菅首相が掲げる「不妊治療の保険適用」 専門家が見る課題は?

菅義偉首相が掲げた不妊治療の保険適用制度。実現に向け好意的な解釈が広がる一方で、現場からは慎重な声も出ている。保険適用が実現した際のメリット、デメリットは何なのか。4月に不妊治療の延期を求める声明を出した日本生殖医学会の委員でもある、杉山産婦人科の杉山力一理事長に聞いた。

菅義偉首相【写真:AP】
菅義偉首相【写真:AP】

菅首相は所見表明演説で2年を目途に不妊治療の保険適用実現を明言

 菅義偉首相が掲げた不妊治療の保険適用制度。実現に向け好意的な解釈が広がる一方で、現場からは慎重な声も出ている。保険適用が実現した際のメリット、デメリットは何なのか。4月に不妊治療の延期を求める声明を出した日本生殖医学会の委員でもある、杉山産婦人科の杉山力一理事長に聞いた。

 新首相となった菅氏は8日の所見表明演説会で、不妊治療への保険適用を実現する方針を示した。日本の少子化対策について触れた菅首相は、その一環として不妊治療への保険適用の考えを表明。その後、実現には早くて2年程度かかるという見方を示したうえで、実現までの間は、助成制度の拡充などで治療を支援したいという考えを示した。

 体外受精や顕微授精に代表される不妊治療は、さまざまな理由で自然妊娠できなかったカップルにとって、最後の砦とされる治療法だ。しかし、現在の制度では、1回数十万円など高額な費用がかかり、子どもを望む人にとって金銭的、精神的にも大きな負担となっている。数百万円を投じても妊娠できなかったケースもあり、晩婚化で高齢出産が進む日本では、少子化にもつながる大きな課題の1つとなっている。

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