「根底にある慎重さは相変わらずなのですが、カメラの前に立って、役の葛藤に身を投じている瞬間の自分は好きです。分からないことの多さにもがいたり、台本の一行にたくさん向き合ったりする……。そんな時間はとても楽しいです」。
上坂の名を広く知らしめることになったTBS連続ドラマ『御上先生』で見せた、ヒリヒリするような瑞々しい演技。それは上坂が「自分」という殻を脱ぎ捨て、周囲の熱量を全身で吸収した結果でもあった。
「あの現場を経験して、一番変わったのは『視界の広さ』かもしれません。以前は自分のセリフのことで精一杯でしたが、相手の呼吸や、現場に流れる空気がお芝居にとても大切な要素になるなと感じることができました。それがお芝居に深みを与えてくれるのだと、少し分かったような気がします」

夢に手が届く時―朝ドラの現場で刻む「生の衝動」
そして、2026年。俳優なら誰もがうらやむ「朝ドラW主演」という夢をつかんだ。しかし、その決定を告げられた時、胸に去来したのは歓喜よりも先に、戸惑いと大きな空白だったという。憧れ続けた頂は、あまりに突如として上坂の眼前に現れた。
「『朝ドラの主演になる』ということは、私にとって大きな夢であり目標でした。だから、実際にその場所に手が届いたと分かった瞬間は、喜びが追いつかなくて……。うれしさを通り越して『どういうことなんだろう』と思考がついていきませんでした(笑)」
クランクインから約2か月。すでに撮影現場での生活は、上坂の日常の一部となっている。かつてのヒロインたちが口をそろえて語る「過酷なスケジュール」さえも、彼女は生活のリズムを整えるための心地よい規律として受け入れている。前作のヒロイン・髙石あかりが画面の中で輝く姿を、テレビで眺めながら、彼女はバトンを受け取る責任を日々噛み締めている。
「あかりさんが出演している『ばけばけ』をメイク室で見ている時、メイクさんに『次はあなたの番だよ』と声をかけていただいたんです。その時、ようやく夢から醒めたような、あるいはもっと深い夢に入り込んだような感覚になりました。朝ドラの現場特有の、丁寧なリハーサルの時間は、私に『大家直美』という人間をじっくり育てる余裕を与えてくれます。今は監督とも密に話し合いながら、彼女としての正解を現場で探していく日々です」
晴れ着お披露目会で、色紙に記した「丁寧に、大胆に」という言葉。朝ドラの撮影現場で、上坂は準備しすぎないことを意識している。現場で生まれる生きた感情、共演者の熱演に触れて湧き上がる予測不能な衝動。それこそが、上坂が表現したい「真実」なのだ。
「家で固めてきたものをなぞるのではなく、その場に流れる『今』を大切にしたいんです。皆さんの熱量を受け取り、そこに自分の声を乗せていく。そんな大胆な挑戦ができる環境に感謝しています。一歩引いて見ていた自分は卒業して、今はもっと貪欲に、この作品の一部になりたいです」

20歳の覚悟、甘えを捨て、座長として踏み出す新たな10年
20歳という節目を迎え、少女から大人へと鮮やかな変貌を遂げつつある上坂。20代という長い旅路が始まったばかりの上坂は、自身の未来に具体的な数字や計画を押し付けることはしない。ただ、今は『風、薫る』という作品を最後まで全力で走り抜くこと、その一点だけを見つめている。
「走りきった後、自分がどんな景色を見ているのか、今は全く想像がつきません。でも、もしかしたらまた違う大きな夢ができるかもしれません。今は分からないことさえも楽しんでいきたいです。20代は、出会う一つひとつのご縁を丁寧に紡いで、役者として、人間として、もっと深く、もっと繊細に生きていきたいと思っています。これまでは自分が一番年下という現場が多かったですが、甘えが許されない場所だからこそ、しっかり現場の中心になれるように、そして1人の大人として、誠実に現場に向き合っていきたいです」
2026年、上坂が運ぶ「風」は、きっと多くの人々の心に寄り添い、さわやかな香りを残していくに違いない。上坂樹里という1人の俳優が、確かな足取りで第一歩を刻み始めている。
□上坂樹里(こうさか・じゅり) 2005年7月14日、神奈川県生まれ。21年8月から『Seventeen』専属モデルを務め、同年に俳優デビュー。22年にNHK『ヒロイン誕生! ドラマチックなオンナたち』、23年にNHKの特集ドラマ『生理のおじさんとその娘』やフジテレビ系連続ドラマ『いちばんすきな花』、24年に日本テレビ系連続ドラマ『となりのナースエイド』『ビリオン×スクール』に出演。25年はNHK BS『TRUE COLORS』、TBS系連続ドラマ『御上先生』に生徒役としてレギュラー。またギャラクシー賞を獲得したNHK夜ドラ『いつか、無重力の宙で』に出演して注目を集め、26年はNHK連続テレビ小説『風、薫る』で見上愛とダブル主演を務める。特技は書道。身長160センチ。
あなたの“気になる”を教えてください