菅首相が掲げる「不妊治療の保険適用」 専門家が見る課題は?

新型コロナで出生数は過去最低を更新、少子化対策への効果は未知数

 では、菅首相が目標に掲げる少子化対策にはどの程度の効果があるのか。杉山理事長は「現在全国で不妊治療をしている患者さんが約10万人。目先の数字で2~3万人程度は(新生児が)増えるでしょうが、そこが限界だと思います。少なくとも10万人以上増えることはない。我々には専門外ですが、やはり子どもを作らないという選択肢自体が増えてきている以上、保育や教育など、不妊治療以外の面での補助を充実させていく方がいいのではないでしょうか」と私見を語る。

 日本生殖医学会では4月、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、不妊治療の延期を求める声明を発表。「どのクリニックも例年より2~3割受診が少ない。今年も出生数は過去最少を割るでしょう」と杉山理事長。一定の時間が経過することで妊娠を待っていた人が再び子を求める、いわゆる“揺り戻し”についても「震災のときのような一時的なものではなく、コロナという目に見える不安がある以上、それが解決しない限り今後どんどん人口が減っていくことは考えられます」とし、「果たして少子化対策にどのくらいの効果があるのか」と懐疑的な目を向ける。

 学会内でも「同じ金額を投じるなら、保険適用でなく補助金を増やした方が絶対にいいというのが大半の意見」だといい、「保険適用よりも最先端の医療が自由に受けられるようにした方がいい」と改めて政府へ要望した杉山理事長。新政権が掲げる柱の一つも、実現に向けては多くの課題をはらんでいる。

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