「社会人になったらゲームをやめる風潮変えたい」…eスポーツ“兼業プロ”の覚悟

34歳のネモ選手は「世界大会タイトル」を目指し続ける【写真:舛元清香】
34歳のネモ選手は「世界大会タイトル」を目指し続ける【写真:舛元清香】

賞金だけで生活は成り立つのか…「ゲーム寿命」にも左右される厳しいeスポーツの世界

 浸透しつつある「新しい職業」としての認識。だが、大会で勝つことで得る賞金だけで生活していけるのか。世間一般の最大の関心事でもある。ネモ選手の場合は、所属先の「Team Liquid」から月収が支給され、なおかつ海外大会の渡航費、海外滞在費も別途支給される。「きちんとスポンサーに付いてもらっているので、正直それだけで生活はできます。賞金だけで食っていくとなると、それをできているのは今でも数人ですね。正直、無理だと思っています」。個人で海外遠征費を賄うのは相当難しい。

 プロ選手には、一般向けイベントなどでの解説や出演の仕事もある。ただ、「イベント出演はプラスアルファでお金が来ますけど、本当にスポット。年間でいくらになるのか計算がしづらい。スポンサー収入は月収でもらい、年間でこれだけもらえるという金額があるので安心できます」。安定した生活を保障するには、スポンサーが大きな柱であると言える。

 海外では賞金の高額化が顕著だ。米国で今夏、「フォートナイト」の世界大会で当時16歳の選手が優勝し、賞金は約3億円となったことが話題になった。ネモ選手が参戦しているカプコンプロツアーでは、今年の本戦カプコンカップの賞金総額は25万ドル(約2700万円)だという。人気拡大の続く日本にも明るい兆候はある。10年前と比べると賞金面は「ケタがどんどん上がっています。昔なんて本当に賞金3万円のレベルだったので。その日にもらって打ち上げで使って終わりみたいな。今では、個人でも100万円、200万円の大会もある」という。

 選手寿命も気になるところだ。ゲーム業界の独特な傾向で、重要なポイントがあるという。それは、ゲームタイトルの栄枯盛衰だ。「選手寿命は、ゲームの寿命が来たら終わってしまう可能性があります。ゲーム自体の人気が関わります。以前、自分がすごく好きなゲームがあったんですけど、その新作がこけた。すると、選手たちがプロの世界からいなくなることもありました」。新作が次々と出てくるゲーム界において、「何が当たるかは見えないうえに、強くなるには相当の練習量と時間が必要。自分で見極めるしかない」。人気タイトルで強くなり、常に新しいトレンドに乗っていないと生き残れない。厳しい現実もあるのだ。

大事なのは「好きで続けること」

 ネモ選手は、プロを目指す心構えについて示唆に富んだ意見を示す。「あまり最初から高望みをしなくていい」という考えだ。「自分も最初はスポット的に番組に呼ばれて出演料をもらってというのを繰り返して、それが何年もの蓄積になって今みたいにスポンサーが付いて活動できるようになりました。それに正直、運もある。自分が好きなゲームが爆発的に売れるかなんて正直わからない。その時が来たら自分のスキルを生かして活躍すればいい。最初から『プロゲーマーになる』と決めてやり過ぎすると結局、オーバーワークをしてしまい、体を壊すだけ」と強調する。大事なのは「好きで続けること」。おのずと実力が伴ってくるものだという。

 国内では、eスポーツのプロを目指す若者が着実に増えている。ネモ選手が伝えたいことは、プロになったその先のキャリア形成と人脈の重要性だ。「選手のうちから将来、自分がどういう仕事をしたいのか、常に考えていたほうがいい。そうすると可能性が広がっていく。プロ活動を通して知り合うことができる人はすごく多い。将来、自分に適した仕事を一緒にできるかもしれない企業の方と出会えるチャンスも転がっている。そういうことを普段から考えていないと、チャンスをつぶしてしまう」。険しい道を切り開いてきた経験から来る、重みのある言葉だ。
 
 「世界大会タイトル」を目指し続ける34歳。「プロゲーマーのセカンドキャリア」を模索する人生の大きなテーマも持ち続ける。「プロゲーマーが終わっても、こういう働き方があるんだというモデルケースを示すことができれば、プロゲーマーを目指す人がどんどん増えてくると思うんです。ひとつの道を示したい。それが一番の夢」と力強く語った。

 おわり

 □ネモ(本名・根本直樹)、1985年1月5日、東京都生まれ。世界最大規模のeスポーツチーム「Team Liquid」に所属。大手ゲーム会社「スクウェア・エニックス」の社員とプロゲーマーとの「兼業プロ」として活動している。ゲームタイトルは「ストリートファイターV アーケードエディション」で、使用キャラクターは「ユリアン」を得意とする。理論的でアグレッシブなプレイスタイルを武器に国際大会で活躍し、主な戦績は「Red Bull Kumite 2017 Street Fighter V」(フランス)優勝、「Capcom Cup 2017」(米国)3位、「Headstomper 2019」(スウェーデン)優勝など。

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