すっぴんも晒すクールビューティー・上福ゆき、プロレスラーとして「等身大の“リアル”を届けていい」
モデルからプロレスラーに転身した上福ゆきは、東京女子のリングでデビューし8年が経過し9年目のレスラー人生を送っている。アジアを中心に海外遠征も経験し、東京女子への思いにも変化があったようだ。後編では、ベルトへの思い、そして地元・藤沢へ寄付を続ける理由など中心に話を聴いた。

ベルトは“頑張った証”、価値は自分で作ればいい
モデルからプロレスラーに転身した上福ゆきは、東京女子のリングでデビューし8年が経過し9年目のレスラー人生を送っている。アジアを中心に海外遠征も経験し、東京女子への思いにも変化があったようだ。後編では、ベルトへの思い、そして地元・藤沢へ寄付を続ける理由など中心に話を聴いた。(取材・文=橋場了吾)
スポーツ経験はほとんどなく、前転はできても倒立も受け身もできない。その状況から4か月で何とかデビューに漕ぎつけた上福は、2017年8月26日・後楽園ホールでプロレスデビューした。
「めちゃくちゃやる気があったわけでもないですし、デビューしたくて仕方ないわけでもなかったので、会社はすごく不安だったと思いますよ。デビューして3戦4戦ぐらいしてからですかね、これは頑張らなきゃと思いました。全然何もできないので、しっかり練習しないとこれはまずいなと。でも続けてこられたのは、東京女子だったということと、反骨心が強かったからですね。黙って見ている人たちが拍手をするまで頑張ろう、アンチも多かったので、ひっくり返すまで頑張ろう、そして色々教えてくれる先輩たちへの申し訳なさ……1個1個潰していったら頑張るしかなくなったみたいなところはあって。東京女子だから頑張れましたし、今は客寄せパンダでもいいから東京女子のためにという気持ちはありますね」
ここ数年、上福はアジアにも活動の幅を広げた。そしてベトナム、シンガポールでシングルの王者にもなった。
「自分が“アジアに遠征している選手”というイメージがついたことは、よかったと思いますね。ほかの選手がアメリカを目指していたので、自分は(地理的に)逆方向に行こうと。最初にマレーシア、タイ、シンガポール、ベトナム、中国、フィリピン……東京女子のPRをしがてら、自分も新しい経験がしたかったので。(アジアの団体は)規模は小さいんですけど、小さいなりに頑張っていると思います。そういう団体のベルトを獲ったことで、すこしでも知名度が上がればいいなと思いました。ベルトって“頑張った証”だと思いますし、価値は自分が作っていけばいいので。自分のプロレスラー人生においては、東京女子のベルトの価値が高いので、ベルトを掴む感覚だったりベルトを巻いている感覚だったりを持ったまま、東京女子のベルトを獲るときに活かせたらなとは思っていました」

プロレスラーも“リアル”を届けていいんじゃないの?
上福は東京女子ではインターナショナル・プリンセス王者(2020年11月~21年5月)に就いているものの、他のベルトには縁がなかった。しかしプリンセスタッグ王座へ挑戦するチャンスが巡ってきた。タッグチーム“Ober Eats”のパートナーである上原わかなとともに、9.20大田区大会で享楽共鳴(中島翔子&ハイパーミサヲ)に挑戦する。
「(上原は)超好対照ですね。私はちょっとキャラクター先行みたいな部分が多くて、 『一生懸命頑張ります!お願いします!』みたいなタイプでもないので。性格も全然違いますし、最初は自分の好きなタイプではないと思っていました。でも、(上原がプロレスを始めたきっかけとなった)番組の企画を見たときに、コイツは続けるんだろうなと直感で思いました。結果、ビンゴでしたね。雰囲気、胸が大きくて何か言いたそうな顔(笑)。
腹の中で色々思っていることがあるんだろうなと思って、アメリカ遠征で同部屋になったときに『本当はそういうタイプじゃないでしょ?』みたいな話をしたんですよ。そこで腹を割って話してからですね、仲良くなったというか近い存在になったのは。正直、ベルトを獲るだけだったら山下(実優)さんと組みたいですよ(笑)。でも、今の自分にとってはわかなと一緒にベルトを獲りたい。自分が先輩として背中を見せたいと思いますし、(上原に)舐められたくもないので頑張らなきゃって思いますよ」
その上福、数年前から地元・藤沢の湘南台で凱旋興行を行い、藤沢市教育応援基金に4年連続で寄付を行っている。
「(湘南台に住んでいたときに)何か努力をしてきたわけではないので、地元にも今頑張っている証を残せないかなと思ったんです。あとは、芸能界を目指そうと思ったときに、心無いことを言ってきた人たちがいたので、その人たちを見返してやりたいという気持ちもあって。自分が写ったポスターを貼ってもらって『どうだ帰ってきたぞ!』と。あと、私がいた時代はやんちゃな子も多くて、喧嘩したり悪いことをしたりするんだったら夢を持って頑張ってほしいという気持ちもあって、教育委員会に寄付をすることにしました」
上福はSNSですっぴんを晒すこともあれば、犬のおむつを履くといったユニークな姿を見せることもある。クールビューティーなビジュアルとは、イメージが違う投稿をするのも魅力といえるだろう。
「自分は素を隠したりいいところだけを見せるのが苦手で、なんでもぶっちゃけちゃうタイプなんですよ(笑)。『これをUPしたら引かれるかな』と思うこともないですし。(おむつは)犬のエピソードのひとつとしてあげただけですし、面白い思い出を単純にシェアしたいだけで。リングでは360度囲まれて、蹴られたり殴られたり姿をお客さんに見られているので、すっぴんなんて何でもないです。逆にフィルターかけまくっている方が気持ち悪いって思っちゃいますし。“リアル”を届けていいんじゃないの?と。これからも“等身大”の自分でやっていこうと思っています」
