「もういいかな」40代で大病…女性オーナーの愛車は「生きる目的」 納車待ち2年半、懸命の闘病で納車実現
がんの告知を受け、見失いかけた「生きる目的」。再び一歩を踏み出す原動力になったのは、若い頃から大好きな自動車だった。闘病しながら納車まで2年半待って、手に入れたマイカー。購入時にディーラーに相談した時、夫の一言も大きな後押しになった。53歳女性オーナーは、走る喜びを日々かみしめている。

アルバイト先で出会った夫と二人三脚
がんの告知を受け、見失いかけた「生きる目的」。再び一歩を踏み出す原動力になったのは、若い頃から大好きな自動車だった。闘病しながら納車まで2年半待って、手に入れたマイカー。購入時にディーラーに相談した時、夫の一言も大きな後押しになった。53歳女性オーナーは、走る喜びを日々かみしめている。
真っ赤なスポーツカー。「これが私のクルマです」と声を弾ませる。新型のホンダ・シビック タイプR(FL5型)。人生の岐路で、新たな道に導いてくれた愛車だ。
そもそも、どうしてスポーツカー乗りに? 愛車遍歴を聞けば、合点がいく。
「もともとモータースポーツが大好きで、ファミレスで一生懸命バイトで働いて、18歳の時に買ったのが、ワンダーシビックです。F1が大好きで、当時アイルトン・セナに憧れていました。それで、ホンダに興味を持つようになって。就職してお金を貯めて、インテグラを買いました。そのあとは、シビックやアコードに乗ってきました。タイプRの前は、シビックFK7に乗っていたんです」。根っからのホンダ愛好家だ。
アルバイト先で出会った、クルマ好きの夫と結婚。子育てにも励み、順風満帆の人生を歩んできた。だが、40代半ばを過ぎて、病魔に襲われた。
「6年前にがんになりました。抗がん剤治療を受けて、はげちゃったりして。いろいろなことを考えて、どーんとなって。『もういいかな』と思うこともありました」。突然の悲劇。人生を悲観する時期もあった。
暗闇から救ってくれたのは、大好きなホンダ車だった。
「何かしなきゃ。生きる目的が欲しい。それを探そうと。新しいタイプRが気になっていて、長年通ってきた旧知のディーラーに相談したんです。そうしたら、3年ぐらい待つかもしれないけど契約できますとなって。勢いで買っちゃいました」。
闘病中の新車購入。多くの不安があった。「そもそも、3年後に私が生きているかどうか分からない。生きていても、運転できる状態でいるかどうかも分からない。いろいろなことを想定しながら話し合いました」。健康面、金銭面、不確実な未来……。大きく背中を押してくれたのは、ずっと二人三脚で歩んできた夫の一言だった。「もしものことがあったら、『俺が乗るから』と。ディーラーと相談した時に、夫がこう言ってくれて」。心強い言葉で、話が一気にまとまった。
治療が進み、仕事にも復帰することができた。新たな目標ができたことで、「せっかく残された命なんだから頑張ろう」。お金もコツコツ貯め、昨年に念願の納車が実現した。
ホンダらしい「乗りやすさ」の安心感。普段使いでも乗っているが、「なんせ燃費が悪いので(笑)」。近場は歩くなど工夫している。遠距離ドライブが好きで、「福島・相馬の海に定期的に通っています。これからもたくさん遠出したいですよね」と心を躍らせる。
実は、夫婦でタイプR乗り。ホンダ愛を貫いている。「そうなんです、夫もタイプRに乗っています。夫の方がちょっと先に納車になって(笑)。うちの子たちは、『オートマじゃないと嫌』なんて言ってますが、いつかは子どもたちに託すことも考えています」。優しい笑顔から、夫への感謝の思いが伝わってくる。
仕事のモチベーションでもあり、かけがえのない趣味であり、前を向かせてくれた人生の愛車。「車に乗っていると、つらい時も、楽しい時も、そのままの感情になれます。自分が自分でいられる場所ですね」。生きる力をもらいながら、今日もハンドルを握る。
