「かわいくない」父のおさがり激渋セダン 女子大生が“衝撃改造”、今の愛車も…個性全開「車好きでよかった」

愛車に追い求めるのは、とにかく「かわいさ」。愛好家の30代女性は、趣味全開のカーライフを歩んでいる。初めて乗ったマイカーは父親のおさがりのセダンだったが、まさかの“カスタム”を施し、周囲をあっと言わせた。現在乗っているホンダS660も唯一無二に仕上げている。「楽しいことにまっしぐら」の愛車遍歴とは。

「ガールズカーコレクション(GCC)」には中森明菜風のコスプレで参加【写真:ENCOUNT編集部】
「ガールズカーコレクション(GCC)」には中森明菜風のコスプレで参加【写真:ENCOUNT編集部】

【愛車拝見#350】「特別なことをしている感覚はないんです」

 愛車に追い求めるのは、とにかく「かわいさ」。愛好家の30代女性は、趣味全開のカーライフを歩んでいる。初めて乗ったマイカーは父親のおさがりのセダンだったが、まさかの“カスタム”を施し、周囲をあっと言わせた。現在乗っているホンダS660も唯一無二に仕上げている。「楽しいことにまっしぐら」の愛車遍歴とは。(取材・文=吉原知也)

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 クルマ女子の祭典「ガールズカーコレクション(GCC) 2025」の舞台で、中森明菜の“十戒1984風”のコスプレで参加した、ねこもみさん。軽規格のオープンスポーツカーS660は、大好きな紫色を取り入れた“デコトラ風”の雰囲気満載で、参加者からも注目を集めた。

 その独創的な愛車生活の原点は、大学生だった18歳の時にさかのぼる。父親から譲り受けたのは、トヨタ・アルテッツァ。渋いセダンで、若い女性が乗るにはちょっと“ギャップ”がある。「当時はあまり車に興味がなくて、見た目がかわいくないなと思ったんです。最初はえーっ、好きじゃないという感じで」。少しでもかわいくしようと、手始めにぬいぐるみを車内に置いてみた。これが、すべての始まりだった。

 そんな遊びはどんどん進化。内装をいじってアレンジに加えて、ラッピングシートを駆使して「マリオの痛車仕様」にしたのだ。アルテッツァは様変わり。見る見るうちに“自分色”に染まっていった。「乗っていくうちに愛着が出てきて、車って面白いなって思うようになりました」。

 その変貌ぶりに、両親は驚きを隠せなかった。「同じ人が乗っていたとは思えない」。それでも、存分に楽しんでいる娘を見て、車好きの父親は「好きにやっていいよ」。娘の自由な発想を認めてくれた。友人たちも「派手な車だね。でも、“らしい”よね」と個性を受け止めてくれた。約5年間乗った。

 社会人になり、2台目の愛車としてミニ・クーパーを手に入れた。納車時のオールペッパーホワイトのボディーは、またしても“創造の舞台”となる。

 最初は、伝説的SFアニメ『AKIRA』をテーマに、主人公・金田のバイクをイメージした赤ラッピング。それで終わらない。次はサンリオのキャラクター・シナモロールを意識した水色。最後は自分のテーマカラーの紫。ルーフの色を変えるなどのイメージチェンジを3回繰り返した。故障して大変なこともあったが、自分らしさを追い求めた。

 約10年間のミニ・クーパー生活を経て、ねこもみさんは次の相棒を探し始めた。ドア数が少ないこと、コンパクトであることを条件に挙げて、ダイハツ・コペンとS660に絞り、S660の「見た目」に魅了された。すでに生産終了になっており、「今のうちに手に入れておかないと、と思ったことも理由の一つです」。中古車情報を検索するなど半年かかったが、走行距離2万キロほどで、程度のいい個体を発見。2024年10月に納車した。

 S660は着々と、「懐かしくてかわいい車」へと変貌を遂げている。デコトラ風の装飾とレトロ感。クラシカルなホイール、おもちゃみたいに見えるナットを使ったり、トラック専門店で購入した花瓶を飾っている。サイドミラーは紫色ラッピングで、ワンポイントのアクセントを効かせる。デコトラ風のミニシャンデリアもDIYで自分で作った。今後は、純正をあまり崩さず、理想のかわいらしさを目指していくという。

 ねこもみさんの人生において、車はただの趣味以上の存在だ。整備士の夫と出会ったのも車がきっかけ。ミニ・クーパーのオフ会で知り合い、遠距離恋愛を乗り越えてゴールイン。今では、カスタムの相談相手であり、最高のアドバイザーでもある。「こうしたらどう?」「このパーツはやめた方がいいよ」。専門家ならではの的確な助言が、愛車のカスタムをさらに洗練させている。「車がつないでくれた縁です。自分の世界も広がって、車好きでよかったです」。

 愛車の維持のため、事務とアイスクリーム販売の仕事を掛け持ち。「車社会で生活するうえで、車は自分が一番、一緒に過ごす相手になります。車が一番いい状態になっていると、心がときめくことができて、通勤も苦ではなくなります。自分だけの空間を大事にしたいと思っているんです。気分がいい時はオープンにもできるので、そこも気に入っています」。時間もお金も労力もかかる。それでも続けられるのは、車が単なる移動手段ではなく、自分らしさを表現する「特別な空間」だからだ。

 今後の夢を尋ねると、意外な答えが返ってきた。実は“アレン様”としてSNS上でカリスマ的人気を誇っているタレント・アレンの大ファンでもある。「いつか、アレン様をお乗せてドライブしたいです。ガチの夢です」と目を輝かせた。

 個性を前面に押し出してライフワークを楽しむ姿に、周囲の人たちも笑顔。「自分としては、特別なことをしている感覚はないんです。子どもの頃から変なことをやってきたので(笑)。これからも楽しいことだけを追いかけていきます!」と前を見据えた。

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