ヤクザよりも怖い?テレビの内幕を暴いた「さよならテレビ」の衝撃

東海テレビが制作したドキュメンタリー番組「さよならテレビ」の劇場版が2020年1月2日からポレポレ東中野(東京・中野)ほか全国で順次公開される。ドキュメンタリー班が報道部で働く3人のテレビマンに密着取材し、テレビが今抱えている問題を赤裸々に浮き彫りにした問題作。2018年9月2日に東海ローカルで放送され、大きな反響を巻き起こした。あいちトリエンナーレ2019映像プログラムで上映されたテレビ版を観たが、とんでもない大傑作だった。

「さよならテレビ」(C)東海テレビ放送
「さよならテレビ」(C)東海テレビ放送

来年1月公開…ドキュメンタリー班が報道部で働くテレビマンを密着取材

 東海テレビが制作したドキュメンタリー番組「さよならテレビ」の劇場版が2020年1月2日からポレポレ東中野(東京・中野)ほか全国で順次公開される。ドキュメンタリー班が報道部で働く3人のテレビマンに密着取材し、テレビが今抱えている問題を赤裸々に浮き彫りにした問題作。2018年9月2日に東海ローカルで放送され、大きな反響を巻き起こした。あいちトリエンナーレ2019映像プログラムで上映されたテレビ版を観たが、とんでもない大傑作だった。

 映画界でもひと際存在感を見せているのが、ローカル局の東海テレビだ。「系列の在京キー局のフジテレビでは放送してくれないなら、編集した映画版を観てもらおう」と、2011年から「東海テレビドキュメンタリー劇場」として11本を公開してきた。ヤクザと人権問題に切り込んだ「ヤクザと憲法」(2016)、ニュータウンの一角で自然に寄り添う建築家とその妻の静かな生活を描いた「人生フルーツ」(2017)は大ヒット。樹木希林さんがナレーションを務めた「人生フルーツ」は全国100館以上で公開され、ロングランを記録した。

 東海テレビ60周年記念番組の冠をつけた「さよならテレビ」は放送時の視聴率こそ振るわなかったが、全国のテレビ関係者を中心に口コミが広がり、「再放送はないのか」「全国放送はないのか」「劇場版の公開はないのか」などの声が寄せられる大反響。あいちトリエンナーレ2019でのトークショー付きの上映も大盛況で、観客の中には作品を観るために山形から駆けつけたという男性もいるほどだった。

 監督は、「ホームレス理事長―退学球児再生計画―」(2014)、「ヤクザと憲法」といった問題作を送り出してきた圡方(ひじかた)宏史氏。ヤクザに人権はあるのかをテーマにした「ヤクザと憲法」では暴力団事務所に潜入取材を試み、暴力団幹部の恫喝や警察のガサ入れにも一歩も引かない姿が印象的だったディレクターだ。

監督は「ヤクザと憲法」の圡方宏史氏「テレビの取材の方が恐ろしそう」

「5、6年前に『ヤクザと憲法』とこの企画を考え、どっちもやりたいと思っていました。でも、テレビの取材の方が恐ろしそう。自分たちを撮るので、クタクタになるだろうということで後回しにしました。世間ではテレビを“マスゴミ”と言うが、これはまったく根も葉もないことではなさそう。自分も中にいて、居心地の悪さを感じることもあるので、テレビの自画像を描きたかった」と圡方監督は話す。

 提出した企画書の題名は「テレビは今」。それを読んだ阿武野勝彦プロデューサーが「これは『さよならテレビ』だね」といい、そのまま題名になった。「さよならテレビ」とはどんな意味なのか?

 私はかつてスポーツ新聞社に勤務していたが、「さよなら新聞(退社)」をしてフリーランスになった。労働組合の書記長、委員長を務めていた時には、過労死問題や契約社員との格差問題などに直面。「原稿より健康」といい、待遇改善に力を注いだが、報道の現場は単純に労働時間だけでは語れない部分がある。メディアは足で稼ぐ仕事。労働時間を減らせば、その質は低下してしまうからだ。

 物語は報道部からスタートする。ドキュメンタリー班の企画が説明され、部内に設置されるカメラとマイク。部員はその光景に怪訝な顔を浮かべ、不穏な空気が漂う。これまでカメラを向けてきたテレビマンたちが「撮るな!」と怒る場面も。折しも、テレビ局に「働き方改革」の波がやってきていた。半ば、強制的に残業を減らしていこうというものだ。

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