令和ロマンくるま、ピンでも活躍する相方に「本当に良かった」 “TV出ないノリ”に負い目
お笑いコンビ・令和ロマンの高比良くるまが、ABEMA『世界の果てに、○○置いてきた』シリーズで南アジア縦断の旅に挑んだ。活動自粛と吉本興業の退所を経て再出発する中、約2週間の旅で何を得たのか。帰国当日に話を聞いた。

ABEMA『世界の果てに、○○置いてきた』シリーズに出演
お笑いコンビ・令和ロマンの高比良くるまが、ABEMA『世界の果てに、○○置いてきた』シリーズで南アジア縦断の旅に挑んだ。活動自粛と吉本興業の退所を経て再出発する中、約2週間の旅で何を得たのか。帰国当日に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
「なんでも割り切れない」。絶対にやらないと決めていたことに挑み、自分自身が浮き彫りになった。現地に行った者しか分からない空気、人、景色、におい、味――五感すべてに圧倒された。
オファーはオンラインカジノ問題での自粛前から届いていたが、当時はスケジュールの都合で実現できなかった。「前の事務所では劇場スケジュールが2~3か月先まで決まっていたので、『いつかできたらいいね』という感じでした」。
その後、活動を自粛。復帰後は吉本との契約も終了し、スケジュールが空いたことで旅は“前倒し”で実現した。
虫が苦手、腹が弱い、長時間移動が苦手――“嫌”が詰まった企画。それでも出演を決めたのは、自分に対する興味でもあった。
「絶対にやりたくない気持ちが強いほど、やらされたときに飛距離が出る。それが番組としての意味になると思ったんです。YouTubeチャンネルとかで自分からやるとぬるくなる。行きたくないからこそ、他者にやらされるべきなんです」
覚悟して臨んだが、旅は意外にも「息抜き」になった。目隠しをされて気が付いたときにはバングラデシュにいた。
「行ったら絶対つらいと思ってたけど、物理的にみんな優しいし、ご飯もおいしい。お湯が出ないとか虫がいるとかはあるけど、見る景色がいつもと違うから着いた瞬間から“バングラデシュ基準”に自然と切り替わってた。セーブデータが上書きされた感覚です」
虫もさほど気にならなかった。漫才中のような身振り手振りで明かした。
「日本なら『うわぁ!』ってなるけど、ハエが寄ってくるんじゃなくて、自分がハエの住んでた場所に行ったと思えたんです。だから『すみませ~ん』ってハエの間を通ってた。基準がいつもと変わったぶん、ご飯やコーラ、人の優しさが余計にありがたくて、それが息抜きになってたんですよね」
一方で子どもたちからもらった自家製レモネードでお腹を壊した。それは、現地で偶然出会った子どもたちとサッカーをプレーしたときの出来事だった。
「『ナイスプレー!』ということでって出してもらいました。絶対にお腹壊すって分かってたけど、少年たちの笑顔に囲まれて……人として飲みました。飲んだ直後にきました。胃腸薬のCMの逆で、明らかに消化器官をヤバいものが通っていくのが見える感じでした(笑)」

旅で気が付いた世界の複雑さ「素数みたいな景色がいっぱい」
くるまが海外で奮闘している頃、相方の松井ケムリはピンで朝生放送などに出演。ひとりでも活躍する相方への思いも口にする。
「本当に良かったなと思いました。僕のせいでコンビとしてテレビに出ないイメージがついちゃってて。“テレビ出ないいじり”もされてたし、僕はそれをボケにしてたんですけど、本気にした人もいたかもしれない。ケムリ先生を巻き込んだかもと思っていたので、今ピンでもいろいろ出られてるのは本当に良かった。お子さんも生まれたし、軸が与えられて良かったと思います」
約2週間の旅は過酷でもあったが「人に恵まれて」生きてきたことを実感する瞬間もあった。
「これまで自分で何も決断してきてないんです。『一緒に受験しようぜ』『お笑いサークル入れば?』『吉本興業入るんでしょ』って言われて、全部『うん』って言ってきた。僕はラフティングがうまいだけ。流されてるけど、転覆しない。それが今回も発揮されました」
旅の途中、見学予定だった「THE NORTH FACE」の工場へ向かう船が予想外の場所に着岸。大勢の見知らぬ子どもたちに囲まれた。くるまは、その場がパニックにならぬように「バングラデシュ!」と叫びながら一緒に100メートルほど走ったそうだ。子どもたちと触れ合っていると、「子どもと遊んでくれるいいやつ」と認められ、気づけば現地の大富豪の家に招かれ、おいしいカレーを振る舞われた。さらに移動のタクシーまで手配してもらえたという。
“世渡り上手”だけが理由ではない。一連の出来事はくるまの行動による打ち返しでもあった。
「パニックが起きるほどの人数、スリにあっても分からないレベルで囲まれました(笑)。でも敵意がなければ、相手も悪さはしないですよね。あそこでバッグを隠したりしてたら、子どもたちもムカついたと思う。僕は相手が誰でも国が変わってもフラット。それが良かったかもしれない」
今回がほぼ初海外。約2週間の旅で見たさまざまな光景はくるまにどう映っていたのか。最後に“世界の複雑さ”を口にした。
「自分は偏見がないつもりでも、どこかに偏見があったんです。チベットの難民キャンプに行ったんですが、。チベットと中国の二項対立かと思ったら、そこは10年前まであった“シッキム”という小国だった。どこが国境で誰がルーツなのか、元々はヒンドゥー教だったのにキリスト教に改宗しているおっちゃんがいたり……。見たことを無理やり抽出して人に伝える行為自体が無理だなと感じたんです。特殊だけど、特殊じゃないんですよ。ほどききれない何かが世界にはある。素数みたいな景色がいっぱいあった。素数の研究は意味があるのかという意見もあるけど、美しいという人もいる。なんでも割り切れることじゃないんです」
『M-1 グランプリ』2連覇をしているが、くるまが面白いのはお笑いだけではない。自らをふ瞰しているからこそ出せる人生観や考え方が見る人を惹きつけている。素数でない世界を見たうえでこれからどう表現していくのか――その続きを見届けたい。
『世界の果てに、くるま置いてきた』
「ABEMA」にて2025年9月21日(日)夜9時より無料放送スタート
ひろゆき&東出に続き、ほぼ”人生初海外”のくるまが日本から4,800キロ離れた離島に置き去りに
『世界の果てに、くるま置いてきた』#1
